【Part 2】 「26歳、職ナシ、彼女ナシ、実家暮らし男子が、とりあえず、統合失調症になってみた。」~トラウマの源流は三歳から~

3 / 4 ページ

 柏崎厚生病院は、患者の健康状態、家庭環境、そして、本人の社会復帰への意欲が問われる。その3つが兼ね備えてないと、退院は厳しい。


 自分は、あくまで推測だが、健康状態と家庭環境は、良かったのだと思う。その時には、父の納骨も終わっていて、家にお骨が無い状態だったので、あとは、本人の社会復帰への意欲だけだった、これは、「テレビを見たい」という、一見すると社会復帰と関係のない、相反する関係に見られると思われるが、本人は社会とつながり合いたいと望んでいるとも捉えられる。いいように流れが変わり、無事に退院となり、思う存分、テレビを堪能する事が出来た。






・休学、転入、アルバイト。~高校は卒業しておこうと思った~


 しかし、テレビを見たところで、復学することなんてできなかったし、親もさせようと思わなかった。7月から11月あたりまで、家でひきこもる生活をしていた。


 自分で使えるお金が無くなったころ、近所に住んでいる人に、コンビニのアルバイト先を勧められた。ちょうど、うつの気も無くなってきたので、働くことを決意した。


 しかし、そこでのオーナーは、強面で、バックヤードで店員に怒鳴っている声が、レジまで聞こえてくるほど、おっかない人だった。


 「ぼけーっと突っ立ってんじゃねえ!!」


 「ちゃんと、髭をそれって言っただろ!」


 刃向ったら最後。怒号を浴びせられる。中でも、一番つらかったのは、とある元旦に、自分の次に交代するシフトのアルバイトが風邪で休んでしまった。

 そして、その分のシフトを自分に押しつけられた。それだけだったら、まだしも、「どうして風邪なんて引くんだよ!!」とまくし立てるオーナー。そのとばっちりを受け、イライラと罵声を浴びせられる自分。

 あまりの事に、トイレに入り、スンスンと泣いていた。そして、バイト終わり、オーナーが、


 「ごめんな…。これ、お年玉」


 と、お金をくれた。オーナーが座る位置と、トイレの位置が壁一枚隔てたぐらいの設計だったので、自分の涙が聞こえていたのだ。自分は、受け取るのが恐ろしかったが、拒否をすると、さらに何か言われそうで、御好意をおっかなびっくり受け取った。


 そのオーナーは、歌舞伎町のコンビニに移転したそうだ。お似合いだなと思った。


 次にやってきたオーナーと店長は、本店から来た人だ。


 「いい?くわばらくん。このコンビニに就職しちゃだめだよ。」


 と、言われた。


 前任のオーナーと180度違う、優しいオーナーだった。唯一怒られたのが、カップラーメンを元の位置に戻さずに、シフトを上がった事が、何度も続いた時だ。血の気の多かった自分は、キレて帰ってしまったが、次の出勤の時に、


 「自分の言い方も悪かった。くわばらくんごめんね。」


 と、言われた。これには、自分が悪い事をしたんだ。と、大人になれた気がした。「ごめんなさい」を言ったもん勝ちなんだな、人生。と悟った瞬間だった。


 しかし、穏やかな日は長くは続かなかった。


目の前が真っ白になる。息が荒くなる、過呼吸。とても、バイトと学業を両立する事が出来る状態ではなかった。ある年の12月、「自律神経失調症」という診断書をもらい、バイトを去った。ちょうど、1年間バイトをした計算になる。その分、学業に身が入った。






・演劇ボランティア部より愛を込めて


 高校時代、唯一入っていた部活がある。それが、「演劇ボランティア部」である。


 通常の演劇部と違い、高校演劇のコンクールに出場する事が無い、特殊な演劇部だ


 学園祭で、劇を行い、「あしなが育英会」への募金を募った。


 自分は、「交番へ行こう」という舞台の、手塚巡査長と言う役を仰せつかった。そして、舞台終演後、「あしなが育英会」への募金を募る、スピーチを行った。


 「どうして、一人だけ覚えることが多いんだろう?」


 と、正直に思っていたが、最後にピンスポットがあたり、教室内の視線が、一心に自分に向けられているのが、快感に思えた。


 その活動が認められ、高校生新聞社賞を受賞した。


 「くわばらさ~、本気で役者とか目指したら?」


 顧問兼演出の先生に言われた言葉だ。


 「いやいや、自分なんて…。」


 そう思っていた自分の肩書きが、「パフォーマー」であるから、人生は小説より奇なりである。


 大変なこともあった。


 自分のやる手塚巡査長をやりたい女の子がいた。しかし、手塚巡査長自体は、男性で、日下部巡査という新米警官をなだめるという役どころだった。


 どっちが演技がうまいとか、そう言う事ではない。どっちが、役にぴったり合うか。

 それだけのことだ。

 しかし、その手塚役希望の女の子は、去年の段階から、主役の座を奪われている。

 今年がラストチャンスなのに、急に四年生になって入ってきた野郎に、役を受け渡すなんて。

 と、口には出さなかったが、表情、態度でそう思わせていた。


 ある日、顧問の先生に呼び出された。


 「いやぁ~、あいつが言う事聞かないから、くわばらの口から言ってやってよ~。」


 あいつとは、あの女の子である。


 先生ですら手を焼いていたんだな。と思うのと同時に、「………俺っ!!?」と、思った。


 しかし、言われると断れない性格の自分は、言う事にした。


 衝立から、手を出して、自分扮する、手塚巡査長が「おばけだおばけだ!!」と騒ぐシーンで、その女の子が、手を出せばいいだけなのだが、身体を出そうとする。そうすると、舞台が破たんしてしまう(彼女は他の端役をやっているため)。


 「○○さぁ~、手だけ出した方が怖いよ。全体が見えるより、一部分しか見えない方が怖いし…。」


 と、言うや否や、衝立が


 「バーーーーーーーーーーン!!!」


 と、雄叫びを上げた。


 蹴りあげられた衝立。滞る部室の空気。


 「今日は練習やめにしよう。」


 自分は肩を落とし、パンフレットを、先生方に送るという作業をした。


 「よし!気分を入れ替えよう!」


 と思い、「失礼しまーす!」と元気よく入った、コンピュータ室の準備室で、驚くべき光景が広がっていた。


 いつも明るくふるまっていた、数学の先生が、泣いていたのだ。それに付きそう保健室の先生。自分は反射的に、「見てはいけないものを見てしまった」と思った。


 しかし、「あ、入ってきて!!」と、泣いていた先生が笑顔になっていた。自分が、


 「警官の役をやるんです。」


著者の桑原 和也さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。