首長族の村に泊まり、タイの山奥で一緒に農作業をした話

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俺が望んでいたのはこれだったのか?




子どものころ、テレビの番組で、首長族のことを見たことがあります。

「ふわぁ、この世の中には、こんな不思議な人たちがいるんだ」

と感動したものの、まさか自分がいつの日かそこに行けるなんて、夢にも思っていませんでした。


ところが、東南アジア旅行の計画をたてていた時、首長族の村には比較的簡単に行けるということをガイドブックで知りました。

あこがれだった首長族の村に手が届く!

これはもう行くしかありません。


そしてついにやってきました、メーホーンソーン!



目当てのゲストハウスに到着した途端、手厚い歓迎を受けました。

いきなり、3匹の犬に取り囲まれてしまったのです。


タイに限らず、東南アジアの国では、鎖につながれている犬なんていません。

みんな放し飼いなのです。


3匹の犬たちが、けたたましく吠えながら私に迫ってきます。

わっ。わわわわ!


がぶっ!


えっ?

まさか、まさか、犬に噛まれてしまった?


頭の中を「狂犬病」の3文字がよぎります。

おそらく犬たちは甘噛みのつもりだったのでしょう。

もしも彼らが本気で噛んでいたら、今頃わたしの肉はズタズタに引き裂かれていたはずです。


しかし、噛まれたところは傷もついていないし、血も出ていないようです。

くっきりと歯形がついているだけ。

でも念のため、石鹸でよく洗っておきました。



夜行バスではよく眠れなかったのですが、休憩している場合ではありません。

首長族はもう目の前なのですから。

車をチャーターして、まずは一番近い村へと向かいました。





運転手は日本語が少し話せます。

彼に限らず、この村の観光に携わる人の中には、日本語が話せる人が少なくありません。


というのも、20年くらい前は、この村は日本人の観光客であふれかえっていたのだそうです。

ちょうど日本がバブルで浮かれていた頃ですね。

「でも、今はさっぱりだ。もっと日本人が来てくれないと、商売あがったりだよ」

と運転手は言います。


途中、警察の検問にあったり、車で川を渡ったりと、なかなかスリリングな道中でした。




それでもなんとか村に到着。

念願の首長族とのご対面です。







でも、思ったほど感動はしませんでした。

なんというか、首長族の人々は、みんな疲れきった顔をしているのです。

まだ若いはずなのに、人生のすべてを諦めきった老人のようにも見えました。

これは私の気のせいでしょうか。


カメラを向けると快く撮影に応じてくれるのですが、どこか寂しげな表情をしています。

村全体に覇気がありません。


「何かが違う。俺が見たかったのはこんなものじゃない」

村にいる間、ずっとその気持ちが拭えませんでした。



このメーホーンソーンには、首長族の村が3つあります。

今日の首長族の村にはどうしても納得できなかったので、明日、別の村を訪問することにしました。


ツアー会社のおばちゃんは

「どの村も同じよ。一カ所で十分」


と言っていましたが、自分の目で確かめてみないことには、どうにも気持ちが収まりません。

こうなったら3つの村すべてをこの目で見てやる。



リベンジ!


2つ目の首長族の村は少し辺鄙な場所にあるため、車で行くのは少し厳しいそうです。

なので今日はおばちゃんの運転するバイクで行くことになりました。



昨日と同じく、途中から舗装がなくなり、大きな水たまりが行く手を遮ります。

何度もぬかるみにはまり、そのたびにバイクを押して登るはめになりました。





苦労して来てはみたものの、2つ目の村の惨状はもっとひどかったです。

なんというか、ほとんど死にかかった村でした。

ここに住む人たちの目は、どんよりと曇っているようにしか見えないのです。



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