学生なのに、会社員である、ということ
返答4パターン
1「給料は?」
2「就活楽勝だね」
3「そこでずっと働くの?」
4「インターンってこと?」
「学生だけれど、会社員をしています」と話すと、大抵の場合はこの4パターンの反応があります。
学業が最優先されるべき身分において、会社員などという責任ある役割やってて大丈夫か…?という意味合いを込めての返答が殆どです。ぶっちゃけ留年しているし、会社で働く前に勉強しろよ…と言われても仕方がありません。
特にご年配の方からは決まって「そんなことばっかりやっているから留年するのよまったくっ」と初対面にも関わらずチクチク怒られることになるのです。更に、少し前までド金髪にしておりましたので、チャラチャラした雰囲気が私にまとわりついていたのでしょう。「ちゃんとやれ」とご指摘を受けた時には、でへへ、そうですよねえ、なんてヘラヘラ笑って煙草をふかしておりました。
そういった方々から受けるご指摘も勿論有難いのですが、そこで「なぜ会社員をやっているのか」という内容について深くは語ってこなかった自分がいます。面倒だから、口頭じゃ上手く伝えられないだろうから、きっと話が長くなってしまうから、煙草を喫っているから、だから、何となく端折って適当に話してしまう。
幸いなことにこの場では口頭でなく文章で表現できますし、煙草も喫い終わったばかりですので、この際だから面倒がらず真面目にご説明して参ります。
Yシャツストック
まず某会社で働いている経緯を話すには、どうしても話さなければならないことがあります。2012年春、某省でのインターン経験についてです。
「省庁かー、かっけーなあ」と、ただもう単純に憧れていた職場でした。愚行でしょうが、「ワタシ○○省でインターンしてるの」って正直言ってみたくて仕方がありませんでした。だってめちゃくちゃ格好良いと思いませんか?インターンシップに応募して合格通知が来た日にはもう、居ても立ってもいられず眠れませんでした。
そうして20人の精鋭が集まったインターンシップに、奇跡的に私も参加できたわけですが、配属された部署では企画提案や事務作業のお手伝いをさせて頂いていました。遅刻魔の私はまるで違う人間の如く15分前に職場に出勤。大学ではそれこそ落ちこぼれですが、与えられたお仕事には真剣に取り組んでいました。
昼休みには、”官僚”と呼ばれる職員の方々から多くのお話を伺いました。建物の”外側”から見る省庁の姿と、お話から得られた”内側”の実態は、まるで違った世界でした。ほんの数時間だけ寝る為に自宅へ帰り、そしてまた出勤…。中には机の下にYシャツを何枚かストックされている職員の方も大勢いらっしゃるそうです。
「官僚の数が多すぎる」「公務員の数を減らすべきだ」と公務員叩きを取り上げるメディアも多く、私もその影響を受けていたことは事実です。しかし実際は逆。このタスク量に見合うだけの人数なんて全然いないじゃん…。同じ部署に配属された女子学生も同様に「人が足りない…。」とぼそっと呟いていたことを思い出します。
(参考資料:「各省庁国家公務員定員数の推移」http://www.jinji.go.jp/tayou/03sankou13_16.pdf)
(参考資料2:http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/435167.pdf)
人生初めてのインターンを終えて
インターンで社会人の方々と同じオフィスで同じ時間を共有することになるまでは、私に「ビジネスマナー」の欠片もありませんでした。社会人ぶるつもりはないけれど、学生としての枠から抜けられない”甘さ”があったように思います。狭くて小さな井戸から大海に出られたことが嬉しくとも、その海を自由に泳ぐだけの実力が無い…。
これまでは”若さ”や”情熱”でやってこられたけれど、もうそれだけでは通用しないのだと、愚かながらその時点で気が付きました。
もっと色んな世界を見るべきだろうな…そう決意したのは、某省インターンを終えた数カ月後の夏のことでした。私は大学で教職課程プログラムも受講しており、更には12歳の頃から「字幕翻訳家になる」と豪語しているので「インターンなんてやる必要あるのか…?」と自問することもありました。
字幕翻訳者として働くことを夢見ている自分にとって、それ以外の企業でインターンシップをしても無駄になるのではないだろうか。そんな時間があったら字幕翻訳家になる為にしこたま映画の鑑賞をしていた方が、よっぽど有意義なのではないか。広い世界を見るよりも、広い世界の中の一部をどっぷりディープに見る方が良いんじゃないか…。
私には、思い立ったらとりあえず動く悪癖があります。「思い立ったら行動!」という言葉を座右の銘にしている方も多いことですし、こうして文章にするとなんだか良く見えるでしょうが、熟考せずただノリだけでフラフラ動いているわけですからそりゃ上手くいかないことが圧倒的に多いのです。
そこで見つけた、映画関係の会社でのインターンシップ募集要項。「そういや、字幕翻訳者になるためには人脈を作ることも必要だって聞いたことあるし…今んとこ授業もちゃんと受けてるし…大丈夫っしょ!」というノリで一次選考に応募しました(それも”学生ノリ”で生じる甘さだと反省しています)。
一次選考には通ったものの、二次選考の面接では”字幕翻訳家になりたいの?この英語力なんかじゃあねえ…””今の時代は第2外国語が話せないとね”等々、自分自身について質問される一般的な面接スタイルとは、全く違ったスタイルに…。
やはり某省インターンで得た反省である「”情熱”よりも”実力”を付けることが先決」、英語力という例をとっても今回まざまざと思い知ったところで、結果は不合格。鳴らない電話を携えながら「だよなあ、そんな甘い話じゃないよなあ…」と思っていたところに1本の電話がありました。
Oと名乗る人物


”横浜ビーチフェスタ”とは毎年夏に横浜市で行われる催しの1つで、2万5千人の動員ながら全てボランティアで運営しているイベントです。
友人に「一緒にボランティアスタッフやらないか?」と声をかけられて2011年に運営側で参加した際に”横浜ビーチフェスタ”の代表であるO氏と知り合うことが出来ました。氏は会社経営が本業で、”横浜ビーチフェスタ”に留まらず主にイベント企画・運営やそれにまつわる広告事業を取り扱っている、いわば”プロのイベンター”です。
私は”誰かに会いたい”と恋しくなる時には小さなイベントや飲み会を催すのが大好きで、ちょうど某省インターンの同期会を企画し実施した後に「イベント打ち上げるのって、何だか楽しいな…」とふと思ったことがありました。
自分の企画したイベントに誰かが足を運んでくれて、楽しんでくれて、笑顔で帰ってくれる…その一連の流れに身を預けられるなんて最高の職業だ!Facebookに「Oさんみたいなイベンターに憧れる」という主旨の投稿を書き込んだことがあり、その投稿が丁度Oさんご本人の目に留まり連絡を下さったとのことでした。




とトントン拍子で、プロのイベンターであるOさんにお会いする日程が決まっていきました。
Like a rolling stone
その後実際にお会いしてから、まるで私が転がり込むようにしてO氏の会社で働かせて頂けることになりました。タイミングも良かったのか、2013年度の”横浜ビーチフェスタ”の企画にも携わることが決まりました。あれよあれよという間にOさんと共に仕事することになったのは、タイミングだけでなく、波長も合ったことが大きな要因だったかと思います。
中でも、最も印象に残っているのは「企画書、良かったらどんなものでも構わないので見せて下さいませんか」の一言でした。「うわ~、プロのイベンターに見せる企画書なんてねえよ…」と内心焦りながらファイルを漁り、結局お見せしたのはWordで作成した企画書。それをパラパラと読んだ後の一言が「PowerPointで作ったものはありませんか?」でした。
”実際の経験を活かした部分は素晴らしいけれども、読んでいてダルいかダルくないか、それが重要なポイントの1つ”だと教わりました。目を落とすと、数カ月前にしたためた自分の企画書。文字がダラダラ羅列してあるだけの”ただの文章”でしかありません。
「そうだよなあ、これじゃ論文、だもんなあ…」
頭をポリポリ掻きながら”こりゃとんでもない世界に来ちまったなあ”と考えていました。
大きなイベントといえどピンからキリまであるのでしょうが、まるで子ども騙しのような規模の小さなイベント・飲み会で幹事を務めるのとワケが違う。企画書はPPT等をベースに数種類用意するのは当然のことで、しかもIllustratorやPhotoshopが使えなければクソ程の役にも立ちません。
勿論お恥ずかしながら私は、それらのAdobeソフトに触れたことなど一度もありません。華やかで綺羅びやかだと思っていた世界に、面白半分で爪先ちょこっと入ってみたら、華やか・綺羅びやかという表現だけでは到底表せない世界が広がっていました。
イベンターの内部事情を書いた方がぶっちゃけ読み応えがあって面白いのでしょうが、実のところ私自身がまだイベンターとしてまだまだ未熟で、右も左も何もかも分からないしょうもない身分なのです。むしろイベンターについて皆さんから教えて頂きたい位です。
「やりたいこと」の三角食べは難しい
私は三角食べができません。しかも父親の癖である立膝がいつの間にか私の癖にもなって、キチンとした正式な場での食事は足がうずうずしてしまい少し緊張してしまいます。
私のやりたいことである「教育」「翻訳」「イベント」。今回は「イベント」に焦点を当てこれだけの長々とした拙文を書いて参りましたが、実はまだ残り2つもあるのです。これら3つはこれまでの短い人生を、小生なりに振り返った際に少しでも手を伸ばしたジャンルでもあります。
正式な場ではたとえ行儀が悪くとも、遠慮無く膝を立てることが出来るようなリラックスした環境の中で、自分の持てるものを増やしていきたい。直接私が就職するであろう職業と全く関係のない世界だとしても、やりたいことは思い切りできるような環境にまだまだ居たい。
学生なのに会社員であるということは、中途半端に会社を背負うというわけではありませんし、中途半端に学生をやるつもりもありません。そして、3つのジャンル内をあちこち動きまわる三角食べもできない、あえてしない、ということです。
「広い世界を見るよりも、広い世界の中の一部をどっぷりディープに見る方が良いんじゃないか」という自問に対して、1つの答えがもうすぐそこまで出ているのでは、と私はこの駄文を書きながらそう思っています。
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