車中泊による飛込営業の旅 第六回

蚊との戦いから逃れ、やっとの思いで安息の地を手に入れた僕。

朝早くに家を出たから眠さMAX。それにショートさせたもんだから気落ちもハンパじゃない。

とっとと寝て気持ちを切り替えないと、と寝たのはいいが、油断大敵、更にこの後強烈なパンチをもらい、ダウン寸前に。


翌朝は8時くらいに目が覚めた。昨夜のドタバタで体がダルい。

起きて周囲を見ると路上駐車はそのまま残ってるし、すこし散策してみると喫茶店があった。

腹も減ったし、朝飯はここにしようと決め込んで、スーツに着替え、喫茶店へ。


サンドイッチを頼み、コーヒーを飲みながら、好きな小説を読む。う~ん優雅だ。こんな落ち着いた朝は久しぶりだなぁ~なんて感じながら至福のひと時を過ごす。そんな至福からこのあと一気に地獄に転落することも知らずに・・・。


余裕こいて、そんな至福のひと時に酔いしれた僕は時間が経つのも忘れ小説に没頭。気づいたら10時を過ぎていた。「おっと、いかんいかん」と我に返り、レジで清算し、店を出る。


車に戻って「さぁ、営業と修理工場だ」と意気込んでいたら、

その「車」が見当たらない。どこにもない。

「あれ?場所間違えたかな?」と、もう一度自分の場所を確認し、記憶と照らしあわす。


「いや、確かここに停めたはず・・・。あれ?盗まれた?でも鍵はかけたから・・・」

胃に何やら冷たいものが流れこむ感覚がして、ちょっとパニくってると足元には白い紙が・・・読んでみると


「ここに停めてあった○○-○○の車両はレッカー移動させました。 ○○警察署」

「うそーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


「トムとジェリー」なら目が飛び出て、更に紙を突き破ってるような状態です。

もうびっくりだし、情けないし、頭の中は自分の置かれている状況の整理が出来ないし。


よく見るとさっきまで停まっていた他の車は既に移動されており、レッカーされたのは僕の車だけ。

「そうか、地元の人間はここがヤバイの知ってて、タイミング計って停めてたんだ・・・」となんとなく合点がいく。


とにかく車を取り返さないといけないので、紙に書いてあった警察署に電話してみる。

電話口で第一声怒られた。それで、場所を聞いてみると「~川沿いで~辺りにある・・・」そんなん地元とちゃうからわからんわ!!


仕方ないので、道行く人に聞きながら警察署へ向かう。

このとき、フランスで迷子になったときのこと思い出した。


警察署について、交通課に通され、そこで住所と氏名を名乗り、免許証を渡す。

「あそこは観光地で駐車禁止区域なんですよ。何であんな場所に停めてたの?」

と聞かれても昨夜のドタバタの説明やら名古屋から仕事で来てることとか、車中泊でとか普通に言っても多分理解できないだろうし、どうやって伝えれば短くキチンと伝えられるかわからん。


「いや、え~と名古屋から仕事で来たんですけど・・・」と説明をしかけたら、

「それは関係ありません。レッカー代と罰則金をお支払いいただきます。」


といきなりピシャリ。

おいおい、今あんたが「何で停めた?」と聞いてきたから説明しようとしてたんですけど!!人の話は最後まで聞け!!

幾らだったかなぁ~?全部で3万近くは請求された気がする(罰則金12000+レッカー18000、あれ逆だったかな?)。もちろん、財布の中にそんな金はないし、銀行行くにも自分の口座契約している銀行は地方銀行だからこっちにはない。


ということで、交渉開始する。

交渉っつっても「後払いにしてくれないか」という程度。実は何回か(レッカー移動を)やられてるので後払いできるのは知ってる。


それに手持ちの現金ないんだもん。すると、罰則金は後日振込みで大丈夫だが、レッカー代はこの場で支払え、と。いやいや、それ、手持ちの金ほぼ全額なんですけど、それ。と交渉しても取り付く島もない。


腹立ってくるし、早くその場を離れたかったので、レッカー代だけ支払った。財布空っぽ。

車まで案内され、乗り込む。妙に車が愛おしく思えた。「おぉ~やっと取り戻した。」

しかし、テンションは昨夜の件からもうガタ落ち。気力もない。何もする気にならない。


適当にどっかの店の駐車場に停めて(もう周りが全く見えてない)、ひたすら落ち込む。半泣き状態。金ないから修理にも出せない。かつてないほどの落ち込みよう。


もう、何していいかわからないし、何もする気になれない。昼飯も食えない。


奥さんにグチ電話してみる。

答えは「ふ~ん」と「えーっお金なくなっちゃったの?」これだけ。


・・・こいつは。


夕方までそんな状態で、ウダウダしてたけど

金がない、つまり

 → 高速使えない

 → 下道使うしかない

 → 時間かかるから名古屋到着は夜

 →ライト点かない、ということに気づく。


これでやっと目が覚めて(?)動き出す。エンジンをかけ、名古屋へと繋がる道を探す。

上手く、迷うことなく道を見つけ、名古屋へ向かう。財布の中身は1000円ぐらいしかなかったのかな。


高速使えばガソリン足りるのはわかってたけど、下道となると足りるのかどうかわからない。

エアコン使えないのは幸いしたがとにかく暑いし、渋滞してる。

メシ食ってないのと(窓全だけど)暑さから汗だくになりながら運転してるから頭もボーッとしてきてる。


「俺は無事、名古屋まで辿りつくんだろうか・・・?」と心細さいっぱい。


オーディオイカれたせいで無音だし。そのまま下道をガソリン無駄使いしないように運転し、眠たくなったら自分で自分の顔を思いっきりひっぱたいて、フラフラになりながら家に着きました。


これを以って「もう飛び込み営業の旅はやらねぇ」と心に固く誓った僕でした(ま、実はその後三重県四日市市内でもやったんですけど、この時は泊まりじゃないし、両親ともに四日市周辺出身なんで、そんな「旅」っていうほどのものじゃない。受注ゼロは一緒ですけどね)。

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