うつ・不眠症・ひきこもりだった主婦が3日間で715キロを下る、カナダの世界規模のカヌーレースで世界3位になった話

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自分だっていつ、どうなるか分からない。

とにかく、元気なうちに、出来る限りのことをしたかった。


しばらくしたら、今度は自分が眠くなってきた。

このときから、仮眠や休憩は自己申告制になったので、遠慮なく仮眠休憩をもらった。

お互い、我慢せず頼ることを大切にしたかった。







<自由とは>


スタートから約27時間、やっと停泊所であるカーマークスに到着。

カーマークスでは、最低7時間の滞在が義務付けられている。


ここまでのラストスパートは本当にしんどかった。

漕いでも漕いでも着かない。疲労はピーク。

みんな本当によくがんばったと思う。


ボートを降りたら、もうフラフラ。足元がおぼつかない。

こんなに疲れていたのかとびっくりする。


ありがたいことに、現地日本人サポーターの方たちが、

テントや食事を全て用意して待っていてくれていた。


自分たちだけでやるものだと思っていたから、本当に感謝だった。

私たちはシャワー浴びて、食べて、寝るだけ。


KENさんは、「出発時間さえ守ってくれれば、あとは自由行動」と言っていた。

その言葉が、やっと腑に落ちた。


今までは、誰かに合わせて行動していた。

誰かが食事するなら、私もする。誰かがシャワー浴びないなら、私も浴びない。


それは自由ではない。


私は一人で行動した。やりたいことを、やりたいときに、やりたいように。

誰かに合わせる必要はない。

普段、いかに人に合わせて行動していたかを実感する。


テントで寝る前、夫が出発前に入れてくれた音声を聞いた。

寝る前に聞くように、と吹き込んでくれたものだ。


どうやら夫がラジオのDJに扮して、数曲をオンエアするという内容のものだった。

ナレーションが流れ、結婚式二次会の入場曲に使った曲、夫の気持ちが入った温かい曲、

ラストは、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」だった。


それはなんと、夫がカラオケで歌ったものを録音したものだった。

聞きながら、涙が溢れた。


自分のことをこんなにも想ってくれている人がいる。

そもそも、夫がいなければ、ユーコンに出ることもなかった。

感謝でいっぱいになった。

泣きながら、安らかな眠りについた。


出発前、私は荷物のパッキングに四苦八苦していた。

私は片付けやパッキングが苦手だ。

何をどうすればいいのか分からなくなる。


それを見ていたKENさんが、

「あきこちゃんは荷物整理が苦手だよね~ 水上のときも散らかってたし」と笑いながら言っていた。


他にも、私が一日目に水を飲みすぎて途中で足りなくなり、

他の人からもらっていたことも指摘があった。


同時に、「1日目、ちゃんと漕げてたね!他の人にもフィードバックしてあげて」とも言われた。

そうだ。フィードバックだ。

自分に出来ることをやろう。



<つらいときこそ、基本に戻る>

カーマークスを15秒フライングしてスタート!(笑)

向かうは、「ファイブフィンガーラピッド」


このレースの一番の目玉であり、難所である。

転覆する可能性が最も高いと言われている、波の高い場所。


ゴゴゴーーー という水の音に、ドキドキする。

転覆対策で、ウェットスーツを着た。水上で激流体験もした。泳ぐ練習もした。

絶対に突破してやる!!


と、意気込んで臨んだが、数秒で終了してしまった(笑)。


KENさん曰く、

危険な場所であり、コース取りによっては波が低いところを進む安全コースも選択できた。

だが、それではつまらないので、あえて危険なコースを進ませてくれたとのこと。

その余裕が、さすがだと思った。


その後、強風の向かい風が続き、

漕いでも漕いでも、あまり前に進んでいないのではないかという場面があった。


こんなときは、メンタルも体力も消耗する。

ちゃぷちゃぷ漕ぎメンバーが続出した。


フィードバックしたいけど、どう言えばいいのかが分からない。

「肘まっすぐ!足使って!」は、伝えたものの、そんなことはみんな分かっていた。


「みんな基本はできている。じゃあどうすればいい?」

悶々と考えていると、ジョナサンが突然、

「御嶽漕ぎに変更するよ!」

「御嶽の練習を思い出して。目の前に鏡があると思って、

 自分のフォームをイメージして漕ごう!」とみんなに言った。


御嶽での陸上でのフォーム練習のときのように、下半身の体制を変え、

ペースも御嶽漕ぎに合わせて落として漕ぎ始めた。


すると、驚くくらい、ぐんぐん進んでいく。

結局、高速漕ぎより、御嶽漕ぎのほうが、体が楽だし、進むということが実感できた。


また、だいごさんの顔が浮かんだ。

涙が自然と流れてきて、泣きながら漕いだ。


それを乗り切った後は、大分気持ちに余裕が出来ていたように感じる。

歌を歌ったり、

おしゃべりをしたり、

山に向かって叫んだり、

男子が上半身裸にライフジャケットを着て写真撮影をしたり、

男子のチクビにバンテリンを塗ったり、


基本はストイックだけど、色々と楽しんだ。

さらに、2日目は1日目よりもさらにランナーズハイ状態になり、

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