「出会い系サイトで裸を売る女の話」(みすずの場合)

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「出会い系サイトで裸を売る女の話」(みすずの場合)


※以下、一部にアダルトな内容があります。苦手な方は、他のページに移動してください。


私は、幸せな生活をしている。と自分では思う。


朝起きて仕事に出て、疲弊した体を晩酌と睡眠で誤魔化し、そして次の日また仕事に向かう。


1ヶ月働いて、日々の生活と少しの貯金が出来る。もう何十年も家と職場の往復と、たまの休みという生活を続けている私は、これはこれで幸せと思っている。


性の対象として自分の体を切り売りし、生活をする女性を軽蔑するつもりは無い。


それが、望んだことであれば、彼女たちからすれば自分で選んだ幸せな生活だと思うから。


しかし、それが自分が望んでる本当に幸せな生活なのだろうか。私は率直に知りたかった。


2015年、4月14日 深夜。


みすずという女に会うことになった。


きっかけは出会い系サイトのこんな書き込み。


「ほろ酔い♪今からエッチで会える人居たら、メールください。私の自宅で☆楽しく会えたら嬉しいな!ちなみにEカップで、エフうまいって言われるよ。」


サイトの自己紹介欄にも、年齢:30代前半、ルックス:かわいい系、マイブーム:ポエム拾いと、書き込み同様に、ボジティブな言葉が並ぶ。


興味本意で連絡してみた。


「05でどうかな?」


すぐに返事が返ってきた。


「大丈夫ですよ!××高校の近くにあるコンビニに着いたら、連絡ください。」


「分かりました。」


「着きましたか?」


「着きました。」


事務的なメールを2、3通した。


出てきた女を見て、私は言葉を失った。


みすずと名乗る女は、ぽっちゃりとさえ形容出来ない肉の塊。Eカップあるという胸も、脂肪に埋もれどこからどこが胸かも分からない。


茶色なのか黄色なのか、よく分からない色の伸び放題の髪を、大きなバンダナのようなもので結んでいる。


化粧気も無いカサカサの肌。そして、何より独特の臭いを体中から発していた。


サイトに並んでいた言葉とは全く真逆。そして、間違いなく30代前半でも無い。もっと上であろう。


みすずは突然、喋り始めた。


「今日、信号無視で警察に捕まったがよ。黄色なのに!」


いきなりタメ語で、それに方言も被せてきた。


とりあえず、適当に話して帰ろう。それがベストな考えに思えた。


何故この世界に足を踏み入れたのか。


興味本意で聞くと、みすずは人の前で堂々と吸っていたタバコを大きく吹かし、吐き出した。


初対面とか人見知りとか、そんな言葉は無いらしい。


「前はラブホの清掃のバイトをしていたんだけど。」


みすずは、淡々と過去の記憶を思い出していた。


「上司に怠け癖があって、そんな人と仕事するのが馬鹿らしくなった。」


「それから精密機器の工場で働いたんだけど、母親が死んで、何もかもやる気が無くなって。」


顔をあげたみすずの目線の先には、笑顔で笑っている母親の写真が飾ってあった。


一緒に働いてる人が怠けることだってある。


それなのに同じ給料では納得出来ないことも、母親が亡くなって辛い気持ちになることも理解出来る。


しかし、それでやる気を無くし、人生に絶望し、売春を始めることが私には到底理解出来ない。


「出会い系を始めた時は何も知らなくて、先に始めた後輩に教えて貰ったんだ。歳は後輩だけど、こっちの世界では先輩だね。」


みすずは大笑いをしていた。ヤニに汚れた黄ばんだ歯。とっさに、私は目をそらしてしまった。


精神疾患も患っているというみすずは、更に続けた。


「後輩にアドバイスをもらうことにしてコツを掴んだ。自宅でするのは珍しいみたいで、新規出店のデリヘルと勘違いしたヤクザが家に押しかけて来た時は、さすがに焦ったけどね。」


デリヘルには縄張りがあって、それを犯さないような暗黙の了解があるらしい。


「やっぱり15分程度の本番で、5千円~1万円が手に入るのは魅力的。真面目に働くって馬鹿らしいよね。」


その言葉を聞いたとき、私は母親が亡くなって人生に絶望し、売春を始めたという暗い過去は、都合の良い言い訳のように聞こえた。


更に、みすずは聞いてもないことを、自慢げに、そして一方的に話す。


1日に最高6万円稼いだとか、正月が一番稼げるとか、野良猫にも餌をあげているとか、どうでも良い事をずっと話しているので、私は帰るタイミングを見付けられなかった。


「月の稼ぎは14万~26万、毎月1回、定期的に会いに来てくれる人も居て、そんな人は5千円でやらせてる。」


そのお金は、ほとんどが飲み代とパチンコ代に消えていくらしい。


私は顔を上げてみすずの体を見てみる。どう見ても価値の無い中年男のような太った体。


しかし、それでも裸になれば男たちが群がることを、みすずは知っている。

やられせてくれる女に、男は優しいことも、みすずは知っている。


「私は、本当はセックスは好きじゃない。だから、サイトするのはお酒を飲んでる時。本番中はひたすら苦痛。目をつぶって、心の中で早く終われと叫んでる。」


そう話した時だった。みすずのケータイが鳴った。


「今から人が来るから、2階に隠れて。」


突然のことであっけに取られる私を無視して、みすずは電話をし始めた。


「コンビニを出て左に曲がって、お弁当屋を左…」


家までの案内は手慣れたもの。

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