【Part 9】「とりあえず、統合失調症患者になった自分が語る、26歳の人生。」~精神病棟へ入院編②~
と。
そうすると、
と言っていた。
こんなにまっすぐな愛情表現を味わったことが無かったので、面喰ったが、事なきを得た。
退院する時も、ハグをしてくださり、
と、言ってくれた。
それが、今の生活の大きなベースとなっている。
・トシヤさん
大部屋に移った時、トシヤさんという新しい入院患者さんがいらっしゃった。その人には、娘さんが二人いて、下の女の子が、テケテケテケ~と、お父さんと自分の居る大部屋に入ってきた。
自分は、何かをしなくては。と思い、手元にあった、「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」を、手渡した。
ちなみに、その本は、自分の親父の遺品である。
すると、その女の子は、
と、元気いっぱいで返してきた。
朗らかな気持ちになっていると、お父さんが、
と、言った。
一瞬、「ん?ブックオフ?」と、思ったが、雰囲気、流れ、文脈から、悪い事を言われているわけではないので、そのままスルーしていた
退院する時、どうしても気になったので、
「あの本、売らないでくださいね~」
と、冗談交じりで言ったら、
「売りませんよ!」
と、真剣な表情で言われた。
よかった~。って思った。
・ヒサコおばあちゃんのジェラシー
このパートで、一番書きたかった人かもしれない。
ヒサコおばあちゃんは、自分の祖父が一周忌を迎えたとき、両手を合わせて、祈りをささげてくれた。
自分の年齢の話になり、
「私は…46!」
と答えたので、自分も乗って、
「46に見えないですよ!」
と、返すと、
「間違えた!64だ!」
と、答えるお茶目な人だった。
退院が決まったある日、ヒサコおばあちゃんの、自分に対する目つきが、異常に怖くなっていた。
挨拶をしても、無視をされているので、自分はそっとしておこうと思った。
いよいよ翌日、退院する。と言う日に、病室のドアから、ヒサコさんの声で、
「くわばらさん、居ますか!!」
と、悲しみと怒りが混じった声が発せられた。
これは、何かある。やばい何かが。と思い、すぐに、ドアを開け、話をすることにした。
「くわばらさんは、どうして、私を無視するんですか!!私、ずっと待っていたのに!くわばらさん、全然、私に話しかけてくれないじゃないですか!私は、悲しくて悲しくて、夜も眠れません!!」
へ~、女性って、一生ジェラシーを持ち続けるんだ~。と冷静に思いつつ、一人では、なだめられないと思い、看護士さんの所へ行った。その間に、午前中泣いて午後笑っていた女の子がやってきて、仲介に入ってきてくれた。
なんとか、ヒサコさんをなだめることができ、事なきを得た。
退院の日、自分はあみちゃんと、たまみちゃんと、ヒサコさんのほっぺたにキスをして、病院を後にした。
自分が、この4カ月で学んだ事は、人は、接触を起こさない限り、一段階深い仲良しにはなれないと言う事。そして、2人以上いたら、誰かが誰かを恨んだり、妬んだりしているという事を学んだ。
退院の日。母親は、なぜか30分遅刻して、病院にやってきた。
「くわばらくんが退院する。」と言う事で、自分の周りには、沢山の人が集まってくれた。
母親と看護士さんと自分で薬の説明などをして、それが終わり、ドアを開けた瞬間、母親は思わず涙をした。これだけの人が、かずやの退院を祝ってくれている。そう思い、胸が熱くなったらしい。
今まで、通い詰めていたお見舞いも終わる。しかし、これからが、重要だ。
Part 10では、退院後から、今の生活を書いていく。
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