「35 万円の自転車」

盗まれた。
跡形もなく。
購入して6カ月あまりで。
太いワイヤーでフェンスのポールに括りつけておいたのだが、切ったはず、もしくはピッキングされ
たはずのそのワイヤーすら残っていなかった。
世田谷区二子玉川。
都内でも有数の高級住宅街で、治安もよい。はず…。
駐輪場の月額賃料は2000円。
東急系列のガードマンが、朝8時から夜8時まで警備している。
私の自転車は、一見するとただのMTB にしか見えない。
しかし、カテゴリーで言うと26インチのトライアルバイクだ。
簡単に言うと、足を地面に着けないでいかに障害物を乗り越えていくかが問われる、競技専用の
自転車だ。
そのストリート版で、マンションの階段ぐらいなら5階でも10階でも難なく降りてきてしまう。
しかも、私は大阪の職人にオーダーメイドでフレームからタイヤ、ブレーキなど数え上げたらキリが
ないほど特別注文をして作ってもらった、至極の逸品だ。
日本人が作っているので、フレームサイズもアジア人向け。
とにかく、しっくりくる。
あの当時は珍しかった、ゼロ戦にも使われた超超ジュラルミンフレーム、超軽量リムに前後8インチ
の油圧ディスクブレーキも奢った。
色も特注で、艶消しの黒。
これに金色の龍のペインティングをした。
宅配便では部品ごとに届くので、組み上げてミリ単位の調整もした。
グローブを買い、レッグガード(ペダルにスパイクが付いているため)、ヘルメットも買った。
犯人は、私が何時に駅に帰ってくるのかよく把握していた。
ガードマンが夜8時で上がり、私が帰ってくるまでの3時間~4時間の間に犯行に及んだ。
多分、仕事も早かっただろう。
警察に行ったが、盗難保険に入っていないことと、そもそも競技用のフレームで、ナンバー刻印が
把握できないことを理由に最初は相手にされなかった。
一応むかついたので、「ここでは被害届を受理できないということですか?」と、聞いたら、そんな
事はない。今すぐ書くから。と。
まぁ、当然戻ってくるはずもなく。
バラしても高値で売れる部品ばかり。
ネットかどっかで溶けちゃった。
ボーナスの半分をつぎ込んだので、非常に痛い思い出でした。

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