別れの夜はペヤングカップ焼きそばと共に

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どう食えと。

野菜とご飯。

どう食えと。


さすがにこのままでは無理のなので冷蔵庫の中の卵とケチャップを拝借してオムライスを作って食べた。もはや面白かった。


衝撃のナタリア


ある日僕は思った。このままではいけない、と。

確かに少し変わったところはあるが、みんな根はいい人たちだった。(たぶん。)

もっと仲良くなりたい。別れの日に涙を流して再会を誓い合いたい。


そして僕の頭にナイスアイデア。

そうだ、日本食、つくろう。


「ナタリア、日本の食事を作って上げるよ!」

「あら、そう?ちょうど今日のメニューに迷ってたところだったから、じゃあ今日お願い!」


迷うも何も3種類しか無いがな。

という気持ちはそっと胸の端っこに置いて、僕は近くのスーパーに材料を買いにいった。

メニューは親子丼。クックパッドを見ながら頑張って作った。我ながら悪くない出来。


そしてディナーの時間。親子丼を4人の前に並べると、揃いもそろって怪訝な顔。

ボブとジョージが一口食べる。

さらに怪訝な顔。彼らはそれを置いてシリアルを食べ始めてしまった。

「おいおいまじかよ。お母さんが作る黒こげステーキの100倍おいしいだろくそガキが。」

とは言わず、

「日本の味は口に合わなかったかな?」とナタリアとダニエルに苦笑いを向ける。

二人も苦笑い。

そしてダニエルがおそるおそる一口。

「あれ、おいしい。」「これ、めっちゃおいしいよ!」

なぜかダニエルにはどはまりしたようだ。よかった。


その様子を見ていたナタリアも、卵の部分だけ一口。

そして、僕に言った。


「しょう、ごめんね。私は宗教の関係で肉は食べれないのよ。あとで卵と汁だけいただくわね。」


え…。そうだったのか。知らなかった。

これは完全に僕のミス。しっかり聞いておけばよかった。じゃあいつもナタリアのだけは肉が入っていなかったのか。確かにナタリアが一緒に食事を取っているのはあまり見たことが無かった。気がする。

申し訳ないことをしたなあ。次は肉の入っていない日本食を作ってあげよう。

余りに余った親子丼は僕とダニエルで全て食べた。


次の日、僕は珍しく課題が早く終わり、暗くなる前に家に帰ることができた。

2階に上がると、そこにはナタリアの姿。手には、マックのチーズバーガー。

「あら、おかえり。早かったわね!」


ナタリア、おまえ…。


僕が日本食を作ることは、二度と無かった。



そして別れの夜



4ヶ月間が過ぎた時、僕は思った。

「引っ越したい…」


この家族は決して悪い人たちではなかった。

話しかけたら楽しくおしゃべりしてくれるし、彼らの行為に悪気は感じない。(たぶん)

ナタリアなんて「あなた友達いないだろうから、これでスパニッシュの友達を作りなさい!」とスペイン語を熱心に教えてくれた。むかつくけどいい人だった。


けどやはり住環境も精神環境もあまりよくない。てかよくない。

学校も遠いし。家に帰ってジョンによってぐちゃぐちゃに荒らされた部屋を掃除するのはもう疲れた。


ということで引っ越し先を決め、1ヶ月後に引っ越しということになった。

ナタリアに告げると、しっかりと悲しんでくれた。

「もう一度あなたの日本食を食べたかったわ」とか言われた。

そしてナタリアは確かに言った。

「じゃあその日は、あなたのお別れパーティーをしましょう!」



ホームステイ最後の夜。

僕は一人キッチンでペヤングにお湯を注いでいた。

「これで最後かぁ。」

ホストハウスには僕一人。荷物をまとめたスーツケースはすでに玄関に置いてある。

「ホームステイ最後の夜が一人って…」

家族は夕方頃に「今日は友人のパーティーに誘われてるの!ご飯は自分で食べてね!」とどこかに出かけていった。


いや、まあなんとなく分かってたけどさ…。その日の朝まで期待してしまっていた自分が憎い。

そのペヤングは、いつもよりしょっぱかった。


次の日の朝、僕はダニエルに見送られてその家を去った。他の家族は昨晩の疲れからか、まだ寝ているようだった。



これがホームステイの現実だ!なんて言いません。違うので。

文化の差、習慣の差、常識の差というのはそれだけ大きいということです。それは国によってではなく、個人レベルの問題で。

この家族は面白すぎて、逆にまだ連絡は取っています。決して僕にいじわるしてたとか、めっちゃ仲悪かったとかそういうことではないので、誤解なきよう。

ホームステイしたら、いい意味でこんなイカれた人たちに会えるかも!というストーリーでした。

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