出産を控えたパパに捧げるプロローグ パパの長い一日
「もうちょっと時間かかるね。まだ気張らないようにねー。ふぅーう。ふーぅう」。
「“ふぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓”」
8:00 録音機携帯をそばの棚に置いてみる。
「全開になってから、気張ってもらうからね、まだ気張っちゃダメよ」。
「チェックするからねぇ。まだいきんじゃダメよぉ~。ふぅーう。ふーぅう」。
よく考えると、看護師さんじゃなくて、お二人とも助産師さんなのだと今頃になって気がつく。
「ふぅーう。ふーぅう。」オレの人差し指と中指を握って耐える。この分娩室入りするまでに、病室で相当な力で押していたのだろう、親指まで併せて3本の指が、青紫色に鬱血している。
「ふぅーう。ふーぅう。」延々続く。よくテレビとかで聴くラマーズでないこの呼吸法。なんだろう?
「ふぅーう。ふーぅう。」いつまで続くのだ?
「ふーー。ふーー。」ちょっと落ち着いたもよう・・・。
一瞬静かになった。
心音機の鼓動が「ドンクドンクドンクドンクドンク」。
ものすごい早さで部屋中にこだまする。お腹の中で、赤ちゃんも必死に頑張っている。
「ふぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓」 突然再びおそってくる激しい陣痛。
そして「ドンクドンクドンクドンク」もうすぐだよとでも言いたげに、意思表示するその鼓動の速度もさらに上がる。
8:07「佐藤さん、明日付き添い食いりますか?」。と突如現れた看護婦さん。
えっ??
今、それを答えるんですか???
8:08「ふぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓」 再び声のトーンが変わる。
「まだだめよ」。
「ふぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓」
8:10「全開」。「全開やね。もうねぇ、準備するからね」。早よしたげて。
「あ”ぁ” いたイ!いタイ!!」
「いたいなぁ~もう気張ったら生まれるぐらいまできとるからね」。
「ほぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓」
「い”ッ。。。イタイィィィ!!!!!ー」
「よう今までがんばったね、はい、ふぅーう」。
「ふぉぅ←~→ぬぅxxxXXXXXXーうううぅぅぅ↓」
「もうそこまで、頭来とるからねぇ~。ふぅーう」。
「はぁァxxぁー→←~ぁああぁぁあ↑↑↑」
「まだ気張ったらだめやでぇー」。
「ひゃぁはぁぁaa~a~ァ」
「はぁはぁしてごらん」。
「はぁァxxぁー→←~ぁ↑あ。はぁァxxぁー→←~ぁ↑あ↑↑↑↑↑」文字にできない、息づかい。
「ふぅぅぅーーー」
「ほなね準備するよー」。いや、だから早よしたげてって。
「ふぅううううーーー」
「お口あけとってよ~」。
「はふぅぅぅ」
「旦那さんこれちょっと着とこうか」。ブルーのでっかい割烹着エプロン?を前から羽織る。
二人羽織は出来そうにない。
「はぁァxxぁー→←~ぁ↑あ↑ア↑A↑a」
「頑張ろうなぁ。赤ちゃんねぇ。もう頭の髪の毛でてきとるけんな。がんばってね」 。たしかに出てきてるよ、それらしきものが・・・出てきやすいように頭蓋骨が、ずれて細くなって出てくることは読んだことがあるが、それはそれは未知との遭遇20XX年宇宙のハリーポッターとアズカバンの物体Xの旅・・・
「はぁい!! はぁ~・・ほぉ。。。」返事ができる余裕があるみたいで、ちょっと落ち着くと思ったが 「はぁァxxぁー→←~ぁ↑あ↑ア↑A↑aaaァァァぁぁぁ↓」
「はい、もうちょとお頑張るぅ~。ふぅーう、よ。ふぅーーーう」。
「ふぅぅぅゥゥゥuuu」
「今までガンばったんやけん、まだいける」とオレ。
何を根拠にそんなこと言えるんだ???
「ふぉぅ←~→ぬぅxーぅ↓ふぉぅ←~→ぬぅxゥーぅ↓フォぅ←~→ヌuxーゥ↓」
「よう我慢したねぇ~。ふぅーう」。
「ほハぁァぅxxぁー→←~ぁ↑ア」
「まだよー。口あけてごらん、はぁはぁしてね」。まっ、まだなんですか。早よしたげて。
「ふぅぅゥゥuuーー。ハほHぁァー」このやりとりが繰り返されること数回。
「もうちょっとしたら、下持って気張ってもらうからね。もうちょっとだよー」。きっと1分が1時間ぐらいに感じてるんだろうなぁ。
8:14 先生登場。登場テーマ曲『威風堂々』を勝手に頭の中で流す。
「あぁ~、あーーー、ふぅーーー。あぁ、もうダメぇ~」先生を見て安心したのか、もう勘弁してくれという意味なのか? さっきまでと違い、はっきりわかる単語でしゃべってるよ!
「ほなな、ここに黒い持つとこあるでしょ。ここ持とか」。“もうちょっと”かなり長かったなぁ。
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