「そんなんじゃ一生結婚なんてできないよ。さよなら」さすが失恋物語

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これから別の友達とあうとは思えないような、思えるような不思議な服に思えた。

「じゃあ喫茶店にいこう。名鉄百貨店のなかにキハチカフェがあったはず。」

「いいわね。キハチ行ってみたい。」

キハチの前の順番を並んでいるときから和樹は楽しくてしょうがなかった。彼女と再会できてデートできるなんて今年は正月から最高の運勢だなあと浮かれていた。

「その後、彼氏とは別れたの?」

「うん。終わったの。ごめんね。急にメールして。私、ことし25歳になるんだけど、彼と別れてから占いに行ったの。そしたら今年中に結婚すると幸せになるっていわれたの。どう思う?」

「ふうん、占いなんて信じてるの?まあ、その占いなら信じてもいい気がするけど」

「でね、なんとなく和樹のことを思い出したから久しぶりにメールしたんだ。たしか、ブログやってたよね?なんてブログだった??」

「思い出してくれたのはうれしいよ。けど昔の男に興味持ってないなあ。ブログもぜんぜんちぇっくしてなかったのか。」

「しょうがないじゃん、ねえ。教えて」

「分かったよ。井上陽水と私ってブログだよ。」

「ああ、思い出した。そうだったね。今、iPhoneで検索してみるね。ああ、出てきた。ええ、なにこのあざみって?ペンネーム??」

「そうだよ、井上陽水の名曲「少年時代」の中に出てくる

なーつがすーぎいーかーぜーあーざみのあざみだよ」

「やだ、歌わないで、ははは。相変わらず面白いね。」

「そうか、面白いかな。」

「うん、絶対面白いよ。だって、なんとかっていうお笑いの人に顔も似てるし。」

「だれだよ??イケメン??」

「それそれ、それが面白いんだよ。テレビのCMで顔洗ってたら、不細工な人がキムタクになるってCMしらない。」

「なんだとおお、その不細工のほうに似てるかあ、弱ったなあ。俺も顔洗わなきゃな。」

「やっぱり、和樹面白い」

第7章 診察・体験談

「さあ、この一週間はどんな一週間でしたか??」

「仕事は出来てます。休みは友達と喫茶店に行ったりしました。」

「そうですか。そのほかデイケアはどうですか?」

「楽しく行ってます。」

「楽しくだけじゃなくて、君の働いてる体験をもっとみんなに聞かせてやってくれよ。」

「はい、わかりました。」

「じゃあ、クスリだしとくよ。次は一週間後の日曜日はどうですか?」

「日曜日より土曜日がいいです。」

「そうか、じゃああ、土曜日の午前11時でどうかな」

「はい、おねがいします」

「じゃあ、また頑張ってねね。」

「失礼します。」

第8章 体験談を書く

「今度、デイケアで体験談プログラムっていうのをやるんだ。酒井さんも話してみてくれませんか?」

「はい、なにを話せばいいんですか?」

「みんな、仕事を探してるだけどなかなか見つからない人が多いのよ。それに諦めてデイケアで寝てるだけの人もいるし。そんな人にアルバイトから始めて今の事務の仕事が続いてるって事を話して欲しいの。お願いできる?」

「はい、だいたい分かりました。でもうまく話せるかなああ。」

「メンタルセンターの中村さんに相談に乗ってもらったら?」

「中村さんが相談に乗ってくれるなら有難いです。じゃあ、ちょっと原稿かいてきます。」

和樹は体験談を語るのは余りなかったが、学生時代の卒論発表でプレゼンテーションの時の原稿作りの大事さを強烈に覚えていた。

その後、帰宅してから原稿を書いたがたくさんの出来事がうまく説明できないまま頭に浮かんできてなかなか原稿ができなかった。

ようやく出来たのは、ぎっしり字の詰まった原稿だったが、一読しては分からない文章だった。

その原稿をもって、メンタルセンターの中村さんに会いに行ったのは確か、去年の3月だった。中村さんが真剣に読んで、

「ふうう、分かりました。このパン屋のアルバイトで自信をつけたっていうのがポイントになりそうですね。もうすこし、的を絞ってすっきり書いてみてくだだい。」

などと添削されて大まかな原稿ができた。

それは、

「 今は、週30時間勤務の事務職です。事務職はいろいろと職場を異動しながら7年目です。デイケアにも月に3回ぐらい通う生活です。

11年前は、入院して、引きこもり。少し仕事してもも続かない状態でした。その後、デイケアに来てどんなひとでも仕事はできる、と励まされました。デイケアメンバーの体験談(パン工場勤務)を聞いて、自分にもできそうと思いました。パン工場でアルバイトを、週2,3日始めました。1日8時間で普通のひとと全く同じ仕事です。毎日、違う作業でした。パン工場を1年半続けて体力がついた自信がつきました。それ以外にテストの採点のバイトすこしやってみて、事務仕事の楽しさがわかってきました。そのとき、新聞広告で自治体が事務大量募集していていました。筆記試験と面接でしたが、2回目の試験で補欠採用でした。その後は、デイケアにたまに通いながら事務仕事を続けられました。パン工場での自信がもとになって続けられたのだと思います。小さなステップで成功体験を積んで自信をつけることが大事だと思っています。」

という内容だった。

第9章 体験談の会の発足

 喫茶店で和樹は友人の躁鬱病の女性とお茶しながら話していた。

「なんかデイケアが最近、つまらないっていうか、物足りないっていうか、なんか違うって思うんだ。ハルさんは、そんなことない?」

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