59人生の岐路 / 大舞台の司会者に抜擢
最初に言っておきますが、【大舞台】というのは、自分の中での事ですからね。
人前に立つ事に何の緊張さえ抱かない人からしたら、大したことないでしょう。
自分のお店にゲストを呼んでイベントを行う。その司会をする。それだけの事だからです。
でも、それだけの事は、私にとって【大舞台】だったのです。
だって…。人前に立つだけでなく、お子様をいかに楽しませるためのトークを混ぜながらイベントを進行させていくんだもん。これまで入社してからずっと避け続けてきたイベントが、まさか、初めてですよ!メインでするのが周年祭のゲストをお呼びしてのイベントとは…!
とにかく心の中では、イヤだイヤだと叫び続けていましたが、一方ではこれはチャンスではないか?と思ってしまう私もいました。
でも、やはりイヤな気持ちの方が強かった。
タイトルで抜擢なんて言ったが、実際は、イベント担当の社員だからという理由です。
立候補でも推薦でもなく、流れのままなので、特にカッコ良さはないです。
……と、嫌々ながらも引き受けてしまった周年祭の司会。
実は、当日まで私が司会をやるんだ!という気持ちは一切頭に過らず、緊張はしませんでした。
たぶん、無理やり忘れていたんだと思います。
ですが、無理やり忘れていた司会をしっかり引き戻してくれましたね、当日は。
ゲストが来られてから、段取りの説明を聞き、頭の中でシミュレーション。
もうね、不安で仕方なかったです。
失敗できない。迷惑かけられない。など。
一緒に働いている社員やスタッフさえ、敵に見えました。
どんどん近づいてくるイベントと、私の緊張感。誰も止められないんだと悟りました。
イベント担当なんてやらなければ良かったと思ってしまいました。
さあ、やってきましたよ、イベントのお時間が!
まずは、館内放送をかけて、イベントをうながす。
ちなみに、放送もイベント担当者がやるので、もちろん私が言います。
放送もこれまで避けてきたので、とにかく、緊張でしかなかったです。
うわあああ。
子供たちがどんどんイベントステージに集まってくるうぅぅぅぅ。
一斉に私を見つめないで。それもキラキラした目で…。
子供たちをジャガイモだと思え、思え。と心の中で呟いたけど、ジャガイモなんかに見えず、子供たちの目が私の体に突き刺さっていました。温かい雰囲気なのに、すごい寒かった。緊張からでしょう。むちゃくちゃ汗をかいていた。
ハンドマイクを握っている手も震えていた。
初めの挨拶をして、少しイベントの紹介。
子供たちや保護者の視線の他、遠くの方で社員やスタッフがこちらを見ているではないでしょうか。
止めてくれ〜、こっちなんか見ず、仕事に専念してくれ。と思ってしまいました。
余裕なんてなかったのに、いろんなお客さんの目を見れて伝えられた気がします。
で。
肝心のゲストが登場するシーン。
カーテンを開くタイミングが完全にずれた。
段取りをしっかり出来ておらず、私と店長のタイミング…。
目で合図したけど、全然ダメでした。
あ、たぶん、このイベントが終わったら怒られるだろうなと察知した。
それで緊張がほぐれたのか、どうにかイベントは終わった。
いや、終わったけど、まだ続きがあるんだ。
イベントの後は有料の体験があって、そちらのイベントも私が担当する事になっていた。
その宣伝及び、放送もかけた。
宣伝はどうにか大丈夫だったけど、放送はグダグダだった。
緊張はほぐれていなかったみたいだ。
カーテンの裏に隠れているので誰の顔も分からないはずなのに鼓動は早かった。
伝えようと思っていた言葉は飛ぶし、途中で噛むし、つっかえるし。
放送の後、店長から「グダグダすぎ」とダメ出しを食らうほどで。
なんで私がやらなくちゃならないんだよ、と思いました。
ただ、唯一の救いは、店内はお客さんでごった返していたので、スタッフには私がハンドマイクを握って司会をした緊張満載の様子が伝わっていなかったこと。見られていなかったのだ。社員なのに何で?みたいな事にならないだけマシだった。
体験会の方は、私は補佐だったので、話す事もなく、どうにか終わりを告げた。
ゲストの方からは良かったよと言われたが、正直、お世辞にしか聞こえなかった。
だって、緊張しすぎで顔は強ばっていたし、噛んだし、つっかかったし。
どこが良かったのか私には分からなかった。
まあ、この後、店長からは厳しいお言葉を頂く事となりましたがね。
もう、絶対、イベントなんてやらない!
と心に誓ったんですが、
逆だったんです。
イベントに入る機会が増えていきました。それも自分から入りたいと思うようになり…。
もちろん、緊張はします。
イベント前になると、口数減るし、うろうろするし、トイレ我慢するし。
極度な緊張により、仕事に支障が出るんじゃないか?てほど、顔にも態度にも出てしまいますが、
大舞台の司会により、
イベントをやる楽しさを肌で感じられるようになったのです!
子供たちが笑ってくれた。楽しんでくれた。
そんな様子を見ていると、こっちまで嬉しくなるんです。
放送をかける時は緊張で声が震えたり、鼓動が早かったりするんですが、イベントが始まると緊張より、笑っている事が多いんです。
客観的に自分を見ていると、私、今、楽しんでいるんだなと。
イベントが終わると、「またイベントに入りたい」とか、「楽しかった」とか。
たぶん、無理やりでも大舞台の司会をやっていなかったら、今の気持ちには気づけていなかったと思います。
だから、大舞台の司会は、私にとって大きなチャンスだったんだと思います。
今思えば。
緊張したけど、やって良かった!
そう思います。
今は、新イベントを企画した際には、まずは自分が入ってスタッフに伝えています。
やってみないと分からないことはまだまだたくさんあるので、
怖い気持ちが正直ジャマですが、可能な限り動いていこうと思います。
叱ってもらえるのは有り難いこと。
コイツ、チャレンジ精神あるな、と思ってもらえる人材になりたいですね。
次は、プライベートのことを綴ります。
山ものぼったし、川もくだったし。人生は波瀾万丈ってこの事ですね。
また、父と溝が出来ちゃった。
著者の大橋 美紀さんにメッセージを送る
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