「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑥

さゆりはズボンと上着を脱いで洗濯機に突っ込むとベランダに向かった。

たとえお父さんの服と一緒に下着を洗われてもさゆりは気にしなかった。

周囲の友達はそういうのを気にする年頃であるのに対し、「家族だし、お父さんの血が体に流れている身だし、別にいいじゃん。」がさゆりの意見だった。

ベランダでタオルを取ろうとした時、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。

その音はこちらへ近づいてくる。

「お姉ちゃーん、飲み物あったっけ?」

疲れたような眠いような声で彼女は尋ねてくる。

「んーあるんじゃない。朝、お母さんが麦茶作ってたし。」

「そっか。あっ ただいま。」

そういうとまたバタバタと音を立て台所へと消えていった。

「そうだ、下着も用意しないと。」

さゆりはタオルを手に取り、廊下を出ると少し、大きめの声で彼女に話しかける。

「あのさ、詩織、麦茶飲んで二階に行くなら、私の部屋からいつもの着替え持ってきてくれない。シャワー浴びるのよ」


「いいよ。後で持っていく。」

一拍遅れて返事が返ってきた。

おそらく麦茶を飲んでいたのだろう。

了解の返事を聞くとさゆりは浴室に走った。


「あー暑い暑い。」

裸になり、すぐさまシャワーの蛇口をひねる。

全身を冷たい水が駆け抜けていく。


先ほどまで身にまとっていた汗という名の水分とは天と地の差だ。

これが同じ水分とは思えない。


ガチャ。

浴室のドアが開く音が聞こえる。


「ここに置いておくね」

詩織の声が聞こえた。



【⑦に続く】







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