1997年半導体業界の未来を語る学生「さすが」

1997年に書いたレポートを紹介する。

内容は当時のまま。

電子材料シリコン半導体(ULSIプロセス)

シリコンLSIの大規模化を抑制する要因

半導体デバイスの中でダイナミック型メモリ(DRAM)は市場規模の大きさとして重要である一方,微細化技術開発のリーディングデバイスとしての役割も担ってきた.現在の市場の主流は最小寸法0.4~0.5μmレベルの16MビットDRAMであるが,学会発表レベルでは3年に1世代の速度で開発が進められ,最小寸法0.25μmの256MビットDRAMに続き,現在最小寸法が0.2μmを切る1GビットDRAMの世代に突入している.しかし,1GビットDRAMを実現するには,微細加工技術を中心として,特に次に述べる3つの大きな課題を克服していく必要がある.さらに洗浄技術についての課題についても述べる.

キャパシタ技術

微細化によって単位セル面積は減少の一途をたどっているが,ソフトエラー耐性,リフレッシュ特性等の観点から,DRAMとしての動作を保障する下限の容量はほぼ一定と見積もられている.したがって容量確保のため円筒型,フィン型などの電極を複雑に3次元化して電極表面積を増加させる手法がとられている.しかし微細化の進展に従い,①作製プロセスの複雑化,②デバイス表面の断差の増大が以後の行程に悪影響を与える,といった問題点が顕在化してきた.

リソグラフィー技術

0.25μm世代のKrFエキシマ転写技術に対して,1Gビット時代に必要な0.18から0.16μmの微細パターンを形成する転写技術に関しては,現状の光転写技術を延命するか光以外の新規な転写技術を実用化するか二つの選択肢がある.従来光波長以下のパターンで量産することは困難といわれてきており,X線転写技術や電子線直接描画技術が研究されてきた.しかし現在のところ光転写技術に置き代わるにはいたっていない.EB直描が0.15μm未満を実際に改造できる実力がある点が魅力であるが,処理能力の点で問題が残る.X線は等倍ではマスク,縮小では光学系に課題があり,積極的に使う動きは少ない.現在までの光転写技術の蓄積を生かせること,低コスト化のためにも光転写技術に対する期待は大きい.

エッチング技術

1Gビット時代に要求される0.1μmレベルまでの幅広い寸法範囲における高精度なエッチング技術にはまだ解決すべき重要な課題が数多くな越されている.例えば,超微細化・高アスペクト化とともに,高選択比やパターン寸法が小さくなるにつれてエッチング速度が遅くなるといった問題が挙げられる.また後に述べるような,キャパシタ材料にSiO2以外の高誘電率材料を用いる際のエッチング技術も必要とされる.

洗浄技術

半導体分野において表面の洗浄は,製品の品質管理の上で極めて重要である.特にSi上の微量金属の付着による欠陥発生は非常に敏感であり,ppbオーダーでの制御が必要とされる.しかし従来の手法ではほこり,金属カチオン,などの除去のため超純粋水リンスと濃硫酸,過酸化水素などの多く化学薬品を消費する,多くの工程を必要としており,半導体コストの上で占める割合が無視できないものとなっていた.また廃液処理のうえでも洗浄の効率化が望まれている.

更なる大規模化へのブレイクスルー

キロ.ビットからギガビットに至るDRAMの大容量化は,3つの時代に大きく別れる.微細加工が開発の中心だったキロ・ビット時代,構造改良が中心だったメガ・ビット時代に対し,ギガ・ビット時代を迎えるに当たり,従来のSiと酸素,窒素,を中心としたごく限られた元素のみによる半導体構成が眼界に達していることを示してきた.そのブレイクスルーとして各種材料開発がDRAM大容量化技術の中心になることが指摘されている.セルには高誘電率膜を採用し,メガビット時代には世代ごとに減ってしまっていた蓄積容量を,各世代で一定に保つようにする. 露光にはArFなど向けのレジスト材料の開発が重要となる.配線には低誘電率の層間絶縁膜や低抵抗の配線材料を使って,配線遅延を抑制する.従来半導体分野に用いられなかった元素を導入した無機材料開発などが重要性を増し,物理・電気系技術者中心だった半導体産業界において,今後化学・材料系技術者の活躍の場が広がることが予想される.

キャパシタ材料

1Gビット向けセルには,0.3μm2程度のセル面積に約20fFのキャパシタ容量を確保する必要がある.そのためにはキャパシタ絶縁膜にTa2O5を用い,MIM (metal-insulatoe-metal)構造の円筒型スタックの採用が検討されている.これまではフィン型の方が実績があるが,1Gでは円筒型の採用が有力である.これは微細化に際してフィン型では容量確保に寄与しない面積が相対的に増加するのに対し,円筒型は内側を繰り抜いて垂直方向の面積を有効に使い方法であるため,微細セルにおいて表面積確保が容易であるためである.またTa2O5薄膜採用には従来の絶縁膜の限界に加えて,Ta2O5薄膜の成膜技術の改良によりリーク電流が抑えられようになったためである.リーク電流の原因はTaとOの組成比が理想的な2:5からズレてOが不足することにあった.これをO2プラズマ処理によりOを補給してリーク電流を抑制できた.また成膜後の熱処理による容量低下する問題に対して,下部電極に金属を用いるMIM構造の採用で対応することが検討されている.従来の多結晶Siを用いた下部電極では熱処理によりSiO2が形成されてしまい絶縁層が厚くなり,容量が低下するためである.

露光用レジスト材料

波長248nmのKrF光源を使って0.15μm解像結果が登場し始めており,1G-DRAMにはKrFエキシマ・レーザが通用する見方が広がっている.これはKrFとレベンソン型の位相シフト・マスクを組みあわせたからである.位相シフト技術は超解像技術の中でも最も効果的なものであり,通常露光に比べて解像力を最大2倍に向上できる.この技術は隣り合ったパターンの位相を180℃ずらす事で,パターン周辺での光の分布を急峻に変化させて解像力を高めるもの.しかし0.13,0.1μmといった微細化をエキシマレーザにより実現するにはArF技術と超解像技術を組み合わせる必要がある.今後の課題はArFレジストが開発が鍵となっている.現在アクリレート系樹高分子とシクロアリファティック系高分子のレジストが各社から発表されているが,感度と安定性を両立させたレジストの開発が望まれている.またレジスト開発はレベンソン型位相シフト以後の超解像技術としても注目される.レジストの表層から内部に行くにしたがって透明度を高めてレジスト上下での露光量のバラツキを減らし,コントラストを向上させる技術である.

計測技術

微細加工の位置合わせの精度は今後ますます重要性を増す.現在生産ラインでの位置合わせはレーザを利用して計測しているが,微細加工に対応するには限界を迎えつつある.光の波長以下の加工を行うには長さを測る技術として電子線を用いる必要が出てくる.従来からある電子顕微鏡をもちいれば十分測定できる大きさではあるが,その顕微鏡を用いる思想は大きく異なる.すなわち従来の特殊技術者が使用して1サンプルの破壊測定といった研究用顕微鏡ではなく,ライン従業員が使用して製造デバイスすべてについて,ひとつひとつの位置,長さを非破壊で測定する生産技術用顕微鏡の開発が必要となっていくと考えられる.

洗浄技術

半導体表面へのほこりの付着には表面の電荷によるクーロン力が大きく関与していることが考えられる.すなわち半導体表面とほこりが同種電荷を帯びれば付着を抑制できる.こうした考察からイオン性界面活性剤を用いることで,半導体表面とほこりの表面がどちらも同電荷の界面活性剤でつつまれ,洗浄を効率的に行う事ができる.これにより従来の洗浄行程を大幅に簡素化でき,薬品,超純水の節約によりコスト低減につながる重要な技術のひとつである.

感想

各分野の第一人者による講義は最新の技術について知識だけでなく,その仕事に携わった研究者の思想まで伝わってきた.電気系の開発は従来の欧米技術の買い付けと,その中での操作条件の最適化を行うだけの形態が限界に達していることは,しばしば話題にされている.そうしたなかで先頭に立って独自の技術をもちいた研究開発についての重要性が強調されていたように思う.それには特に幅広い分野から研究者を集めたプロジェクトチームをつくることで,問題を多くの視点から解決できる.本質を見抜くまでとことん考える力が必要とされている.こうしたことが様々な実例をもって説明されると説得力をもっていた.

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