第13話 ルカとの出会い【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
そうして私は、ついさっき出会った男の子と旅をすることになっていた。
数時間前では考えられない。
出された右手を、私も強く握った。
真っ黒に焼けた彼の手の甲と、まだ真っ白な私の手をつよく結ぶ。
また彼は目を小さくしてクシャっと笑った。
初めて旅の仲間が出来てしまった。
そうして私の旅は、ガラリと変わってしまったのだ。
ルカ
彼の名前は”ルカ”と言った。
東京生まれ。私より少しだけ年上だった。
長く働いた会社を辞めて、貯めたお金で世界一周の旅に出ていた。
期間は5年らしい。
そして、今日はちょうど1年目。
彼はなかなかおもしろい旅をしていた。
好きな土地に住んでみたり、現地のヒッピーと自給自足をしたり
ゲストハウスで働いてみたり。
そしてメキシコからゆっくりと南下してきていた。
真っ黒に焼けた彫りの深いキレイな顔は、
背が高いのもあって、よく見ないと日本人には見えない。
それが、初めて出来たちょっと無愛想な旅の相棒だった。
■
そうして私たちはそのまますぐマチュピチュのチケットと、
マチュピチュ行きの電車のチケットを買いに出発した。
心配していたスペイン語の受付も、
南米1年の旅でスペイン語がペラペラなルカがやってくれる。
スペイン語が難しいところは、彼は英語で対応していた。
アメリカに留学もしていたらしい。英語はもっと流暢だった。
最強の相棒を手に入れた気分だ。
そうして全てのチケットを買い終わった頃には、
クスコの街はもうすっかり薄暗くなってしまっていた。
日の落ちたクスコの街は、太陽から街明かりへと変わっていた。
賑やかなセントロまでゆっくり歩きながら話す。
夕方のクスコは、一枚羽織らないとかなり肌寒かった。
肩をすぼめながら二人で歩いた。
このペルー人から書いてもらった地図だけで旅してんの??
ルカは呆れたのか感心しているのか、驚いたように何度も質問してくる。
リョニーさんに描いてもらった一筆書きの地図を、不思議そうに見ていた。
とりあえず、私はこの1年で起こったことや、
ソウルカラーのこと、旅に出た理由などを説明していた。
初めて出来た旅の相棒だ。ちゃんと全部話しておかないと。
一体何が”違う意味”で、何が”かなりヤバイ”のかよく分からなかったけれど。
ルカは笑っていた。
そして、今度は私がルカに質問する番だ。聞きたいことなんて山ほどある。
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