呑みに行くといろんな人に出会う~その4~

【親友と日本酒を飲んでいると】


吉祥寺。


喧騒あり、静寂あり、老人あり、若者あり、歴史あり、新参あり。

その中で過ごしているとふと思うことがあります。



母親の胎内から慣れ親しんだ町。



自らの足では中学生のときから来て、楽しんでいる町。



今回の舞台はこの町。



これほど人が溢れているのに、孤独を感じる町。


温かい人の心にも溢れてる町。



それが吉祥寺。



突然の親友からの連絡で自宅から吉祥寺にバスで向かう。


夕方乗るバスは人もまばらな車内を夕陽の照り返しで、
オレンジ色に優しく染めてくれる。


久しぶりのサシ飲みは少しだけの緊張感をもたせてくれる。



どんなに親しい人でも会う瞬間、僕は少しだけ緊張する。

必ずしも前回会ったときと同じ人では無いから。



人はすぐ変わる、変化する生き物で

怖い部分もあり、楽しくもあり、

この話で初めて僕の文章を読む方はいらっしゃらないと思いますが、

僕は割とめんどくさい人間なのです。



そんな僕のちょっとした自己紹介が終わったところで、

吉祥寺に着きます。



軽い食事後に時間よりも先に着いた僕は小雨が降る北口前で、

親友を待つ。



スマホをいじるかいじらないかのタイミングで現れた彼は、

髭を生やしていた。



元々、剃ったり伸ばしたりと会うたびに違う雰囲気もあるが、

その中には既婚者独特の責任感溢れる雰囲気をまとっていた。



ちょっと入りたい店があるんだけど?
親友
日本酒ある?
魚と日本酒の店だから。
親友
だったらそこに行こう。


安くてボリュームがあって美味い魚がある、居酒屋。



地下に降りて行くと既に満席の店内。

少し待てば入れると店員に言われて、二人で座って待つ。



こんなときは決まって僕から共通の友人の話題を出す。



何となく、沈黙に居心地の良さを感じるから。



少しだけ照れくさいのだ。



話をしている間に、店員から席に通される。



カウンターのような席に醤油やらが置かれている。



二人で座るにはちょっと狭いが、

はじっこが好きな僕には居心地が良い。



親友の隣りには既に先客が。



つまめる食べ物を選びながら、まずはビールで乾杯。



想像以上の旨いお通しが、
既に満たされている腹にも食欲をそそる。



ビールを飲んだ後に、早速日本酒へ。



あまり悩まない僕たちが日本酒を迷っていると、

親友の隣りに居た、おじさんが話しかけて来た。



これが美味いから、良かったら呑んでみて。



僕たちはおじさんの薦めてくれた酒を頼む、

一口飲むと口の中に吟醸香と芳醇な甘味。



美味い。おじさんに一言、これ美味しいですね。



おじさんも笑顔でうなずきながら、目の前のつまみを食している。



そこでまたもや想像以上の多さの刺し盛りに驚く。

おじさんの横にもあったが、ゆっくり平らげたようだ。


親友が刺身を食しつつ、メニューを見て次の獲物に狙いをつけていた。


頼んだ一品ではない、アジフライのことばかり言っていた。


僕が頼めば良いと言っても悩んでいた。



その間に、おじさんの元に新たな皿が。
それはアジフライ。


横目で見せてもらったが、

かなりのボリュームがあり、正直、刺身とそれだけで、

充分、腹を満たせる。


おじさんは他にももうひと皿ぐらい、

何かを頼んでいたように思う。


親友はまだアジフライと言っていた。


日本酒が進むと、あるときに、

おじさんがアジフライを親友に薦めて来た。


良かったら食べない?


親友は驚きながらも喜んでいた。

実はおじさんが聞いていて、僕らにくれたんじゃないだろうか、と。



呑みながらおじさんと話をした。

頂いた食べ物のお礼以外にも。



溢れる店内の中で、

僕たちは談笑した。



おじさんにとって一人呑みは寂しかったのかもしれない。

だから僕たちに話しかけた。


僕たちは不意な声かけでも心の底では嬉しかった。

だから、自然と笑顔が出た。


名前も知らない人と日本酒の話をした。



そして、おじさんは去っていった。



まだ、店内は満席で、
僕たちの夜は終わらない。



盃を飲み干したところで、

腹の奥が少しだけ温まってきた。

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