中2で補導されたヤンキー少女が、美容師を目指して公立高校合格を勝ち取りとうとう学年1位の点数を取った話
「へ?」
これにはさすがにキョトンとしてました。塾に来ているのに、最初の挨拶で夢を聞かれるとは思っていなかったのでしょう。
「夢?よく分かんないけど、てか勉強するんでしょ?」
勉強するんでしょ?って勉強嫌いなのに意外なことを言います。
「勉強より夢の話の方が楽しくない?夢あるでしょ教えてよ!」
しばらく渋っていましたが、観念したのか、ポツリと一言。
「うーん・・・」
「美容師、かな」
小さな声でしたが、はっきり答えてくれました。
「でも、高校卒業して専門入んなきゃだし、勉強できないから無理」
それを聞いて、思ったこと。
「なれる」
確信に近いものでした。
凄いことですよね?ちゃんとした夢があって、実現するにはどうすればいいかを知っていたんですから。
どんなに勉強が苦手でも、どんなに学校の先生に否定されても、めげることなく夢を持ち続けていた証です。
勉強が障害になっているなら、それを取り除く手助けをしてあげる。それが講師の役目です。
「君がやると約束するなら、全力で応援するよ」
これが“その子”との最初の授業です。特に勉強の話をする訳でもありませんでしたが、高校合格を目指すうえで、重要な時間だったと思っています。
ちなみに後日談ですが、お母さんと“その子”の3人で話をしたことがありました。
正直な話、専門学校に行くには結構な金額がかかります。
今までの“その子”の生活を見ていたらお母さん反対するかもな~、なんて思っていましたが、お母さんが一番の理解者になってくれました。
公立高校合格のため、塾への送り迎えから精神面のサポートまで、全力でサポートしていただいたのを覚えています。
当時を振り返ると本当に頭が下がる思いです。お母さんの大きな支えは“その子”も感じていたのではないでしょうか。
順調な滑り出し
塾に通いだしてからの努力は目を見張るものがありました。
自分の夢を初めて肯定する人間が現れて、気持ちが前向きになったうえに、もともとの素直さもあったのでしょう。
当初1年生の問題すら解けなかったのが、どんどん学習した内容を吸収していきました。
宿題も欠かさず、授業以外の日も自習に来ていましたから。
とは言っても、まだまだ合格には及びません。
スタート地点が周りより低いので、相当な努力をしないと追い越すことができないのは当然です。
周りの子も受験を控え勉強し始めているので、“その子”にとってはちょっとの遠回りが大きなロスになります。
そして、同じところを3回連続ミスするなどの天然も挟みつつ、とうとう中3の中間テストを迎えました。
このテスト、実は非常に重い意味を持ちます。
時期的にというのもありますが、必死で勉強して臨む初めてのテスト、という事実のほうがよっぽど重要です。
人間誰しも自分の努力が報われないのは辛いもの。テストなんか、もろに数値として出るので分かりやすいんです。
“その子”も遊びたい気持ちを必死に抑えながら机に向かっていたのですから、今回ばかりは期待するでしょう。
ここで、もし点数が取れなかったら全てが水の泡。最悪の場合、美容師の夢を諦めてしまう可能性も。
学校終わりに塾へ来た“その子”の報告
「先生やばい!点数あがった!(笑)」
何がやばいのかは分かりませんが、めちゃくちゃ爆笑しながら言ってくれました。それだけの努力はしていたので私も嬉しい反面、ほっとしたのも事実です。
とにかく、公立高校合格に向けて、上々の滑り出しでした。
勝負の夏
確実に実力をつけてきたと実感できる頃、天王山である夏を迎えました。
何人もの生徒を見てきて思うことが、この夏をどう過ごすかが重要、ということ。
ただ、誰でも夏が重要なんてことは分かってるんです。
「重要なのは分かるけど何すりゃいいの!?」これが本音。
この時期、保護者の方からこういう質問が本当に多くでます。
「休みだから勉強時間をいつもより多く確保する」
これが出来ればいいのですが現実はそんなに甘くありません。最終学年で部活にも気合が入ってるでしょう。意外と時間なんてないんです。
そして、一番気をつけなければならないのは、夏は誘惑が多い、ということ。
中3の夏なんて青春の代名詞みたいなものです(個人的意見が大いに混ざっていますが)。もう楽しいことだらけ。
勉強なんかどうでもいいから青春したい!これが普通の感情だと思います。
だから夏の過ごし方で重要なのは
「油断しないこと」なんです。
別に勉強時間を増やさなくていいんです。今まで通りの勉強をしっかりこなすことが重要です。
せっかく定着した習慣を手放さないこと。
むしろ、夏に無理をしすぎて受験前に燃え尽きてしまうことのほうが多い。実際、そういう子も見てきました
油断せず着々と。これができれば合格の道は見えてきます。
そんな夏のある日“その子”のお母さんから教室に電話がありました。
「先生すみません。今日はお休みさせていただいてもいいですか?うちの子、遊び行っちゃって」
今までそんなことありませんでした。
まさか、あれか。例の青春か。
「そうですか。お休みって初めてですよね。どこに行ったんですか?」
「夏祭りに・・・」
でたーーーーーーー!
やばい!完全に夏の誘惑に負けてる!青春満喫してる!
夏祭りに行く前に勉強してればいいです、帰ってきて勉強すればいいです。
私の経験から言うと、まあ、まずしないでしょう。
ものすごい危機感を感じました。勉強のリズムが崩れていく気がしました。ここからもう一度組み立てるのは難しい。
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