【Part 2】 「26歳、職ナシ、彼女ナシ、実家暮らし男子が、とりあえず、統合失調症になってみた。」~トラウマの源流は三歳から~
と言うと、より一層笑顔になって、
「私の父も、警察官だったの!絶対見に行くね!」
と、喜んでくれた。
また、こう言う事もあった。パンフレットを配り終えた翌日、担任の先生が、自分のところにやってきて、
「お前、演劇ボランティア部だろ?あんなのと一緒にやってるのか?」
と、驚いた顔で言われた。
一瞬で、「あんなの」が思い浮かんだので、話を聞いてみると、
「『失礼します』も言わずに、ガーって扉開いて、ぶっきらぼうにパンフレットだけ渡して、帰ろうとしているから、注意しているんだけど、話し聴かねえの。お前、あんなのと一緒にやってんのか。大変だなぁ~。」
演劇とは、舞台上よりも、舞台の裏側で起こっている事が、一番面白い。
最後に、「あんなの」の話を一つだけ。
彼女と部長の女の子と、自分と、後輩の主役、日下部巡査長の四人で、自主練習をしているとき、壁に掛かってあった、世界地図を直した。そうすると、血液型の話になり、
「くわばらさんって、A型っぽいよね~」と言う話になった。
ここまでは、たわいもない普通の話だが、彼女が発した「私、B型なんだ~」の発言に対し、「そうっぽいよね~」と返したのである。
この日以来、自分は血液型占いが嫌いになった。
いままで穏やかだった空気が一変。不穏な空気が流れた。
部長の女の子に呼び出された。
「さっきの発言、本気?冗談?」
自分は、何の事か、良く分からなかったが、とりあえず、B型の女の子に謝る事にした。
「さっきは、失礼な発言をして、申し訳なかった。」
すると、女の子は、
「後ろ向いて」
と言い、自分の尻を後ろに振り向いた瞬間、思いっきり彼女のローキックが自分の尻に激突した。
自分は反撃しようかと思ったが、それをしまっては、舞台が壊れてしまうと思い、何度も耐えた。
何度も蹴り上げてくるので、自分が倒れない限り、こいつは蹴り続けると思い、わざと倒れた。
駆け寄る、部員たち。
「いやぁ~。ちょっとね~。」
と、ごまかしているときに見た、「あんなの」の表情は、忘れられない。
復讐を遂げた、やりきった憎たらしい顔だった。
でも、自分は思う。
人生なんて、選ばれない事の方が多い。その選ばれなかった時、どういう振る舞い方が出来るのか。それが一番大事。最後に愛は勝つのだから、慈悲深く、他の人と接する事にする。そう決めたのが、この時であった。
・高校卒業、漢字検定二級取得
ついに、高校を卒業する時がやってきた。バイト、学業、部活と、思い残すことが無いぐらい、充実した高校生活だった。
しかし、一つだけ思い残している事があった。
それは、中学生の時から続けている、漢字検定のことだった。
中学校二年生の時に、漢字検定五級に受かってから、味をしめ、毎回受けていた。
三級まで、ほとんど勉強せずに合格していた。転入先の高校は、単位制の学校なので、漢字検定二級を取得していると、そのまま二単位免除となる。自分は、高校三年生の時に受けたが、失敗し、二単位分、余計に授業を取らなくてはいけなくなった。
自分は悩んだ結果、「情報」系の単位を取ることにした。それは、毎週金曜日に、他の学校にタクシーで足を運び、そこで、二時間授業を受けるというものだった。
最初は、何となくやっていた授業だったが、楽しくなっていた。
そこで、迷惑メールと知らずに、サクラのメールアドレスとやり取りをしてしまい、ポイントを請求され、一万二千円を請求された。自分は怖くなって、振り込んでしまった。一七歳にとっての一万二千円は、十二万二千円に相当する。
自分はその日以来、サクラメールには、過敏になった。大学時代も釣られたこともあったが、コツをつかんで、「あ、これは、サクラだな」というのが、一発でわかるようになった。
まず、「メールじゃアレだから、ブログを読んで~」と言うメール。そのブログに、会社名や、聞いた事のないブログ運営会社が載っていたら、一発でアウト。最近では、「間違えてメールしちゃったんですけど~」と、偶然を装い、ポイントを請求する、詐欺軍団もいる。
自分は、「Re:」を何度も送りつけ、最後に、「Are You サクラ?」と書いて送ってやった。そうすると、一発でメールが来なくなった。皆さんも、迷惑メールにご用心。
閑話休題。
漢字検定二級の勉強をしようと思ったのが、部活も終わり、大学も決まり、やることが無くなったからである。
写経のように、一文字一文字丁寧に、書き順から丁寧に書き始め、ノートは三冊以上になった。
試験前日。本番同様に、ラジカセのタイマーをセットし、模試に取り掛かった。試験時間は二時間。しかし、最初の一時間で、答案を埋めてしまった。答え合わせをしていると、驚愕の事実が、明るみになった。
合格に必要な得点は、二〇〇点満点中一六〇点なのにもかかわらず、その答案では、一五六点であった。意気消沈していると、ラジカセのタイマーが流れた。
「頑張って!絶対合格できるよ!」
あの有名声優、朴璐美(ぱく・ろみ)さんの声であった。
ラジオ番組で発した発言をMDで録音し、掛けたタイマーで、朴さんの声が流れた瞬間。自分は、鼓舞された。
結果は、漢字検定二級合格。
卒業式の日に、担任の先生から読みあげられ、ガッツポーズをしながら、賞状を前面に出す集合写真を取った。六枚中五枚に、賞状が写っていた。
友達からは、
「よっぽどうれしかったんだね」
と言われた。皮肉なのか、祝福なのか、分からないぐらい、楽しい時間を過ごした。
これが、幼稚園から高校卒業までの、ちょっとした人生である。
追記・この漢字検定二級の報告を、朴さんと宮野真守さんのラジオに投稿したところ、見事採用された。
「ハンパネルラ~」
と、掛け声とともに、鼻声になった朴さんが、
「私たちの仕事にも、意味ってあるんだね。」
と、述べられていて、うれしかった。
仕事をするという事は、人に感動を与えることなんだ。そう、気づかされた瞬間でもある。
ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
著者の桑原 和也さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます