第11話 人生を変えた旅ペルーⅡ【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】

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それにたまたま “アーティスト” という名前がついただけなのだ。



そう思うと、


何かになるために働くのはおかしいように思えてきた。

私たちは、もう何かになっている。



それは教えるのが好きだったり、

スポーツが得意だったり、友達を作るのが上手だったり。



生まれてから少なくとも、もう “自分” なのだ。


それに、いつしかただ名前がついて仕事になるだけなんだ。

その方がよっぽど本当で、本質的なことのように思えた。


リョニーさんは、とても簡単だけれど、

すぐに忘れてしまう大切なことを、

忘れずに生きている人だった。




お正月はリョニーさんの親戚と別荘で過ごした。




リマに帰ってからも、リョニーさんと色々なところへ出かけた。


リョニーさんの家に来てから、もう一週間と少しがたっていた。




第六章 一人旅への出発



まほ
リョニーさん、私はそろそろ出発しようと思います!



ある朝、私はリョニーさんに言った。



私たちがいつも通り、

朝日がたっぷり入るリビングで朝食を食べていたときだった。



リョニーさん
おぉ、そうですか。どこに行くんですか?



まほ
え、えっと。マチュ..ピチュ?でも見に行こうと思います。



リョニーさん
マチュピチュはいいですね~。行き方は分かりますか?



まほ
いや、あの…実は地図も何も持ってきてないんです。

どこに行くかも、何をするかも、実は何も決めてなくて…。



私は居心地が悪そうに正直に答えた。

本当に地図も何も持っていなかったのだ。



旅の目的も、未だによく分からなかった。



でも、明日には次の場所に行きたいと思っていた。



リョニーさん
え!あははは。面白いですね~。分かりました。ちょっと待ってください。



そう言っておかしそうに笑うと、

リョニーさんは朝食の手を止め、紙とペンを持って来る。



リョニーさん
地図がないなら私が描いてあげましょう。



そして、破ったメモ用紙にサラサラと筆ペンで一筆書きの地図を描いていった。



筆で描かれた太い一本のラインには “クスコ” や “アレキーパ” “マチュピチュ” など、

よく聞く場所の名前を追加して行く。




リマからマチュピチュまで、バスで一日半以上かかる距離だと聞いた。




その地図は、そんな長い道のりが、

小さな紙にささっと一筆書きで収まってしまっていた。




まるで近所のスーパーまでを描いたような、

なんともアバウトな地図が出来上がっていく。



そしてリョニーさんは、聞いたこともない、

普通の観光の本には載ってもいないような小さな村の名前も記した。



そしてそこに、村の名前と人の名前らしきものを書いていく。



サラサラと心地よい筆使いで、地図が出来上がった。



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