失恋を理由に15歳で留学を決意した話 (9)

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   ※思い出した順に書いているので、時系列がめちゃくちゃであることをお許し下さい。

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  廊下は走る所だった。
何故なら外を走れないからだった。
校門から出るとそこは交通量の多い車道で、歩行者用のスペースも確保されていたけれど、のびのびとランニングが出来るほどの広さではなかった。
校内を走ろうにも、校庭がない。
だから運動部は廊下でランニングをしていた。
携帯電話は「持たされて」いたし、廊下は「走れ!」…前々項あたりで普通の高校だったと言ったけれど、取り消した方がいいような気がしてきた。
そんな15年後の今日。

  時を遡って1999年の8月、電話でこの話をするとT氏は驚嘆していた。

「すごいな、それも。うちなんか何かと言えばランニングなのに」

彼の通うS高校は、スポーツの強豪で設備も充実していた。
特に野球は全国的に有名で、ピッチャーはアイドル並みにモテたとかそうでないとか。

「エースと同じクラスなんだけどさ、そいつってやっぱり走り込んでるんだよね。で、それが自慢なのか何なのか知らないけど、運動ができない俺のことをあからさまに見下してきて腹が立つんだよ」

知り合った時、彼は自分のことを”僕”と言っていた。しかし打ち解けて来ると”俺”も混じるようになった。

「うわー、嫌だそんな人」

「クラス分ければいいのに。どうせ授業なんかろくに聞いてないんだから」

エースと呼ばれたその人物は、翌年春の高校野球で優勝投手となった。
端正な顔立ちにスラリと長い手足。投球フォームも綺麗だったけれど、付属生の間では「ナルシスト過ぎる」とよく言われていた。
才能があるとは言え、まだ10代なんだから仕方が無かったといえばそうなのか。

「ところでね、伝えておかなきゃいけないことがあるんだ。というか近所だから知ってるかも知れないけど」

私の家から高輪の校舎までは一時間半かかった。対して、S高まではたったの三十分だった。

「うち、男女交際禁止なんだよね」

「…知ってました。地元では有名な話です」

「その…鎌田さんにはつい声かけてしまったんだけど…嫌だったら、全然いいんだけど」

T氏はここで一旦言葉を切った。

みんなの読んで良かった!