失恋を理由に15歳で留学を決意した話 (8)

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 ※思い出した順に書いているので、時系列がめちゃくちゃであることをお許し下さい。

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  嬬恋の夜は夏でも涼しい。
上着を羽織るほどではなかったけれど、ベランダにはひんやりとした風が吹きこんでいた。
空には満天の星。

「この星、下界まで持って帰りたいな」
「下界に着いて、リュックを開けたらただの瓦礫になってたりして」
「その可能性高そうだよね。月だって、月面着陸の写真見たら荒れ地だもんね」
「ということは、今光っているのは空に浮かぶただのチリですね」
「嬬恋に来ると、チリさえもこんなに綺麗だってことだよ。空気が澄んでるからね。東京ではこうは行かない」
「うん、そうですね」
「でも、鎌田さんとこなら違った良さがありそうじゃない?都会だから、ネオンとか」
「んー…それが、ゆっくり眺める機会ってないんですよね。意外と」

ラウンジから続くバルコニーに、4〜5人が集まって夜空を見上げていた。
うんざりするほど沢山の星で埋めつくされた様は、ネオン街の景色よりもずっと贅沢なように感じた。
目立たないように縮こまっていた中学時代から、こんなところまで来ることができた自分。
気になる人と贅沢な景色を味わっていられる幸福。
私はこの人生に感謝しなければいけないと思った。
まあ、2ヶ月後には人生を恨むことになってしまったけれど。

  3日目の夕方からは創作の時間に入った。
講義や合評などは行われず、創作活動に有効だと思われることなら何でもして良いことになっていた。

「下界に降りても、僕と話しをしてくれる?」
「あ、はい」
「電話していい?」
「は、はい」
「って言っても、うちの学校本当は携帯禁止なんだけどね。そっちと違って」
「それ…あの…」
「日本には固定電話ってものがあるから大丈夫。家電からかけるよ」

どうしてこの人はこんなに積極的なんだろう。
不思議だった。
数学部門で来ていたI君…ここで親しくなったことで後々心強い味方になってくれた…に訊いてみた。

「それは、嬬恋の魔法でしょ」
「魔法?」
「非科学的だけどね。でもここでは何が起きたっておかしくないよ。僕と鎌田さんだって、嬬恋に来るまであんまり話したことなかったじゃない」
「そうだね」

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