内定ゼロのバンドマンが23歳でバレエを始めて劇団四季の主役になった話

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そしてその環境に身を置くことによって日々進化して成長していく自分を発見し、周りが劇団四季を目指すように導かれて僕も自然と劇団四季を目指していったんです。


僕が勇気を持って一歩踏み出さずに俳優養成所のオーディションを受けずに、その友人二人と出会わなかったらどうなっていたんだろう?


一歩踏み出す勇気によって素晴らしい出会いがやってきて、僕の人生はその出会いによって導かれたんです。自分が変わった後の素晴らしい出会いによって夢ややりたい事がやってきたんです。


ドリームキラーを跳ね除ける方法

こうして、23才の僕は、黒のタイツに足を通し、劇団四季に入るためには必須科目のクラシックバレエを本格的に学ぶことになりました。たくさんの女子に混ざって。


23才から始めるなんて考えられない事かもしれませんね。確かに、大学卒業してからサッカーの練習を始めてJリーグを目指す!というようなものかもしれません。


「無謀すぎる」


「バカなことをいっているんじゃない」


「絶対に無理」


いろいろなことを言われました。でも足腰の強さと運動神経に自信があったこと、そして何よりも日々成長して進化していく自分に驚き、いけるんじゃね?と思い始めて、そういった言葉を跳ね除けていったのです。


当然、最初はひどいレベルでした。

バレエの女の子
あなたをみていると情けなくなるよ

これは、まだ十代と思われるバレエの女子に言われた、僕にとって忘れられない“会心の一撃”です。

※余談
この「情けない」は男にとって女子から言われたら凹む世界三大、会心の一撃ワードです。
ちなみに残りの二つは
●「(同情のこもった)がんばれ~」
●「いい人」
だと僕は思っています(笑)。
女子の方、覚えておいて下さいね(笑)。

ドリームキラーには善意のドリームキラーと、悪意のドリームキラーがいます。善意のドリームキラーは、僕の可能性や伸びしろを見てくれているのがわかったので素直に意見を聞きました。


悪意のドリームキラーは、現状のレベルでしか見てくれません。自分が諦めてきた人生を送ってきたから気づいていないところで仲間に引きずりこもうとしているようでした。

だからスルーするようにしていました____。



こうして自分を磨いてダメダメな自分から脱却したい、心配や迷惑をかけた人に認められたい。そんな思いから、バイトしてレッスンするという生活が始まりました。


続けてたら一年で化けた

人間の成長能力って凄いものがあります。どんなに下手くそな事でも、しっかりと正しく習ってそれを続けると、一年もしないうちに別人のように進化をします。


続けるというと大変というイメージがあるかもしれませんが、習慣化すれば、サボった時は違和感が出るし、逆に成長が楽しくなってきます。僕も一年前とは別人の、上手くなった自分を発見しました。

そして5年かかったのですが、レッスンを続けることによって、28才に近い27才の時になんと劇団四季に合格することができたのです。



さらに、環境が人を大きく成長させるとよく言われます。


僕にとって合格して入った後の、プロの世界は全てが目からウロコでした。プロの環境で揉まれることにより成長が足し算から掛け算的になっていくようでした。

夢は叶える前よりも、叶った後の方が大変でした。プロの世界は結果が求められるから。入るよりも残る方が難しいんです。


しかし僕は何とか生き残る事が出来ました。半年ごとの契約更新時はいつも残れるかどうかドキドキものでした。


劇団代表から直接言われてとても嬉しかった僕の評価は「不器用だけど必死にコツコツやっているヤツ」です。


ずっと”その他大勢役”でしたが、好きな事で生計を立てられていることに幸せを感じていました。


主役は断崖絶壁を命綱なしで登る心理

しかし、入団7年目くらいからこのままではまずいと思い始めます。


プロは結果が求められますので「このままその他大勢役をやっていても契約は確実に更新してもらえない」こう思ったんです。

生き残るためには、責任のある役を勝ち取る必要があります。


ということで、もうこれが最後だ、と心に決めて意を決して劇団内の主役オーディションに応募することにしました。


そのオーディションは熾烈な戦いでした。受けるのはプロだけです。プロの中から選ばれなければなりません。


しかし僕が受験することにした「人間になりたがった猫」という作品は、僕が長い年月をかけて携わってきた作品でした。


いくつもある端役をほとんど演じることができるほど関わっていたので、主役のセリフも歌も踊りも全部覚えてしまっていました。


だから他の受験者よりも深みがあり、「もうこれで最後だ」という覚悟も伝わったようで、なんと僕だけ合格してしまったんです!!


主役に抜擢されて、そこから断崖絶壁を命綱なしで登るような孤独で厳しいお稽古が始まったんですが、そのあとのオチがまた激烈でした。


登山に例えますと、足を滑らせて崖の底に二度ほど落ちてしまったんです。


一回目は、あとちょっとで登りきるというところで足を滑らせました。つまり舞台初日の前日に、過度の緊張により大失敗をしてしまい「これでは主役として出演するレベルではない」と役をおろされてしまったんです。


その数か月後に上から縄が降りてきて、もう一度チャンスをもらったのですがまたまた大失敗をして足を滑らせました。この二度の失敗により、劇団内で完全に信頼を失ってしまったんです。


しかし、「そこまでやるんだったら一丁こいつにチャンスをやるか」と神様に思ってもらえるくらい練習してそれで劇団を辞めよう。そう思って本気でいつチャンスが来てもいいように準備をしていました。


そしたら周りの信頼も回復してくるのがわかりました。さらにここで突然、主役の人に緊急事態が発生したのです!!


「お前できるか!」


と言われ


「はい!やります」

と即答して緊急事態に対応する形で一ヵ月間主役を僕が務めたんです。



元フリーターが劇団四季の主役を演じた瞬間でした。

冷凍マグロのような固い身体の人間がバレエを始めて10年以上経っていましたが、人間は小さな成長の積み重ねによりこんな奇跡も起こせるのですね。


燃え尽き症候群になって自信損失

しかし、その一ヵ月間主役を演じて無事に重責を務めた後に僕の心にはある変化が訪れます。なんだかまったくやる気がしないんです。


そのうち良くなるだろうと思っていたのですが、いっこうに良くなりません。良くなるどころかどんどん酷くなり、その内人前に立つこと自体が辛くなってきてしまいました。完全に燃え尽き症候群です。


僕は就職活動で挫折してフリーターになり、いろんな人に心配と迷惑をかけました。だから、なんとか認められたい。この一心でやってきました。激流に逆らうかのように猛進してきました。


だから、劇団四季に合格して主役まで演じて目標を達成したらホッとして、なんだか認められたようで「もうここまででいいや」と思ってしまったんだと思います。


今更その他大勢役をやることもできないというプライドもどこかで生まれていたのでしょう。同時に、怖くて人前にも立てない自分もいます。


次に何を目標にしたらいいか?全くわからなくなってしまったんです…。そして僕は、残念ながら劇団四季を辞めることになりました。

※独り言
気合・根性論はもう古いかもしれませんね。

主役から、野菜を抱えての飛び込み営業の世界へ。

 舞台を降りたら、収入がなくなるので当然生活が出来ません。そこで当たり前の事ですが求職活動を始めました。もちろん簡単に雇ってもらえません。


その中で、唯一雇ってもらえたのが食品宅配会社の「車を運転してのルート営業。興味をもってお問合せ頂いたお客様にご案内をして頂きます」という求人広告の仕事でした。僕は、そこで働くことになったのです。

 

車を使ってルート営業というのは経験と成績を上げた人の話で、入ってみたらなんと飛び込み営業でした。


ピンポンピンポン、サンプル野菜を抱えて一日中チャイムを押し続ける仕事は、主役でスポットライトを浴びるという華やかな世界から一転して暗黒の世界でした。



追い打ちをかけるかのように人間関係も全くうまくいかず、更にその年は雪が異常に降る年でしたので寒さに凍えてサンプルの野菜を抱えながら道路にうずくまってこう思いました。

なんでこんなことになっちまったのだろう?

でも、僕はその現実に向き合ってみました

なぜなら、それがお先真っ暗で八方塞がりだった時に気づいた“光が見え始める考え方”だったからです。


目の前のことに対して向き合ってみることが人生を切り拓く秘訣だったんです。



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