殺したいほど憎かった酒乱の親父が言っていた「〇〇になるなよ」という言葉が生きる力になっている話

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大きくなった私はそんな状況から逃げるように

夜な夜な仲間達と集まって、ろくでもない遊びを繰り返し

俗にいう非行少年へと変わっていった…。





そんなある日、

親父と二人っきりで家にいた。



いつものように親父は相変わらず

好きな野球を観ながら酒を飲み、

いつもの親父とは違い少し弱々しく私に話しかけた。




親父
こうじ…
な、なに…?

(なんだよ、珍しく話しかけてきて…)
親父
勉強はちゃんとしてるか?
あ〜、まぁそれなりに…

(嘘だけど…)
親父
そうか…

勉強はしといた方がいいぞ
・・・

(あんたに言われたくねーよ)


私と親父は普段はまったく会話をすることはなく、

目を合わせることもめったになかった。



そんな親父がポツリと一言

こう言った・・・



親父
俺みたいになるなよ・・・。
・・・・・・・・



この時の私には親父が何を言っているのかが

全く理解ができなかった。


普段会話もろくにしないのに

急に口を開いたかと思えばこんなことを

言われたものだから私は正直戸惑った。


そして私は親父の言葉とは裏腹に

親父と同じような道を

歩んでいってしまったのだ・・・。



勉強なんてしたこともなかった、

意味もなく誰かを傷つけ母を泣かせた。


正直自分が何のために生まれて

何のために生きていかなければいけないのか

それがわからなかった。


心はいつも孤独で

自分以外の誰かや自分自身との

向き合い方がわからなかった。



そんな荒みきった日々を過ごしていたが

あることをキッカケに17歳になった私は

改心していくことを決意した。



「俺みたいになるなよ」



親父のこの言葉を少しずつ

理解し始めた時だった。


それからの私は、

高校にも通わずろくに仕事もしていなかった生活から一変して

定職に就き仕事に没頭するようになった。


とはいえ、学歴も無く就ける仕事は限られていたので、

親父と同じ配管工の仕事で汗水垂らして働いていた。


それから2年程過ぎた頃から

仕事も慣れてきてはいたが

自分の将来を考えるようになった。


「このままでいいのだろうか?これでは親父と同じだ…」


そして19歳の時に私は高校進学を決意した。


夜間の高校に働きながら通って

大学進学を目指そうと志したのだ。


それから夜間高校の進学が決まり、

入学を目の前にしていた2004年の3月に

私の人生を大きく揺るがす出来事が起きた。




医者
お気の毒ですが、お父様の余命はあと3ヶ月です・・・



(殺したいほど憎かった、あの親父が3ヶ月で死ぬ・・・)


テレビドラマでよく観る光景が

私にもこんなに早く訪れるとは

夢にも思っていなかった。


全く実感が湧かず、

あの親父が死ぬなんて想像もできなかった。


殺したいと思っていたのに

赤の他人の医者から親父の死を宣告された途端、

どうしたら良いのか頭の中はグチャグチャになった。


病気とわかった途端、

親父は日に日にやせ細っていき、

見る影もないほどに老人のような

姿に変わっていってしまった。


親父が病気で死んでしまうということを

頭では理解していても感情が追いつかず、

親父が死ぬまでに色々と話したいと思っても

親父の姿を見ることさえ辛くて目も合せられなかった。



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