蛇の道は蛇、気晴らしが大事という話  職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第7話

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11月のお試験の時に、ぴったりになるように、

お仕立ていたします。

ですが、あくまで、計算ですので、

10月に、再度、採寸させていただき、

ご調整いたしますので、ご安心くださいね。」


なるほど。

確かに、5歳児の最長を著しく、半年もすれば、

見違えるように、ひとまわり大きくなっているはずだ。


「本日、このタイミングで、お作り始めさせていただくのは、

生地の割り振りを決める意味がござますの。

お試験の会場で、同じお洋服というのは、なかなか、気まずいものですからね。

こちらにある、300種あまりの生地から、

もっとも、個性が光るものを選ばせていただいて、

ジャンパースカート、ワンピースをお作りいたします。

どの学校でも、誰とも、同じにならないように、

お子様が、自信をもって着ていただき、
もっとも輝くように、心をこめて作らせていただきますからね」


なんだか、ありがたすぎて、

値段を聞くのが、ますます怖くなったのと同時に、


こんな風に、大人の知恵を集結して、「もっとも輝く」ように、

しかも「校風のお好みに見えるように」と

仕立てていく世界があるということに、圧倒されていた。


こうなったら、もう、後には、ひけない。


あ~ちゃんは、いろいろなサンプルを試着させていただき、

誉められるものだから、にこにこしながら、

どんどん着替えている。


紺色のベスト、キュロットスカート、

ワンピース、カーディガンは、先生とマダムの提示してくださるデザインや素材に、

まったく異論がなく、スムーズに決まっていった。


最後、本命校の2次試験の親子面接用のジャンパースカートの生地を決めることに。

1次試験を通過しないと、2次試験はないのだから、

もしかしたら・・・作ったところで、袖を通さない可能性もあるものだが、

という不吉な考えは、振り払い、


逆をいえば、これこそ、本丸! というか、大勝負の衣装なわけで・・・。

力を入れなければ・・・とも思うと、無意識にこぶしを握っていた。


マダムは、見たことのない、チャコールグレイと黄色と白が基調となった、

タータンチェックと、チャコールグレイの無地を組み合わせた、

ジャンパースカートを、手にしながら、

「これまで、このジャンパースカートは、なかなかお似合いになるお子さんに

めぐり遭えなかったなかったけれど、


あ~ちゃんには、とても、いいと思うんだけど、どうかしら?」

先生も、「そうですね。めずらしい色あわせですけど、とても素敵。

おかあさま、いかがですか?」


えええええ?!


そういう色あわせって、ちょっと野暮ったいっていうか、

ふつうに緑と紺色のタータン、グレイと紺色のタータンのほうが、

スマートに見えるような気がするんですが・・・・。


ちなみに、よく見かける緑と紺色のタータンは、

ブラックウォッチ、と呼ぶとか。

タータンチェック発祥の地、

スコットランドのくロイヤル・スコットランド連隊兵士制服のキルトだそう。


しかし、親は色めがねをかけてしまっているから、

客観的な意見に従ったほうが、いい?!


すぐに、色よい返事をしないでいると、

「おかあさまは、あまり、気がすすまないようですね。

では、こちらは、どうかしら?」


と、まさに、わたしが「こんな感じだろう」と

考えていたグレイと紺色のタータンのを出してきてくださった。

「そうですね。そちらのほうが、いいような」と微笑みながら返す。


先生とマダムは、2着をあ~ちゃんにあてながら、

意見を戦わせている様子。


しばしの議論後の結論は、

「おかあさま、やっぱり、こちらのほうが、あ~ちゃんの魅力がはっきりと出ます!」と。

つまり、チャコールグレイと黄色と白の勝ち、というわけ。


長年、お受験の指導してきているプロと、

多くの子どもの本番の服を縫ってきたプロの意見に、従わないで、

結局、不合格だったら、後悔はしないか?! 自分!!!と自問自答。


まだまだ、その生地に対してのモヤモヤは、残るものの、

「えいやっ!」と、決断。

「はい。こちらで、お願いいたします。」


もう、オーダー服のお仕立て代金も、

そのタータンチェックで、よいのか、悪いのかも、

なにもかも、自分で決断しなくちゃ、腹をくくらなければ、始まらない。

やるしかない!


合格の可能性の割合を1%でも、親のできることで上げられるなら、上げたい。

やれることは、良いと思える選択をしよう。

やるだけやって、ダメなら仕方ない。


何をしたわけでもないのに、

ぐったりと疲れて帰宅。

パパに、お仕立てのアトリエでの話をすると、ひと言。

「プロに任せられる機会をいただいたのなら、

信じて、任せろ。」


そうだけど、

変わった柄なんだよ・・・と、

まだ、モヤモヤが消えなかった。


気晴らしに、「英国王のスピーチ」という映画を観た。

ウィキペディアの作品紹介によれば、

「吃音に悩まされたイギリス王ジョージ6世と

その治療にあたった植民地出身の平民である言語療法士の

友情を史実を基に描いた作品」とある。


親子面接の試験に備えて、

しっかり話せるようにするヒントが得られるかも?!という下心もあった。

評判のよい映画は、満席で、

内容も、深い感動をもたらしてくれるものだった。





そして、映画の終盤、

英国王が、妻や娘たちと、普段着でくつろぐシーンが出てくる。

なんと、その娘二人たちがおそろいで着ていたジャンパースカートが、

まさに、わたしがモヤモヤと悩んでいる、あのタータンチェックなのだ!




鳥肌がたった。




涙があふれた。
知らせてくれたんだなって、思った。
これで、いいんだよ、って。




そして、受験本番。

1次試験を無事通過し、天王山の2次試験、親子面接の日。


そのタータンチェックのあ~ちゃんは、

たくさんの、小さな受験生のなかで、

「黄色」で、目立っていたけれど、

品よく、ハツラツとした元気さが、際立っているように感じた。


わたしがひとりで選んでいたら、

決して、選ばないジャンパースカートは、

先生やマダムが、おっしゃったような効果を発揮した。


そして、2次試験、親子面接会場の扉を開けた。

続きのストーリーはこちら!

幼児が、リーダーシップを一瞬で身につけた魔法のことば  職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第8話

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