標準学生服は分類上は長ランであるという話ー僕の高校時代2-

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僕が通っていた高校の制服は、いわゆる詰め襟の学ランと呼ばれる学生服だった。

が、実は普通の学ランと微妙に違っていて、使われている生地なんかも少し光沢があり、さらに詰め襟には、車のライトを反射して発光するカラーが縫い付けられていた。

普通は、どこの高校も市販の学ランを買って、ボタンだけを自分の学校のものにつけ変えて着ることができたが、僕たちの高校だけが専門の衣料品店でこの特別製学生服を購入しなければならなかった。とにかくこれは「変形学生服」着用防止のための策であったらしいが、学生からの評判は最悪だった。

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しかし、この変な制服のせいで市販のちょっと変わった形の制服を着て学校に行くと一目瞭然でわかるわけで、見つかれば生活指導の先生に首根っこを掴まれるわけだけど、あえて市販のちょっと気合の入った制服を着ていくことが逆にカッコいいことになっていた。

夏の通学定期不正使用で、わが校の「停学・謹慎クラブ」に入会し、これで先輩にシメられることもなくなったので、僕も既に上京した4つ年上の兄が残していった「中ラン」と細めのズボンをはいて登校を始めた。

袖の丈より着丈のほうが長ければ長ラン、短ければ短ラン。そして、袖丈と着丈がぴったり同じものが「中ラン」(ちなみに標準学生服は袖よりも着丈が少し長いので、分類上は一応長ランになる)。兄が残していったものは、胴回りも普通のものよりは若干細めで、細めのズボンと合わせるとばっちりキマッタ、と思っていた。

もちろんカラーなんぞはつけないので、他のヤツらと比べると、首回りがすっきりしていてこれもいい。夜間に光るカラーが縫い込んであるものなんぞはダサくて着ていられるかと。

で、髪形もばっちりキメていったかというと、そりゃ、もちろん僕なりにバリキメのつもりでいた。でも、はた目から見るとただの丸坊主。

当時、パンク少年だった僕は、ロンドンのパンクロッカーのマネをして、スキンヘッド風(実は坊主頭とは少し違っていて、そこが重要なのだが、もう制服の話で長くなったので、これは割愛する)でかなり気に入っていた。しかし、王将でラーメン食べていると調理師のおっさんに「兄ちゃん、野球部か?」と声をかけられるという残念なことになっていたけれど。

高校時代の僕の髪形は模範的、着ている制服はちょいキメ。こんなアンバランスな感じの姿だった。でも、この年頃にはこの年頃なりのこだわりがあるのだ。

それとは正反対に髪形はぼさぼさ、脱色した髪がカボチャのように頭頂部から盛り上がっていて、鼻の真ん中から上(つまり顔半分)がすっかり前髪で覆われている何とも不思議な髪形をしているクラスメートがいた。その割に制服は上下とも標準。

髪形は模範的、制服はちょいキメの僕と、髪形はアメージングで制服は模範的なユージ(仮名)。

ユージはあの年頃にしては肝の据わったヤツで、サッカー野郎どもとも仲は良かったのだけれど、雰囲気につられてとか、数の勢いで何かをしてしまうという感じがなく、妙な落ち着きがあった(髪形はまったく落ち着きなかったけれど)。

ユージの成績はよくもなかったけど、それほど悪くもなかった。家業を継ぐということで既に進学の意志もなく、その頃はギターばかり弾いていたようだ。だから、ギターの腕はこの学校一と言われていて、実は僕の謹慎のせいで出場停止になったビートルズのコピーバンドのギターは彼がやる予定だった。

で、このユージ、授業の時はひたすら寝ていた。だいたいクラスには一人くらいこんなやついるのだけど、まあ、1時限目から6時限目までよくこんなに長く寝ていられるかというほどよく寝ていた。1,2時限くらいなら寝ていられるが、それより多くとなるとそんなに寝られるものじゃない。もちろん、先に紹介したバスケ部女子の一件の時にもユージは寝ていたと思う。

寝ている学生に対する態度は教師によって違っていて、英語のおじいちゃん先生なんかは「僕は昔勤労学生で、昼間学校で寝て夜働いていた。今の僕があるのは高校の先生が昼間寝かせてくれたから。だから、寝る人は起こしません。」とか言い切っていて、ユージは別に夜働いているわけではなかったと思うけど、毎回熟睡でこの先生を迎えていた。

反対に寝ることを絶対許さなくて、必ず起こす教師もいて、数学の若いアニキ教師がそうだった。確か彼は、誰かの代わりに非常勤で僕たちの学校に来ていて、普段は夜間高校の担任をしているということだった。

ユージとアニキ、そして僕。このユージとアニキが起こした騒動に巻き込まれる形で、あの「死ぬほど恥ずかしい思いをした」事件は起こった。

でも何だか前置きが長くなったせいで続きはまた次回。

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キレた教師と友達を止めようとしてキレたんだけど、余裕で無視された瞬間の話-僕の高校時代3-

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