上海生活、乞食の老人と僕との変な話 -前篇-

前話: 上海生活、乞食の親父と僕との変な話 ー始まりー
次話: 上海生活、乞食の老人と僕との変な話 -後編-

大学卒業。社会が怖くて逃げ行った上海留学。一方に伸びない中国語に帰国は恥ずかしくて選んだ上海就職の道。気が付けば未来に対する不安だらけで中途半端な20代中盤。そんな中で出会った変な乞食の老人。


このストーリーはそんな乞食の老人と僕との変な話です。


社会人二年生の僕は何時ものように仕事が終わっては行きつけの焼き鳥屋でたらふくお酒を飲んで家に帰ります。僕は上海にあるアパート型ホテルに住んでいて、その前にはコンビニがありました。コンビニの入り口には乞食の老人がほぼ毎日いました。何時も「カン、カン、カン、カン、カン」と通りかかる人に恵み(お金)をアピールするように鉄の器をコンクリートに叩きつけます。

僕は酔った勢いで乞食老人に話かけた事がありましたが、それ以降は恥ずかしくて恥ずかしくてなんも話しかける事ができませんでした。それでも僕は乞食の老人に興味を持ち、話しかけたいと思っていました。

しかし、なかなか勇気が出ず僕は何時も挨拶だけを繰り返していました。何よりも以前パンを差し出した所、お腹がいっぱいだからいらないと断られた事から話しかける事に微妙にビビッていました。それでも僕はまた酔った勢いで話をかけます。


おいら
老人、腹減ってねぇか?
乞食の老人
腹減ったです。


「きたーーーー!」と思いました。「老人は腹が減っているぞ!」って何故か嬉しいような楽しいような気分でした。老人の答えを聞いてすぐに僕はコンビニに入ります。そして乞食の老人に渡す弁当選びに入ります。

おいら
うーん、これは・・・・。ちょっと高すぎるな。あまり高い弁当の味をしったら可愛いそうだな。もうちょっと安い弁当をあげよう。うーん、でもせっかくの弁当なのに野菜だらけだなぁ・・・・。じゃあ、この弁当にしよう!


そうやってレジでお金を払って、やたらと誇らしげな僕は弁当を乞食の老人に渡します。そして嬉しそうに受け取る老人を後に自分の部屋に急いで戻ります。


と言うのも・・・、僕が住んでいる部屋の窓からコンビニは良く見えていて老人の行動がまるわかりだったからです。老人は僕があげた弁当を「どんな風に食べるのだろうか?」。くだらない好奇心なのでしょう、僕は単純に乞食にわたる食べ物がどうなるのか気になってしかたなかったのです。だって、映画とかだと貰ったその場で・・・・。表現が良く無いのですが、乞食らしくたらいあげて食べるもんです。映画とか漫画で見る「乞食」ってそうなんですよね。



窓の向こうを見た所・・・・、乞食の老人がいません。周りを見渡してもいません。

なんだ・・・。あの老人、僕があげた弁当で今日は終了(帰宅)かぁ?

気が付くと老人はコンビニの中にいました。レジで何やら定員とやり取りをしているではないですか。


ゆうだい
やっぱり乞食は乞食だな。僕があげた弁当を現金に変えるつもりなのか?店員よ、乞食に負けるな!絶対に現金化するな!

よし!良く見ると乞食の老人は現金では無くて弁当を店員に返してもらっていまいた。そして何時ものコンビニ入口前に座ります。それから老人は弁当をとりだします。弁当のふたを外し、はしを割り、弁当を食べ始める老人から不思議な事に気づきます。

乞食の老人・・・・。なんとご飯を「フーフー」と冷ましながら食べているではありませんか!!あれ・・・・。すると何時の間にか缶ビール!老人はメチャクチャ幸せそうです!缶ビールゴクリと一口、それからおかずをパクリ。ご飯を「フーフー」それからおかず。それからご飯、それからおかず。おっと、次はビールを一口!?

つまり・・・・。老人は「現金化」を望んでコンビニ入ったわけではありませんでした。「弁当を温める」ためにコンビニ入り、尚且つ弁当によく合う缶ビールを買っていたのです!


予想外の老人の行動にまた唖然としてしまいます。「飢えている乞食に食べ物を渡せば喜んでくれるだろう。おいしそうに食べるのだろう」そう思っていた僕は間違いなく偽善者です。だから普通の事も考えられない。別に当たり前な事なんですよね。

「飯は暖かい方がうまい」


温めないと食べれない弁当を渡して勝手に舞い上がっていた僕。ただなんだか乞食に振る舞う親切で自分は良い大人だと思いたかった。いや、それよりも根本的に・・・。お腹が減っている人に食べ物を渡すだけでは答えになっていないんだな。


もしこれが恋愛ならば、僕は最高につまらない男なのでしょう。もし部下ならば最高に気がきかない部下なのでしょう。社会がどうとかイラついている割にはめちゃくちゃツマラナイ大人なんです。なんだかんだいって僕はすごく当たり前の事をまたしても乞食の老人に感じさせられました。


そして思いました。

ゆうだい
僕は乞食の老人一人、喜ばせる事ができないんだな。

なんだか笑ってしまいました。「ちっちぇぇなぁ~なんとも器の小さい男だなぁ~」

なんだか妙に乞食の老人に完敗です。ただ気持ちいい敗北感というか・・。
その日はそのまま眠りにつきました。


もしかしたら、当時の僕はもっと褒めて欲しかったのかもしれません。海外で頑張っているとか、一人で良くやっているとか・・・。もっと誰かを喜ばせる事で感謝されたり認めて貰いたかったのかもしれません。寂しかったのかもしれません。でもそれもまた海外生活で学ぶ一つの経験なのかもしれません。


意味の無い事に意味をつけたがるのが人間の性質ならば、僕は間違いなくこの乞食の老人の意味の無い行動に必以上の意味を見出しているのかもしれません。


でも、これはそんな乞食の老人と僕との変な話なんです。

そして数日後・・・そんな乞食の老人との話を書き残そうと思ったある出来事が起こります。


続きのストーリーはこちら!

上海生活、乞食の老人と僕との変な話 -後編-

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