激動のウクライナを、侍の衣装を着て歩いてみた

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前編: 侍の衣装を着てヨーロッパを2か月ほど歩いたらどうなるか試してみた

 マイダン広場の決闘~キエフ




1.

ベラルーシ~ウクライナの国境を通過したのは夜中の3時。

当然深い眠りについている時刻だが、容赦なくたたき起こされる。

いや、不穏な雰囲気で嫌でも目が覚めてしまう。

私のコンパートメントにも係官が乗り込んできて、パスポートをチェックする。

同室の他の人はみんなベラルーシ人かウクライナ人。

IDカードをさっと見るだけで手続きはあっさり終わったのに対して、なぜか私だけ時間がかかった。

端末機になにか打ち込み、パスポートをパラパラめくってすみからすみまで眺めている。

なんだか落ち着かない気分だ。

まだ夜明け前であたりは真っ暗。

隣のコンパートメントからは女性の声が聞こえてくる。

なにを言ってるのかわからないが、大声で抗弁しているようだ。

彼女の子供だろうか。

小さな子供が大きな声で泣きわめいている。

真夜中に叩き起こされて、無骨な審査官の検閲を受けるのは気分のいいものじゃない。

子供じゃなくても泣きたくなる。

なんだか自分が強制収容所行きの列車に乗り込んでしまったかのような錯覚をおぼえた。

朝8時、列車はウクライナのキエフに到着した。

ここでも係官が乗り込んできて、パスポートをチェックする。

そしてまたしても私だけ時間がかかった。

他の乗客はみんな列車を降りてしまっているというのに、私ひとりだけが取り残されている。

係官が私になにか聞いてくる。

だが、なにを言っているのかわからない。

なんだ? なにか問題でもあるのか?

これは国際列車なんだから、係官も英語くらい話せよ。

係官はしきりと無線で他の誰かと交信しては、私に質問をしてくる。

だが、彼の話す言葉は英語ではないので、私には答えようがない。

これではラチがあかないと判断したのか、係官は「ついてこい」という仕草をして歩き出した。

私のパスポートを持ったまま。

ウクライナは今、準戦時下にある。

少しでも怪しいと感じた人間は、即座に連行して詳しく取り調べるのかもしれない。

それにしても、いったいなにが引っかかったのだろう。

なにか不審な点でもあったのだろうか。

やましいことはないが、やはり緊張する。

それに、アナトリーが駅まで迎えに来てくれているはずだ。

彼を長時間待たせるのも心苦しい。

プラットフォームの端まで来たところで、係官が指差す。

その先には、見覚えのある顔が私に向けて手を降っている。

アナトリーだ。

「お前の友達か?」

おそらく係官はそう言ったのだろう。

「そうだ、俺の友達だ」

と答えると、係官はどこかへ行ってしまった。

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