★8★シングルマザーが子供二人を連れてイギリスに母子留学。 心の洗濯して帰国したら、グローバル企業正社員への道が待っていた話。【イギリス版松尾芭蕉生活】
前回のお話は★7★をお読みください。
松尾芭蕉は、奥の細道で 多くの俳句を残しました。
奥州 平泉では
『夏草や つわものどもが 夢のあと』
山形 立石寺では
『閑さや 岩にしみいる 蝉の声』
紀行文、現代風にいえば旅日記をたった17文字で表現する芭蕉の素晴らしさは、400年以上たった今でも鮮やかですね。
その中に、宮城 鳴子温泉郷から 山形に入ったところで読んだ句
『のみしらみ 馬のしとする 枕もと』 があります。
当時は気軽にホテルなんてないですから、宿をおさえるのだけでも苦労したはず。
その一夜の宿を提供してくれた家主にクレームではなく、ユーモアで返すようなこの句、地味に好きだったのですが、まさか自分が体験するとは。
今回はその句にまつわる現代のエピソードを一つ。やれやれです。
明るい茶色の煉瓦に白い窓枠のかわいくて美しい、子どもと3人で住めるわたしの家。
そう。私は、シングルマザー。
離婚後、アタマに来て家を飛び出し過ぎて、地球の裏側のイギリスまで行ってしまったおバカさんです。
そんな私でも、いろいろな人に助けられて、イギリスでとうとう家を借りることができたのです。
小道に面した清潔で使い勝手のいいキッチンでお料理していると、通っていく郵便屋さんや近所の人がこんな日本人にでも手を振ってくれます。
いまの日本は、台所とリビングが一緒になっているほうが主流ですよね。
わたしも初めて独立したキッチンのある家に住んだのですが、なんとも料理に集中しやすい。
匂いもリビングまで届かないし、コックピットの形状だったため、動線が計算されていて使いやすいキッチンです。
ベッドは歩いて5分ほどに家具屋さんがあって、そこのオーナーがディーと知り合いだったので、少し安くしてもらえました。
※ディーとの出会いは過去のストーリー参照
購入したのはダブルベッド1台と、ソファベッド。
私の借りた家は、珍しくファーニッシュド(家具付き)ではなかったので、必要なものは揃えないといけません。
中でも、コーヒーテーブルは探すのに一苦労しました。
理由はただ一つ。
日本人は床にぺたんと座ってごはんをいただきます。
本当はテーブルといすを購入できればいいのですが、まだ1歳だった息子に高いイスに座らせるのも大変ですし、お金はセーブしたい。なので、コーヒーテーブル一台で十分なのですが。
高い。
いや、金額が、でなはく。
高さ。
床に座ると、テーブルの天板が私の胸と首の間ぐらいの高さが主流なわけです。
その高さって何をするにも日本人の私たちは不便なのです。勉強だってその机になるわけですから。
バーミンガム郊外には、日本でも人気のIKEAがありました。
日本と違って、かなり倉庫っぽかったですけどね。
ディーに連れて行ってもらったのですが、そこでもちょうどいい高さのテーブルが見つからない。
ちなみにIKEAは、イギリスでは 「あいけあ」「あいきあ」と発音します。
そんな時はセカンドショップ!
イギリスには二種類のリサイクルショップがあります。
ひとつはセカンドのお店。
文字通り、買取・販売のお店です。
もうひとつは、チャリティショップ。
これは、慈善事業を運営している団体によって運営されていて、なんと「寄付」されたものを販売しているのです。たとえば、小児がんとか。ペットの保護とか。
友人がチャリティで働いていましたが、なんと、無償。
どちらが格上かといったらチャリティショップなのかな、と感じます。
必ずハイストリート(メインストリートのこと)にあるのがチャリティです。
しかも掘り出し物充実すぎ!!
のちに、私は、日本には輸入されなかったタイプのウェッジウッドのピーターラビットの子供用マグカップを購入したりなど
足繁く通って宝物を集めました♪
さて、ちょうどいい高さのコーヒーテーブルはセカンドで見つけ購入。
テレビと洗濯機は、なんとカタログショッピングのお店で。
その名も Argos!!
なんと商品はショーウィンドーに飾っているもののみ。
お店の中には、電話帳みたいなカタログとエンピツと注文シートだけ。
カタログのラインナップは、Amazon並の商品の充実っぷりです。
そこで、番号を記入し、カウンターに持っていくと、持って行ける大きさのものは後ろの倉庫から持ってきてくれて、はい!と手渡し。
ちなみにテレビは一番安い14インチを買ったため、手渡し。
その後、アンテナがなかったため(前の住人がケーブルテレビしか見なかったことが判明)、アンテナもArgosで手渡し。
普通の主婦が、アンテナ持って道を歩けるようになっただけでも、かっこいいと思いませんか…?
ちなみに絨毯も、カーペット屋さんからかついで持ってきましたw
トルコ製の絨毯でシルクでしたが、お手頃価格なのは田舎に住んでいたからか、それともパキスタン人から買ったからか、謎です。
毎日、家を作り上げていくのは本当に楽しくて、そしてイギリスがインテリアにうるさい国だからか、すべてがプチプライスでインテリア雑誌に出てくるような部屋にできることが嬉しくて。
それでも、私がまったく気に入らないものがありました。
それは、家のカーペット。
我が家は、キッチンだけが白いタイルで、あとはご丁寧にお風呂場までベージュのカーペットでした。
前の住人は、どうやら一階だけ土足生活だったらしく、ソファがあったであろう場所に見事にクツのあとがついていて、日本人の私は叫びそうでした。
ピンクに電話して(※ピンクは前回の章をお読みください)、なんどもカーペット交換してよと言っても
「大家さんと話してるから待っててね~」とばかり。
そのうち、一週間後に、手首と足首に赤いぷつぷつが出ました。
そして、かゆい。
ぜんぜん動いてくれない不動産屋と、汚いカーペットでものすごくストレスだったので、とうとう体に出たのでしょう。
まだイギリスの国民医療に加入していなかったため、無保険でも診察を受けることができる病院に行ってみたら。
(あとで知ったのは、その病院はジプシーがかかるそうです。彼ら、住所不定で無保険だから)
開口一番。

隣人のレベッカから、前の住人がネコを飼っていた話を聞いていました。
そのままのカーペットですから、やつらはいるわけです。ぴょんぴょんと。
ノミ。
この赤い発疹はストレスじゃなく、ノミ。
塗り薬をもらって、すぐピンクに電話。
ドクターがすぐ駆除しろっているんだけど!!
この言葉は効き目があって
「すぐスチュワードをやるから!!」と言ってくれました。
このスチュワードが誰なのか
人の名前なのか
はたまた、男なのか 女なのか まったくわからず 翌日 家で待っていると
手にスプレーを2本持った2メートル近い男の人が現れました。
バルサンじゃないんだ…。
家中のカーペットにプッシュー!!とまき散らし、しばらく経ってから掃除機で吸い取って…

え、もう終わり?
確かにその後痒くなくなりましたが、見た目汚いカーペットはそのまま。
そしてスチュワードの意味が判明。
名刺もらったら、名前は別にありましたw
スチュワーデスさんの男版でした。
意味は推して知るべし。
その後も、彼には
テレビのアンテナつけてもらったり、
庭の木戸を直してもらったり
すっかり、すっかり お世話になりました。
すっかり仲良くなったスチュワードには、歓迎の意味も込めてコーヒーとピザを焼いて出した日もありましたが、彼の目の前で転んで、ピザを放り投げるという大惨事もありました。
ピンクとはその後、何度もやり取りをして、とうとう大家にカーペットを全交換してもらうという名誉を勝ち取りましたが、
喜びもつかの間、
アホな業者が、その汚いカーペットを1階のトイレに押し込んで帰ってしまい、
(そのとき、私は運悪く地中海のマルタ共和国に旅行にいっていて、大学の友人が立ち会ってくれていた)
イギリスを呪い始めた渡英2か月目でありました。
さて。
松尾芭蕉生活リターンズのエピソードも悲しいことにあるのですが、それは、もっとイギリスに馴染んできたころのエピソード。
いつか、お話しするでしょう。
次のお話は。
洗濯機が夜中に走るこわーいお話ですw
先進国なのに、ありえない国、イギリス。
でも、憎めない国、イギリス。
最近、仕事に集中しないといけない日々が続き、なかなか更新できませんが、コメントなど残していただけるとすっごく励みになります!
読んでいただき、ありがとうございます。
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