初めて家族を失って思うこと

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そんな風に、ばあちゃんはもう自分で自分の可能性を閉じている。


だからこそ僕は渡された1万円を見て

ばあちゃんはもう「託す」ことを決めているように感じて、

「いらない」と言ってお金を突き返す気になれませんでした。




代わりに何か、何でもいいからばあちゃんと話をしたい気持ちになって

ばあちゃんが布団を敷くのを半ば無理矢理手伝いました。


「そんな手伝ってくれなくていいよ。」


とばあちゃんは言っていましたが、話を聞かずに布団を敷き始める僕。



それでも、


「本当にいいから。やらなくていいから。」


と言って僕を遮るばあちゃん。


「いや、やりたいからやってるだけだから。」


と僕が言っても


「いいから。やらなくていいから。」


と言って、僕が運んだ敷布団以外は自分で準備を終えてしまいました。



どうやらばあちゃんは、

耳が遠くなって僕の声があまり聞こえていないようでした。


それでもしばらくばあちゃんの布団の横に

話すこともないままどっかり腰を下ろす僕。


「じいちゃん、よく生きたと思わない?」


そうばあちゃんに聞くと、


「・・・え?」


「・・・じいちゃん、よく生きたと思わない?」


「そうだねぇ。今日は葬式で疲れちゃったねぇ。」


返事はちぐはぐでした。


「じいちゃん、は、よく生きたんじゃないか?、って、言ってるの。」


そうゆっくり話すと、


「耳が遠くなっちゃって、よく聞こえなくてねぇ。。。」


と、申し訳なさそうな顔をするばあちゃん。


それを聞いて、僕はまた少し悲しくなりました。



最近では、ばあちゃんの会話は

お父さんやお母さんとでも成り立ってないことがよくある。


それでもなんとなくばあちゃんが

「そうだよねぇ」と同意して話が流れているのも見かける。



(自分がいつも話が聞こえてる振りをして

 何の話の中身もわからないまま会話が終わっていくのって

 どんな気持ちなんだろう?)



そんなことを思いながらも聞こえたふりをされるままなのが嫌だった僕は、

もう一度ばあちゃんの耳元で、さらに大きめの声で言いました。


「じいちゃんは、よく生きたと思わない?」


「そうだねぇ、よく生きたよ。ほとんど90歳だからねぇ。」


とばあちゃん。


・・・通じた。


そして僕はもうひとつ、ずっと気になっていたことを聞きました。




「じいちゃんとばあちゃんは、いつから仲が悪かったの?」



・・・



僕は1年ほど前に半年ちょっと実家に戻っていたんですが、

その時じいちゃんとばあちゃんにブチ切れたことがありました。



「なんでそんなに2人は仲がわりーんだよ!

 オレら家族はずっと迷惑してるんだよ!

 オレが家を出たのもお前らが仲が悪いこんな家にいるのが嫌だからだよ!

 理由聞くまでぜってーこの部屋から出て行かねーから!」


と。



「お前らなんてマジで嫌いだ!」と言ったところでばあちゃんは「自分が悪い」と言って泣き出し、

じいちゃんは何度聞いてもひたすら「堪忍してくれい」と言い続けていました。



それが心にあっての質問。



父いわく「オレが産まれる前からだからわからん」と言っていて、

僕は本人の口からはっきり聞きたいという気持ちがありました。



するとばあちゃんは、


「そうだねぇ、あの人は本当に話しかけても何も言わないかんねぇ。

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