うつ・不眠症・ひきこもりだった主婦が3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースで世界3位になった話

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そして今年4月上旬、参加メンバーの初顔合わせに行った。

メンバーは、リーダーのみなちゃん、ジョナサン、トマスキーさん、ゾロくん、はるかちゃん、

ユーコンリバークエストに過去2度出場しており、アドベンチャーレースの第一人者であるKENさん。

みなちゃんとはるかちゃんと私以外は男性。

男性4人、女性3人の、男女混合チームメンバーだ。


初対面の人たちも多く、なんか違和感があった。

どうも居心地がよくない。自然体でいられない。

今まで好調だったのに、どこかおかしい。

発言するにしても、何をするにしても、過剰に人目を気にしている自分がいた。


「こんなこと言って大丈夫かな。嫌われないかな」

「わたし、一体どんな風に思われてるんだろう?」


そんなことばかり考えてるから、萎縮して身動きが取れない。

なんだか息苦しい。


そして、取り立てて、ものすごく仲がいい人がいるわけでもなく、運動音痴な私は、

なんだか浮いてるように思えた。




<『受け取る』ということ  ~フィードバックは愛~>


違和感を抱えたまま、最初のトレーニングである、群馬県水上の合宿へ行く。

野宿、テント宿泊の2泊3日。

精神的にかなりハードルが高かったが、行くしかなかった。


アウトドア、カヌー経験がほとんどない私たちに、

KENさんは至れり尽くせりでたくさんのことを教えてくれる。


熱心なKENさんとは対照的に、私たちは受け身で接しているように感じた。

申し訳なくなり、また、そこまで会話も盛り上がらずシーンとしていて、

私は必要以上にオーバーリアクションをとった。


例えば、KENさんが作ってくれた食事に対して、「おいしいです!!」を連発。

何か話を聞けば、「すごいですね!!」を連発。

無意味に何度も頷いた。

正直、気を遣いすぎて疲れてしまった。


トレーニングは順調に終わり、

私たちはその後、KENさん以外のメンバーで、スカイプを使いミーティングをした。

そこで、のっけから、衝撃的なフィードバックを受けたのである。


「あなたは、セルフイメージが低い」


心理学に詳しい、ジョナサンからの一言。

あまりに衝撃すぎて、その後の会話を覚えていないくらい、ショックだった。

私にとって、かなりの大事件だ。


どうやら、水上合宿での私の言動を見て、そう分析したらしい。

ショックでよく覚えていないのだが、

セルフイメージが低いと、恥の感情が強いのだそうだ。

すると、例えばレース本番で、低体温症やケガなどで、自分が原因でリタイヤしたとき、

精神的ダメージが大きくなるとのこと。

要は、メンタルが弱いらしい。

あとは、ストレスを溜め込む性格、というのも指摘された。全部お見通しのようだ。


それから3日間、ずっと落ち込んでいた。

「お前は何の価値もないダメ人間だ」と言われているように感じた。

自分は、体力や筋力がないし、身体能力も低い。ヘタレだ。それは認める。

でも、メンタルは決して弱くないと思っていた。


段々腹が立ってくる。

何ですごく仲良くもない人に、そんなことを言われなきゃならないのか?

一体私の何を知ってるのか?

ユーコン行きが憂鬱になった。


ひとしきり落ち込んだ3日後、変化が訪れた。

「受け取る」ことをしようと思った。

「受け取る」というのは、自分にとって心地が良いことも、そうでないことも、

両手で有難く受け取ること。


以前の私なら、共感してくれそうな友人に連絡してグチって、

もうその人から離れていただろう。

でもそうすれば、ストーリーが止まってしまう。

もう止まりなくなかった。逃げたくなかった。

というよりも、既にユーコン行きを表明しているのだから、逃げられないのだ。


よく考えてみれば、取り繕ってもお見通しということだ。

だったら、自然体でいていいんだと思った。

そう考えたら、気持ちが楽になった。

自分のことを分かってくれる人がいるというのは、安心する。


同時に、「フィードバックは愛」という言葉を思い出した。

コールセンター時代に、社員が言っていた言葉だ。

当時は「何が愛だよ。ただのダメ出しじゃん」と受け付けなかったが、今ではよく分かる。

とにかく、有難かった。


ジョナサンに感謝を伝えたいと思い、メッセージを送った。

優しい返信だった。改めてアドバイスをくれた。

セルフイメージの低さの原因になっているのは、

「~でなければならない」といった価値観からきていると。

そういうのを手放せば、楽になると。

とても嬉しかった。


メンタルもヘタレな自分を受け入れて、少しずつ前に進んでいこうと思った。

このとき、起業家が集まる勉強会や、

女性のコミュニティの場、親しい友人に、勇気を出して、このことを思い切って話した。

みんな温かく受け入れてくれた。共感してくれる人もいた。


ありのままの自分をオープンにすることによって、

みんなが、世界が、自分の望む方向に導いてくれていると感じた。

場の力を感じた。とてもありがたかった。




<自分のためじゃなくて、みんなのために>

それから私たちはずっと、ジョナサンの提案で、

フォームを改善、定着化することにひたすら集中した。


KENさんに、プロのトレーナーである、

「御岳レースラフティングクラブ」のだいごさんを紹介してもらい、毎週練習に通った。

私は時間に自由が効くのと、身体能力が低く、飲み込みが悪いのもあり、ほぼ出席率100%で参加した。


ここでも変化があった。

以前なら、義務感で参加していただろう。

でも、「練習した方がいいし、練習したい」という気持ちで通っていた。

実際、とても楽しかった。


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