「チンピラ」

若いころ。
並行屋で働いていた時、土建屋のチンピラドラ息子が子分を2~3 人連れて車を買いに来た。
「おい兄ちゃん、この車テレビに出ていたやつだろ?」
はい、そうです。
「現金で払うからさ、わかるよね」
はい、少々お待ちください。
現金一括ですと、550 万ジャストでお出しできます。登録、納車その他諸費用込みです。
しかし、こちらのお車は撮影用の特殊なお車でして、いわゆる違法改造車になります。
また、必要な整備その他路上走行に絶えうるような対処はさせていただきますが、補償は一切ございません。
是非ご理解いただいた上で、ご購入ください。
「おい、兄ちゃん、ふざけんじゃねえぞ!」「こらぁ!!」
「社長出せ!!」
といっても、社長は銀行に行っていて店には私一人だ。
電話してもいいが、なんとかしろといわれるのがオチだろう。
お客様、ご存知のことと思いますがこちらのお車は69 年式のコルベット427 です。
もともと7.2 リッターもあるエンジンでトルクは申し分ないのですが、さらにハイコンプピストンと270度のカムが入っており、キャブレターもホーリーの大径タイプです。
しかもステンの等長タコ足とサイドマフラー使用で、強化クラッチも入っています。
ここまでなら、何とか車検もごまかせますし、エンジンの打刻とシャシーナンバーが合っていれば公道を走っていても何とかなります。
問題はタイヤです。
シャーシダイナモには乗せていませんが、多分トルクで60~70㎏、パワーで500ps くらいは出てるでしょう。
だからフェンダーからタイヤがこんなにはみ出てるんです。
我ながら苦しい言い訳だ…
「おい、兄ちゃんそんなこたぁどうでもいいんだよ!!」
じゃあ、細めのタイヤに履き替えますか?
「それじゃあテレビと違うだろ!!」「何とかしろバカヤロウ!」
「社長はまだ来ねえのか!!」「こっちは時間がねえんだよ、早くしろこらぁ!!」
もう使うしかないと思った。
お客様、こちらのお車には他にも是非購入したいといっているお客様がいらっしゃいます。
そちらのお客様は、いま私が申し上げた条件をすべて受け入れた上で、しかも現金で購入される予定の方です。
今回のお客様の購入条件を考慮させていただくと、お売りすることはできません。
ちなみに、当社は堅気の方だけとお取引しているのではありません。
今日のところはどうぞお引取りください。(電話に手をかけながら…)
「どうせ売れねえよ、こんな車!」と言いながら帰っていった。
捨て台詞を聞きながら、ほっと胸をなでおろす。
業界が業界だけに、本当に付き合いはある。
名前は出せないが住吉会の副会長。
組長クラスなんかよりぜんぜん上だ。
時代で言うと田中角栄のロッキード事件かな(国際興業)。若いころは渋谷の闇市で朝鮮人からシマを守ったらしい。
それだけに、細かいトラブルで名前を出すわけにはいかない。
仕事はジレンマだ。
ちなみに私の祖母の妹は函館の岡村組の組長の嫁だった。
その娘さんから子供のころ、バレンタインデーにチョコレートをもらった記憶がある。
今は、お兄さんと一緒に組を守っているそうだ。
不景気でシノギが少ない時代だ。
がんばってほしい。

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