西日が強い
8月下旬、まだまだ残暑の厳しい季節、東西に通った道を歩いていた。一人ではない。お客様と先輩と私。若輩者の私は両手に荷物を抱えていた。
みんな額には汗。夕暮れ時にはまだ早いが、強烈な西日を向いに歩いていた。お客様も先輩も上着を脱いでいたが、私はそうもできず、ひたすら汗を流していた。
「ワイシャツを絞ってどれだけ汗が出てくるか、それで査定にも影響が出たんだぜ」と言う先輩の言葉が戯れ言だ、と言い切れない程度な、先輩との関係も、あるいは会社との関係もそんなものだった。
自転車で通り行く人々が羨ましかった。
私はいったい何をしているのだろう。
先輩が何か言って、お客様が笑っている。
何がおかしいのかわからなかったが、私も笑う。
この絵はなかなかおもしろじゃないか。
そう思うと、バックを握る手に力が入った。
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