首長族の村に泊まり、タイの山奥で一緒に農作業をした話

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ちなみに、首長族の女性たちはみな英語が達者です。

日本人なんかよりもはるかに上手に英語を操ります。

この村には英会話スクールなどあるはずもないのに、彼女たちはどうやって英語を身につけたのでしょうか。




ある首長族の女性は、一枚の絵ハガキを見せてくれました。

そこには、3人のかわいらしい女の子たちが写っています。

聞けば、そのうちの一人は彼女の娘さんだそうです。

それまで濁った眼をして無表情だった彼女ですが、娘の話をするときだけは微かな笑顔のようなものを見せます。





彼女の店で、さきほどの絵葉書とは別にもう一枚の絵ハガキを買いました。

そこには大勢の首長族の子供たちが写っています。

小さな体に不釣り合いなほど大きな首輪。

まぶしい笑顔。

私が子供のころテレビ番組で見た光景そのものです。


なのに、この村にはそんな光景はどこにもありません。

「この子たちはいったいどこに行ってしまったんだい? 村には子供の姿が見えないみたいだけど」

と女性にたずねると、この時間は学校に行っているとの答えが返ってきました。

学校はすぐそこにあって、自由に見学できるから行って見てくるがいい、とのこと。


私の胸は高鳴ります。

学校に行けば、きっとこの写真のような子供たちのまぶしい姿を見ることができるにちがいない。




喜び勇んで学校に行ってみたものも、私はここで再び落胆させられます。

確かにたくさんの子どもたちがいるのですが、なにかが違う。

教室内はしんと静まりかえっていて、まったく活気がありません。


もちろん、授業中なのですから静かなのは当たり前なのかもしれませんが、それでもやはりおかしい。

小さな子ども特有のあふれんばかりのエネルギーを、彼らからは少しも感じることができないのです。

これはいったいどういうことなんだろう。





学校を後にして、土産物を物色していると、子供たちが帰ってきました。

どうやら授業が終わったようです。

首長族の女性の写真を撮っている時、視線を感じました。

その女性の娘さんのようです。

非難がましく、どこか悲しげな目でした。


その瞬間、私はものすごい罪悪感にとらわれました。

「もしかして俺は今、とてつもなく残酷なことをしているのではないのだろうか」

観光客の見世物になっている母親の姿を見て、この子はいったいどんな気持ちなのだろう。


その女の子は首輪をしていませんでした。

「私は晒し者になんかなりたくない」

彼女はそう言って、村の風習を拒んだのでしょうか。


なんとも言えない、苦い後味を残して、私は2つ目の村を後にしました。






首長族の村に泊まる


どうにも釈然としませんでした。

あこがれだった首長族の村を2つも訪れることできたというのに、まるでうれしくありません。

それどころか、なんとも言えない重苦しい気分が胸の中に渦巻いています。

「俺が見たかったのはこれじゃない。こんなはずじゃなかったのに・・・」


ガイドのおばちゃんは言います。

「ね、同じだったでしょ。それでも、もしも3つ目の村に行きたいのなら、いつでも言って」


頭を冷やすためにいったんおばちゃんと別れ、昼食を食べながら今後のことを考えます。

でも、結論はすぐにでました。


たしかにどこの村も同じなのかもしれない。

3つ目の村を訪れたとしても、まったく時間の無駄に終わる可能性は高い。


それでも、せっかくここまで来たのだから、やはり自分の目で見てみたい。

今ここでなにもせずに帰ってしまったら、きっと後で後悔するに違いない。


そう決心して食堂を出て、ガイドのおばちゃんのところへと向かいます。

ところが、おばちゃんはお昼寝の真っ最中。

気持ちよさそうに眠っていて、ちょっとやそっと声をかけたところで起きそうにありません。

なので、別のツアー会社をあたることにしました。



新しいツアーガイドの名はナムリン。

彼もまた日本語を話します。


ただし、彼の話す日本語は、かなり低俗。

彼のお気に入りの日本語は

「腐れ○○○」

「このメス豚がっ!」

そんな日本語、誰に教わったんだ?



私が一人で旅行していることを知ると、

「お前はラッキーだ。

いい女をたっぷり紹介してやるぞ。」

と張り切っていました。

彼にとって、一人で東南アジアに来る日本人の男の目的は買春以外にはないということのようです。

日本人って、東南アジアの人たちからはそういう目で見られているんですね。



彼の名刺にはこう書いてあります。


「Bad Sleep

 Bad Jokes

 Good Food

 Good Trek

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