悩み解決の一歩:話を「聴く」ということ

 「話を聞いてあげてください」――小学生を対象にした相談室のボランティアをするうちに感じたことです。その子は、あなたに言いたい事があります。きっと、聞いて欲しい事があります。もしかしたら、助けてと言えないのかもしれない・辛くて悲しいと言えないのかもしれない。何かが起きても、具体的なことは言わないかもしれない。でも、決して焦らないでください。慌てないでください。まずは、その子の話をきちんと聞いてあげてください。

 相談ごとの中で多いのは、クラスでのトラブルや友達同士との付き合い方についてです。大人からすれば些細な事でも、子どもはとても深く受け止めている場合があります。小さなことだと大人は見過ごしがちですが、当人にとっては耐え切れない事である場合があります。とある女子児童が、「お母さんには、もう言えない」と泣きながら訴えてきた事がありました。女子児童は、いじめと思えるほど明確ではないものの、時々嫌だなと感じることをクラスの女子のうち、数人からされていると言うのです。では、どうして母親には言えないのか。その女子児童に限らず、大半の子が「転校しよう」「先生に言いなさい」「気にしなければいい」「何をしたの?」という言葉に傷ついていました。

 親としては、子どもがいじめられている、或いはそれに近い行為に晒されていると知れば、助けたい・守りたいと思うかもしれません。何とかしようと考えるかもしれません。もしくは、どうしてそんな程度の事で悩むのだと憤りを感じるかもしれません。しかし、待ってください。どうか、もう少しだけ子どもの話に耳を傾けてあげてください。「転校する」という選択肢は確かに必要です。場合によっては、それで救われる子もいるでしょう。それは事実だと思いますが、そうではない子にとっては、親しい友達とも引き離される事を意味するその言葉は、はっきり言うと、まるで脅迫です。「その程度のことで悩んでいるのなら、仲良しの子と引き離すぞ」と脅しているに等しいのです。そう言われると、どうしてもそこで話をやめてしまう子が出てきます。そうなると、子どもはその話に触れなくなってしまいます。そして、その話題が上がらない事で親を含め、周囲の大人は解決したものと見なす場合が大半であろうと考えられます。しかし、それは結果的に、一番よくない方向へ進んでいるのではないでしょうか。大人側に、子どもを脅迫している意図がない事はもちろんですが、それが子どもに伝わらないようでは意味がありません。

 早期解決はもちろん大切で、その為の解決方法を模索する事は重要な事ではありますが、少しだけ立ち止まって、根本的な部分を見てみる事こそが必要なのだと、児童たちとの関わりの中で感じました。最後まで話を聞く・その子がどう感じているのかを知る・何がベストなのかを、その子の視点になって考えるか、或いは一緒になって考えること。これらを行うだけでも、子ども達の心は話せずに気持ちを閉じ込めたまま頃と比べて、格段に軽くなっていくはずです。もちろん、それだけで終わらずに、更に学校であれば教師との話し合いや連携なども必要になって来るでしょう。しかし、まずは対話が必要なのだと私は思います。大人が子どもの結論を取り上げるのではなく、その子がどのように感じているのか、結果的にどのようにしたいのかを知るために、子ども自身の言葉を聞くことが必要です。そうしなければ、本当に前へと進み出す事はできません。

 親が、或いは教師といった身近な大人が、子どもが訴えたい話の一部分を切り取って「結論」を出してしまう事では、何も解決しません。子どもには、子どもなりの理由や感情や都合があります。確かにそれが、すぐに言葉にはならないでしょう。場合によっては、話す事すらできない子もいるでしょう。無理に聞き出す必要はないと思います。話したいことを、話したいように、話したいときに、話せる相手に伝える。そんな機会を、子どもから奪わないこと、そして話したいと思えるように大人側が「聴く」姿勢を持つ事こそが重要なのだと、悩みを吐露する児童たちの姿からは感じられました。どうか「話を聞いてあげてください」――子ども達は、悩みをあなたにこそ話したいと考えているかもしれません。




 以上は、私の個人的な考えであり、感じたことです。もちろん、話を聞くだけでは解決しない事もありますが、話を聞く事で解決する事や楽になって自力で乗り越えられる場合もあります。まずは傾聴することが、第一歩なのだと思います。

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