双子の姉なっちゃんの話③【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
足りない。できない。分からない。が積もり焦りでいっぱいになっていた。
気づけば「分からない」が誰にも言えなくなっていた。
出来ない自分を責め続けていた。
まだ、まだ、まだ、まだ、まだ。。。
もっと、もっと、もっと、もっと。。。
目の前に越えなければいけない壁がたくさんある。
足をとめる事はできない。
一旦足をとめると、壁につぶされてしまいそうだったから。
壁は、ずっとずっと越え続けなければいけないんだ。
越えられなかった人は、
頑張れない人として会社や社会からはみ出してしまうから。
そのうち、仕事が終わって朝がくることが怖くなっていた。
仕事がない土日は何も考えられないし外にも出る気力がなくなっていた。
みんなが私の事をダメなやつと思っているんじゃないかと心配になっていた。
本当は、
少しとまりたい。
休みたい。
だけど、そんな自分の心の声に耳を傾ける時間もなかった。
いつも明日やその先にある仕事のことで頭がいっぱいだった。
もっともっと。
頑張るぞ頑張るぞ。
やるぞやるぞ。
走り続けるしかなかった。
私は、知らないうちに自分の心の声に蓋をして、
ムリをしていることを気づかないふりをし続けていた。
もう実は限界だったのかもしれない。
3ヶ月前の私の足のむくみが、奇跡的なタイミングで今の私を救ってくれたようだ。
あなたには休みが必要よ。
涙が止まらないまま私は、少しうなずいた。
自分の真ん中から少し反れながら、外へ外へと泳いでいる時。
どんなにバタフライしても、クロールしても少しずつしか前に進まない。
だけど、泳いでいる時、泳いでいる本人は遠くまで進んでいる気がするんだ。
私の診断結果は、すぐに会社に伝わり、
その日から私には「8時に帰宅」が義務づけられた。
8時に帰宅できることは、正直嬉しかったけど、
今まで、朝の3時4時まで仕事をしても終わらなかったのに、
8時に帰宅して仕事がまわるはずがない。。!!
そう思っていた。
私が仕切ってまわしている仕事がほとんどだったし、
すごい量の仕事があったからだ。
先輩が手分けして仕事をしてくれるというが、本当に8時に帰って大丈夫だろうか…?
そんな疑問を抱きながら私は8時に帰宅した。
8時帰宅が始まって少しして、
私がいなくても何もなかったように、仕事はまわっていた。
ーーなんだ。私がいなくても仕事はちゃんとまわっていくんだ。
何だかビックリした。
私は、絶対に私が必要だから休めない!と思っていた。
だけど、こうして足をとめることもできたし、仕事もちゃんとまわっている。
ーー私が大事に守っていたものってなんだったんだろう。
自分が無意識に持っていた概念が少しずつ輪郭を現していく。
『 絶対できない。これはこうするもんなんだ。』
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