姉と母が自死したこと

ゆかりが飛び降りた!
温泉旅館に、早朝に温泉に入って部屋に戻り、まだ朝食まで時間があったので、私は布団ね上でゴロゴロし、うとうとしている時だった。突然、部屋のドアをドンドンドン!と激しく叩く音。そして、「おとうさんおかあさん!ゆかりが飛びおりた!」姉の旦那だった。ゆかりというのは私の姉だ。私はとっさに飛び起き、すぐに部屋から出た。姉の旦那が私を見ている姿が視界に入る。
私はとにかく姉の所へ早く行く事しか頭になく、下に行くエレベーターに乗り込んだ。エレベーターのドアが閉まる時、一瞬、何故旦那は来ないのか、というより、父も母も居たのに誰一人来ない事に疑問を持ったがそんなのはどうでもよく、ただ震えてきたのを覚えている。
エレベーターがフロントに付いた。また飛び出したものの、姉がどこにいるのか分からない。すごく焦る。フロントにスタッフが一人いたが、電話をしていた。そのスタッフの形相や様子から、電話の内容が姉の事だと思った。しかし、声を掛けようとする私を避けるので、どう声かけすればいいのか分からない。そこであたふたする自分が情けなくなってきた。
とっさに、「すいません、飛び降りたの私の姉なんですけど、どこですか?」とスタッフに言った。そうすると、スタッフは困惑した顔で何も答えなかったので、私はとにかく姉の所へ一刻も早く行かなくてはと、身体が動き、フロントの出口から外へすっ飛んだ。多分、私は看護師であり、私が助けなければという考えもあったからだろう。
外へ出ると、女性スタッフがうろうろしており、浴衣姿のまま飛び出してきた私を見て、声を掛けようとしたので、私が「どこですか!」と言うと、「あ、あちらです!」と手を差し出した。

そこは、広い園庭で、沢山の木や、大きい岩が沢山あるところだった。その一番大きく目立つ岩の上に、まるで、大の字に寝そべり、天を仰ぐように、姉が一人ぽつんと横たわっているのが目に入った。まわりは誰もいなくて、すごく静かで。時が止まったように感じられた。
そこからの私の感情や、考えは無かったけど、行動や、見たものは記憶している。
姉のそばに行った。今となっては、目に入る外傷が余り無かったのを、幸いに思う。でも、目が少し開いてたこと、ほっぺに深い傷があったこと、そのほっぺに姉が付けてたコンタクトレンズが外れてあったこと、おそらく頭を打って顔が浮腫みだしていたこと、半袖シャツから出てる腕が、すでに紫色になりかけていたこと。
あぁ、もう駄目だなと、分かりつつも、脈をみた。案の定動いてない。その時、おとうさんがきた。「おい!ゆかり!おい!ゆかり!」と姉の身体を揺さぶった。「やめて、揺さぶらないで!」ととっさに私は言った。看護婦としての頭で、もしかしたらまだ間に合うんじゃないか、一縷の望みを捨てる訳にいかなかった。

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