うつ・不眠症・ひきこもりだった主婦が3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースで世界3位になった話
数回通い、まだまだ改善余地はあるものの、
自分だけのことを考えるなら、フォーム改善についてはソコソコ満足していた。
しかし、ここで気がついたことがあった。
すでに御嶽での練習日は数日決まっていて、全体練習はたった1日。
それまでに、最低でも一人2回は練習に通っておきたいところだ。
しかし、メンバーのうち数人が、全体練習までの練習日が足りない。
そこで私は、追加の練習日を提案することにした。
だいごさんに直接コンタクトを取り、
調整中といわれた日については、ゴリ押しをしてなんとか調整してもらった。
正直、ユーコンのトレーニングは、自分は受け身で参加すると思っていた。
誰かが提案してくれたトレーニングに従うだけ。
でも、みんなをフォローしたかった。
「しなくちゃ」ではなく「したい」で行動していた。
全体練習は5月17日の1日のみ。
その前の練習で、ジョナサンと話す機会があった。
「ゾロ君とはるかちゃん、もっと練習に来れたらいいのにね。
あの二人は大きな戦力になるから。16日、練習来ようかな。。。」
元々予定のなかった16日に、来るか迷っているようだった。
聞けば、その日は高額セミナーに参加する予定だという。
もうお金は支払い済み。
私も迷っていた。16日は調整可能。
でも、16日~17日、連チャンでトレーニングして、果たして体が持つのか?
迷ったまま、ある日、kenさんからメンバーの一人に対して、フィードバックがあった。
「はるかちゃんは、御岳トレーニングに1回も参加できてない。
他の人と圧倒的な差があるから、自主練習してください」
私なら、ショックすぎてまた3日間凹むような言葉だった。
(本当にメンタルがヘタレである)
はるかちゃんは、教育実習に3週間励んでいた。
そのため、正確には1日、練習は参加したものの、
だいごさんからの直接指導は受けていない状況だった。
ここで私は、今年のサハラマラソン完走者で友人の、「ひでさん」の言葉を思い出した。
「自分ひとりでゴールしたって意味ない」
ひでさんはサハラマラソンの一日目、自分がゴールした後、
道に迷ってゴールできていなかった仲間のサポートをしなかったことに対して、
自分自身に怒ったのだった。
そして、次の日からは、仲間をサポートしながら走っていた。
「自分ひとりでフォーム改善に満足したって意味ない」
そう思い、メンバーに16日も練習するよう提案した。
とりあえず、参加表明があったのは、はるかちゃんのみ。
だいごさんは、2名以上の参加者がいれば見てくれる。
翌日予約を取った。
予約は取れた。
だが、午前中はフォーム指導を行ってくれるが、
午後は別の予約があり、難しいと言われた。
今回はゴリ押しは難しそうだ。
女子2人で湖での自主練習は危険だった。
一人がラダー(舵)をするから、効率も悪い。
自分から言い出したものの、不安になる。
「男子、誰かあと一人でいいから、参加して。お願い」と祈った。
16日を目前にしたある日、ジョナサンから、
「16日は空けたので、一日参加できます」とメッセージがあった。
一言で言うなら、感激した。
「誰かのために」というより「みんなのため」なんだなと思った。
深く、広く愛を与える人。男性性が強いなと思った。
<一人じゃなくて、みんなと一緒にいたい>
16日の練習は無事終わり、
私たちは、17日の朝に全体ミーティングを行った。
議題は主に、目標設定と、レース中の停泊所であるキャンプ場「カーマークス」での
宿泊をテントにするか、ホテルにするかの決定を予定していた。
カーマークスでは、ホテル宿泊も可能だった。
意見は2つに分かれた。
私は結局、ホテルを選んだ。
色々葛藤はあるものの、ホテルのほうが楽で衛生的だったからだった。
しかし、KENさんの提案で、チームメンバーの中で、
テント組とホテル組とで分かれることになった。
私は「分かれてしまうのはさみしいです」と言った。
KENさんは、
「何も問題ないよ。だって、レース中はみんなずっと一緒で、
自分の時間が取れるのはこのときしかないんだよ。これで決別することはないから」と答えた。
それでも、私はみんなと一緒がよかった。
だから、ホテルはやめてテントを選んだ。
レース中、ホテルの部屋のベッドで一人で寝るなんて、想像するだけでぞっとする。
「みんながこうしてるから、私もそうしなきゃ」ではなく「みんなと一緒がいい」と思った。
以前の私なら、たとえ一人でホテルを選んでいても何の躊躇もなかっただろう。
むしろ、一人が好きだし、一人になりたかっただろうから。
誰かとずっと一緒に行動するなんて、面倒くさいし、息がつまると思っていたから。
この変化には、自分でも驚いた。
<いざ、ユーコンリバークエストへ>
さて、いよいよカナダのユーコン準州へ。
現地到着して装備品チェック、準備、買出し、練習など、2日間はあっという間に過ぎた。
現地日本人サポーターの手厚いサポートのおかげで、余裕がないながらもなんとか準備が終わった。
驚いたのは、パドル(カヌーを漕ぐ道具)の軽さ。
まるで羽のような軽さだ。何も持ってないような感覚。
なんと3万円以上もする、超高性能なパドルである。
私は握力が9キロしかなく、今までの練習では腕が痛くなることが多かったのだが、
このパドルを持った瞬間に「これはいける!!」と確信した。
いよいよスタート。
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