農業に絶望した僕が、ある包丁研ぎ師さんに救われた話

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などと、思っていました。

(研ぎ師さんには大変申し訳ないことですが……)


そんなとき、研ぎ師さんから

「包丁研ぎが終わりました」という連絡。


そしてその晩、僕の包丁を研いでくださった様子を

ブログに書いてくださっていました。


〔そのブログ記事は ⇒ コチラ

*通常は、お客様のご了承が無い限り

 ブログに書かれることは無いそうです。

 今回僕は、むしろ書いてもらいたいと思って、

 ブログへの掲載を承諾させていただきました。



「へー、すごく丁寧に研いでくれるんだなー♪」


そんなことを思いながら、ブログの記事を眺めます。


ですが、画面をスクロールしていくうち、

僕は言葉を失っていきました。



「ウソだ……」



最初は、信じられませんでした。


そこに書かれていたのは、

研ぎ師さんが感じた“包丁の声”


「いやいや、ありえへんって……!!」


意外なメッセージに、僕の心は動揺します。

でも、必死にその動揺を抑えつけていました。


けれど、その動揺はおさまらず、

今まで見ないようにしていた

心に閉じ込めていた想いが顔を出してきます。


「ちょっと、待って…………」


溢れてくる想いに戸惑いながらも、

僕はブログの記事を読み進めていきます。



そこに書かれていた内容とは……


“大地から僕へのメッセージ”


でした。


農業でツライ想いをして、

もう関わりたくないと思っていた

大地からのメッセージだったのです。


「てゆーか、なんで包丁が

 そのメッセージを伝えてくるねん?!」


と、一人でブログに突っ込んでいたのですが……


でも、どう考えても、

農業をしてきた僕に対するメッセージ

としか考えられなかったのです。


「研ぎ師さんが、

 僕に気を遣って こんなことを書いてるのかな?」


「いや、待てよ。

 たしかに農業してることは伝えてた。

 でも、辞めたことまでは 伝えてなかったよ?!」


「というか、ウソを言うような人には見えないし……。

 そもそも、ウソなんてついたら包丁に対して失礼。

 包丁を愛してる あの人が、そんなことするはずない」


そんなアレコレを思いながら、

包丁からの最後のメッセージに辿り着きます。



「……!!」



そのメッセージを見た瞬間、

僕は完全に感情のコントロールを失いました。


気づいたときには、

目から涙があふれ出ていました。


パソコンの画面を見ていられなくなり、

ただうつむいて、しばらく泣いていました。


そこに書かれていたのは……


 大地からの『ありがとう』。


今まで僕が農業を続けてきたことに対する

大地からの感謝の言葉でした。


もちろん「大地からの言葉」なんて、

客観的に確かめられることではありません。

大地には声もなければ 言葉も書けないですから。


あくまで、僕の心に伝わってきたことです。


ですが、その時の僕には、

たしかに必要なメッセージでした。


「ああ。そっか……そうだった。

 なんで忘れてたんだろう?」


封印していた感情が湧き上がってきます。


「僕は、大地や生き物のために

 頑張ってたんだった……」


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