ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。

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何をどう書いていいか、まったくわからなかった。



とりあえず、想いを100%の直球でぶつけるのはよそう。絶対にひかれてしまい、復縁の可能性が0になる。かといって、想いを伝えなければ状況は発展しないしな・・・。あえて何も書かずに白紙の手紙を送るとか?いや、それは絶対にやめた方がいい。無言電話より性質が悪い。ちょっと濁す感じで詩を送る?いやいや、それこそひかれるな。


最初のラブレター案件と同じく、僕はマクドナルドの2階で頭を悩ませていた。ラブレターの方向性が定まらない。コーヒーを何杯飲んでも定まらない。ポテトを何本食べても定まらない。


2時間ほど考えたり、たまに本を読んだり、音楽を聴いたりしながら過ごした後、僕は一つの結論へとたどり着いた。


想いを伝えるのはやめよう。

その代わりに、奥様と過ごした時間のことを色々と書き連ねることにした。


休みの日はいつも近くのスーパーへと買い物に行くのが習慣だったこと、2人でバラエティ番組を観ては大声で笑っていたこと、4回目の告白でやっと奥様と付き合えることになったこと、奥様への初めてのプレゼントは指輪だったが、サイズが合わず奥様が怒って帰ってしまったこと。とにかく、依頼主から聞いた思い出を綴った。


昔の音楽を聴くと、その頃の出来事や思いが甦るように、昔の思い出を書くことで、愛し合っていた当時の想いが甦ることを期待したのだ。


即効性はないかもしれないが、じわじわと効果があるのではないかと思った。

僕は、祈るようにして文面を依頼主にメールで送った。数時間後、返信が来た。


ちょっと物足りないです。僕の気持ちはこんなものではありません。


依頼主の奥様への想いの強さは感じていたので、こういう反応が来ることは想像できた。

しかしながら、僕としては強く想いを伝えたら逆効果だという確信があったため、その旨を角が立たないように、やんわりと、丁寧に返信をした。


依頼主の要望通りに書くことは容易いが、それをそのまま受け入れるのは無責任だと思った。

ラブレターの目的は書くことではなく、想いを成就させることだと思っている。


先ほどは依頼主からすぐ返信が来たが、僕の返信に対しては1時間経っても2時間経っても来なかった。


結局、1週間経っても、1ヶ月経っても、返信は来なかった。

僕の返信に気を悪くされてしまったのか、もしくは、「こいつは駄目だ」と見限られたのかもしれない。


ここまで2件のラブレター代筆の依頼を受け、自分が想定していたのとはまったく異なるな、と痛感していた。そもそも依頼が来るとは思っていなかったし、来たとしても、高校生や大学生が軽いノリで依頼をしてくる程度だと思っていた。


でも、違った。2件とも本気だった。真剣だった。

これは生半可な気持ちではできないな、と思った。



■「結婚をする彼女へサプライズを」


2件目のラブレター代筆を依頼を受けた後、ぱらぱらとそれ以外の「就職・転職対策」や「プレゼンテーション指導」のお仕事を受けながら、本業とあわせてそれなりに忙しい日々を過ごしていた。


そんなある日、3件目のラブレター代筆の依頼が舞い込んだ。

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