うつ・不眠症・ひきこもりだった主婦が3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースで世界3位になった話

3 / 9 ページ

数回通い、まだまだ改善余地はあるものの、

自分だけのことを考えるなら、フォーム改善についてはソコソコ満足していた。

しかし、ここで気がついたことがあった。


すでに御嶽での練習日は数日決まっていて、全体練習はたった1日。

それまでに、最低でも一人2回は練習に通っておきたいところだ。

しかし、メンバーのうち数人が、全体練習までの練習日が足りない。

そこで私は、追加の練習日を提案することにした。

だいごさんに直接コンタクトを取り、

調整中といわれた日については、ゴリ押しをしてなんとか調整してもらった。


正直、ユーコンのトレーニングは、自分は受け身で参加すると思っていた。

誰かが提案してくれたトレーニングに従うだけ。

でも、みんなをフォローしたかった。

「しなくちゃ」ではなく「したい」で行動していた。


全体練習は5月17日の1日のみ。

その前の練習で、ジョナサンと話す機会があった。

「ゾロ君とはるかちゃん、もっと練習に来れたらいいのにね。

あの二人は大きな戦力になるから。16日、練習来ようかな。。。」


元々予定のなかった16日に、来るか迷っているようだった。

聞けば、その日は高額セミナーに参加する予定だという。

もうお金は支払い済み。


私も迷っていた。16日は調整可能。

でも、16日~17日、連チャンでトレーニングして、果たして体が持つのか?


迷ったまま、ある日、kenさんからメンバーの一人に対して、フィードバックがあった。

「はるかちゃんは、御岳トレーニングに1回も参加できてない。

他の人と圧倒的な差があるから、自主練習してください」


私なら、ショックすぎてまた3日間凹むような言葉だった。

(本当にメンタルがヘタレである)


はるかちゃんは、教育実習に3週間励んでいた。

そのため、正確には1日、練習は参加したものの、

だいごさんからの直接指導は受けていない状況だった。


ここで私は、今年のサハラマラソン完走者で友人の、「ひでさん」の言葉を思い出した。

「自分ひとりでゴールしたって意味ない」

ひでさんはサハラマラソンの一日目、自分がゴールした後、

道に迷ってゴールできていなかった仲間のサポートをしなかったことに対して、

自分自身に怒ったのだった。

そして、次の日からは、仲間をサポートしながら走っていた。


「自分ひとりでフォーム改善に満足したって意味ない」

そう思い、メンバーに16日も練習するよう提案した。

とりあえず、参加表明があったのは、はるかちゃんのみ。

だいごさんは、2名以上の参加者がいれば見てくれる。

翌日予約を取った。


予約は取れた。

だが、午前中はフォーム指導を行ってくれるが、

午後は別の予約があり、難しいと言われた。

今回はゴリ押しは難しそうだ。


女子2人で湖での自主練習は危険だった。

一人がラダー(舵)をするから、効率も悪い。

自分から言い出したものの、不安になる。

「男子、誰かあと一人でいいから、参加して。お願い」と祈った。


16日を目前にしたある日、ジョナサンから、

「16日は空けたので、一日参加できます」とメッセージがあった。

一言で言うなら、感激した。

「誰かのために」というより「みんなのため」なんだなと思った。

深く、広く愛を与える人。男性性が強いなと思った。




<一人じゃなくて、みんなと一緒にいたい>

16日の練習は無事終わり、

私たちは、17日の朝に全体ミーティングを行った。


議題は主に、目標設定と、レース中の停泊所であるキャンプ場「カーマークス」での

宿泊をテントにするか、ホテルにするかの決定を予定していた。

カーマークスでは、ホテル宿泊も可能だった。


意見は2つに分かれた。

私は結局、ホテルを選んだ。


色々葛藤はあるものの、ホテルのほうが楽で衛生的だったからだった。

しかし、KENさんの提案で、チームメンバーの中で、

テント組とホテル組とで分かれることになった。

私は「分かれてしまうのはさみしいです」と言った。


KENさんは、

「何も問題ないよ。だって、レース中はみんなずっと一緒で、

自分の時間が取れるのはこのときしかないんだよ。これで決別することはないから」と答えた。


それでも、私はみんなと一緒がよかった。

だから、ホテルはやめてテントを選んだ。

レース中、ホテルの部屋のベッドで一人で寝るなんて、想像するだけでぞっとする。

「みんながこうしてるから、私もそうしなきゃ」ではなく「みんなと一緒がいい」と思った。


以前の私なら、たとえ一人でホテルを選んでいても何の躊躇もなかっただろう。

むしろ、一人が好きだし、一人になりたかっただろうから。

誰かとずっと一緒に行動するなんて、面倒くさいし、息がつまると思っていたから。

この変化には、自分でも驚いた。





<いざ、ユーコンリバークエストへ>


さて、いよいよカナダのユーコン準州へ。


現地到着して装備品チェック、準備、買出し、練習など、2日間はあっという間に過ぎた。

現地日本人サポーターの手厚いサポートのおかげで、余裕がないながらもなんとか準備が終わった。



驚いたのは、パドル(カヌーを漕ぐ道具)の軽さ。

まるで羽のような軽さだ。何も持ってないような感覚。

なんと3万円以上もする、超高性能なパドルである。


私は握力が9キロしかなく、今までの練習では腕が痛くなることが多かったのだが、

このパドルを持った瞬間に「これはいける!!」と確信した。


いよいよスタート。


ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者の川和田 あき子さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。