双子の姉なっちゃんの話③【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
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人生は大きな渦のようだ。
真ん中の中心に渦の流れは進んでいる。
そこからそれることもあるけど、それようとする力より真ん中に戻す力の方が大きい。
だから必ず私たちは真ん中に戻ってくる。
自分の真ん中に。
その場所は、自分にそして自分以外の全てのものに安心感が生まれる。
いちばん自然でムリがなく、だけど一番自分の力を発揮できる場所なんだ。
自分の真ん中から少しそれながら、外へ外へと泳いでいる時。
どんなにバタフライしても、クロールしても少しずつしか前に進まない。
だけど、泳いでいる時、泳いでいる本人は遠くまで進んでいる気がするんだ。
水が口に入り、足をつってはじめて気づく。
少ししか進んでなかったことを。
そして今真ん中から遠くにいることを。
そして、少し気づくんだ。
泳ぐのをやめて水の流れに身を任せたらうまくいくんじゃないかと。
【鬱宣告】
私は、とっさに言われた言葉にキョトンとした。
パタンと手元で読んでいた資料を閉じて、視線を私へ移して言った。
彼女は心配そうに、そして少し飽きれて私を見ていた。
目の前に座っている女性は、医者だった。
“産業医”といって、労働者が健康に働けるよう、指導や助言をする医師のことだそうだ。
月に1度、忙しく働く人が多い私の会社へ訪問に来ていたのだ。
細い華奢な身体のその女性は、まったく医者とは思えない可愛らしい人だった。
私の回答したアンケートに目を通しながら、ため息まじりにもう一度私をみる。
診察前に私はアンケートに答えていた。
アンケートは、帰宅時間、睡眠時間、土日の過ごし方などの日常生活についての質問と、仕事で失敗したらあなたはどう思う?など心の状態についてのものだった。
そもそも、産業医の診察はみんなが受けるものではない。
著しく勤務時間が長い人か、自分で診察を希望した人が受けるのだ。
私は後者の方で、こんなに忙しくなる3ヶ月前、
足のむくみが気になってその相談のために診察を希望した。
だけど、すぐに仕事が忙しい時期に入り、産業医の訪問日程と何度も合わずに3ヶ月後の今日が診察の日となった。
今更3ヶ月前の足のむくみはもう今は気にならない。
ー今日の診察は何の意味もない。早く終わらせて次の打ち合わせの準備をしなければ。
そう思いながら診察に臨んでいた。
そんな意味もないと思って受けた診察で飛び込んで来た言葉が
「あと1週間もすれば鬱になるわよ。」だったのだ。
ー鬱なんかにならないてすよ。
そう言いかけて、言葉が詰まっていた。
涙が溢れて言葉にならなかったのだ。
涙はもう止まらなくなっていた。
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