元洋服屋の店長だった私が思う、今の私が店長だったら新人をこう育てるマニュアル
もしかすると、お客様の「なりたい自分」「理想の自分」像を叶えるために必要なのは、パンツでは無いかもしれません。
プロの販売員としては、お客様自身が考えて出した「パンツが欲しい」という方針は尊重しつつも、それに従う必要はありません。
暇な時間に試着しまくった甲斐あって(笑)
うちの店の商品のことは、お客様より自分の方が知っているのです。
お客様の「なりたい自分」像を叶えるために、本当に必要なアイテムは何なのか?
フラットな気持ちで、お話ししながら探って行きます。
そして、お客様が「理想の自分にふさわしい装い」を見つけて、本当に納得のいくお買い物をしていただくために、まず大切なのは・・・
●すぐに試着させない
これ、本当に大切です。
お客様が、自分で商品を選んで 「試着したい。」 とおっしゃったとして、そのまま 「どうぞ」 と試着室にご案内すると・・・
例えば、それが似合わなかった時、試着室の中で「パツンパツン事件」が起こってしまった時!
お客様は試着室から出て来れないまま、そそくさと脱いで、逃げるように去って行ってしまいます。
まだ、他にも見たい商品、欲しい商品があったかもしれないのに、
せっかくうちのお店に興味を持って入店してくださったのに、
何も話さず、すぐに試着室にご案内してしまったが為に、
ムダに恥ずかしい思い、気まずい思いをさせて・・・。
また、本当は似合っている服だったとしても、狭い試着室の中だけで、目の前の鏡を見ると、
近過ぎて、妙に短足に見えたりして、全然格好良く見えない!
何となくテンション下がって、さようなら~と。
試着室に入る前に、コミュニケーションを取っていないので、
試着室の中で何が起こったのかを、出て来たお客様がわざわざ自分から話してくれることはありません。
なぜお客さまが帰ってしまわれたのか?
似合わなかったのか、イメージと違っていたのか、元々買う気が無かったのか、高かったのか・・・
販売員にとって、その本当の答えは 永遠の謎!
とにかく、すぐに試着させてしまうのは、お互いのリスクが高過ぎるのです。
「試着したい」 と言われたら、とりあえず 「かしこまりました」 と、受け入れつつ、
「色違いで、こちらとこちらもありますが、ご覧になりましたか?」
「同じ素材で、こちらの型もありますが・・・。」
など、その 試着希望の商品に関連するもの を、念のため、目の前に出してみましょう。
「もう既にそれはチェック済みな上、私はこれが着たいの!」
「時間が無いから早く着たい!」
という雰囲気であれば、もちろんすぐに試着室にお通しします。
が、たいていのお客様は、全ての商品に目は通せていません。
なので、他の商品のことも、ちょっとは気にかけてくださるでしょう。
基本的に、素敵な服があれば欲しい のですから、他の似たような商品を教えられて、大迷惑!とは、そうそう感じない(はず)。
そして、その色違いや素材違いの商品を目の前にした時の反応で、今日、お客様が求めている商品
へのヒントがたーくさん掘り起こせます。
ときめいた感じ、まったく興味無い感じ、など、何かしら読み取れる反応があるし、
「いや、今日は黒で探してるんですよね~。 実は、今週末に・・・。」
と、その黒のパンツを試着したい理由を話し出して下さったり、
「ああ、その型もいいですね。いつもは、こっちのタイプが好きなんだけど、
最近は、ちょっと太めのパンツもいいなと気になっていて・・・。」
と、潜在的な購買意欲 も引き出されたり。
とにかく、すぐに試着させないことで生まれるお互いのメリットは無限大!
お客様と話し始めて、試着するしない、の段階に来ても、「買ってくれるかも!?」なんて、焦って試着室に入れてはいけません。
●商品とイメージをじゃんじゃん広げる
色違いでこちらもありますよ。同じ素材でこちらの型もありますよ。などと、言って見せながら、
どんなシーンで着るものを探しているのか?を探ります。
たとえ、職場用と言われたからと言って、仕事に着て行く=お堅いイメージのもの
とも限りません。その先入観も、不要です。
職場ってどんな雰囲気?
なるべく地味めにしたい?
動きやすさ重視?
異動したてなら、明るくて万人受けするタイプのもの?
出来る女をアピールしたい?
軽い質問を投げかけて、じゃんじゃん服を広げて見せます。
もちろん、一気にまくし立てるのではありません(汗)
こういう感じのことを、臨機応変にポロポロッと言うのです。
投げかけた問いの、何に反応するのか?
なぜ「パンツ」が欲しいという結論に至ったのか?を探って行きます。
そして、お客様自身の口で、求めているイメージを語ってもらいます。
ちなみに、お客様の口から
「地味めにしたい。」
と言われても、その「地味め」な感じというのは、販売員が思う「地味」と、お客様が思う「地味」が、そもそも違うので、単語に囚われる必要はありません。
何を言っているか?より、何かを口から言わせる。という方が目的なのです。
お客様自身、口に出して見て初めて、欲しかったものに気づく、ということがあるのです。
そして、口から出て来た単語をヒントに、
その試着したがっているパンツを、お客様の言うイメージで着こなすには、
このブラウスを合わせる感じが良さそう・・・
このジャケットを合わせる感じも良さそうですよね・・・
みたいに、具体的なコーディネートを棚の上に、じゃんじゃん広げて見て貰います。
言葉そのものより、
そのコーディネートを目にした時のお客様の反応から、本当のイメージがあぶり出されてきます。
キレイに畳んだ商品を、じゃんじゃん広げて見せることを、間違っても
面倒臭い などと思わないこと!
お店は、お客様に商品を見ていただくための場所なのです。
畳んだままの商品をチラ見しただけで、自分の欲しい服を見つけられる人なんていません。
そんなに直感の冴えたお客様なら、それこそ販売員は要らないですね。
どの服だって、一通り全部見たいのに、キレイに畳まれた商品を、自らじゃんじゃん広げられる神経のお客様はいないのです。
大げさなくらいに、こちらがじゃんじゃん広げて、実際のコーディネートを見せて、イメージを具体的に膨らませていただきましょう。
畳んだままでは、まったく目に付かなかった商品の良さが見えたり、
実はパンツ以外のこういう商品も欲しかったんだ!ってことを思い出したり、
マメに動いてくれて、親切な店員さんだな、と思ってくれたりもします。
そして、たくさんの商品を見ながら、こういう感じが好き、こういう感じは違う
と、お客様自身の口で、イメージを語ることによって、今日本当に欲しい服に、
自らたどり着いていただくのです。
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