インスタントな英語論文校正に背を向けて、毎週2-3行しか進まないレッスンを経て得たこと
私の研究室では、英語で論文を出版することがとても重要である。
それにはいくつか理由があるのだが、一番重要なのはボスの哲学だ。

だからその発見を多くの人に伝えて、討論してもらうために英語で書く必要がある、ということだ。
でも、英語で書くことはそう簡単ではない。
私のボスはその解決法として、1人の達人を紹介してくれた。


それがデイビットである。
彼はシドニー大学で言語学の学位を取った後に学術論文のプロの校正者として働き、英語が母国語でない人が英語を書く上でアドバイスを行う多くの経験を得た人だった。
私は2014年から毎週欠かさずスカイプで彼のレッスンを受けたのだが、この一年に得た経験をいくつかのtipsとして紹介しようと思う。
最も重要なこと Easy-to-read
私、もしくは今読んでいるあなたはおそらく英語を母国語としていないだろう。だから、英語で技術的な論文を書くということは私達にとってかなり難しい。David曰く、

しかしながら、私達は英語で書くことを必要としている。(もしかしたら、それは義務かもしれない)
デイビットが私に教えてくれた最も大事なことは、自分が書くことを常に"easy-to-read"の状態に保つことだ。
彼の哲学をまとめるとこうなる。

私は本職の科学者だが、残念ながらプロのモノ書きではない。私がしなければならないのは、読みやすい英語、わかりやすい英語、小学生でも誤解しないような英語で私が見つけたことを世に問うことだ。
最近はこの業界も論文バブルの中にいるので、読まなければならない論文は日に日に増えている。だから、科学者は短い時間で読めて、何が言いたいのかすぐに分かる論文しか読まないし、それが求められている。
Don't translate from Japanese to English
日本語と英語はまるで違う。
私達日本人はアルファベットを使わないし、日本語の文型(SOV)と英語の文型(SVO)は構造がぜんぜん違う。だから、単語ごと、文ごとに翻訳を行うと、たいていおかしなことになる。(グーグルの自動翻訳を思い出してくれ)
私達は可能な限り最初から英語で書くべきた。
(もちろん物事には例外というものがある。David曰く)

Kiss (Keep it shot and simple)
このよく知られた略語は、easy-to-readを保つためにとても大切だ。
ほとんどの科学者はもしかしたら今やっていることのヒントがあるかもしれないと思って、ちらっと論文を読むだけだ。
Kissは忙しい彼らに私達の発見が見つけやすいようにしてあげることができる。
でも、これはそれほど簡単ではない。
私はいつも彼のレッスンの前にKissを気にしながら論文を作るのだが、Davidのチェックの後には別物に変わっている。
ビフォーアフターをすると一目瞭然だ。例えばこんな文章。
Figure X shows the distribution of A number. The A numbers were not related to the repeatedly quenched times. These features were similar to what we found in our previous work. Figure XX shows the distribution of the B numbers per 100 mm2. In all of the observation area, the B numbers increase with repeatedly quenched times. It is concluded that the B number is strongly correlated to the number of times.

Figure X shows the distribution of the A numbers. It can be seen that the A numbers are not related to the number of times the samples were quenched, however, in Fig. XX the distribution of the B numbers per 100 mm2 is clearly related to the number of times the samples were quenched.
うーん、文をつなげたり切ったりしてつなぐだけでこんなに読みやすくなる。
Always something worng
私は彼に論文を渡す前に、1-2時間くらいは読みなおすのだけれど、それでも間違いはなくならない。そんな時彼が言うのは決まってこの言葉だ。

学術論文は出版後に訂正するのが難しい。だから、校正者は目を皿のようにして間違いを見つけ出
す。ほんとうに本当に最後のチェックの時なんかは、彼はこんなことを言う。

そう、偏執狂的でなければならないほど、些細なミスまでみてくれるのだ。
そんなこんなで
まだまだ自分の英語スキルなんてぺらっぺらだと自覚している自分は、まだまだ彼とのレッスンを続けていく予定だ。まだまだ先は長い。
英語論文をインスタントに翻訳したり、校正サービスに出すんじゃなくて、もっとちゃんとした書き方を学びたい人は、Kindleで彼の書いたブックレットを読んでみてくれると、より詳しいことがわかると思う。たぶん、そっちのほうがこの文章より役立つんじゃないかな?
http://www.amazon.co.jp/Write-your-paper-English-Edition-ebook/dp/B00DR4Y4E4
あと、同じことを英語で書いてみたので、必要な方は以下からどうぞ。
https://medium.com/@koshiromizobe/nonnative-speaker-writing-in-englsih-1437e9c11da2
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