旅立ち

先日、大切だった人との別れがありました。
20年来の友人であった彼は、一年程前に病に冒され、
彼の人生に置ける最大・最強の敵と必死に戦い、そして
力尽き、天に召されました。

彼と彼の奥さんから出てくる言葉はいつも
楽観的な言葉ばかり。

友人「夏には夫婦で沖縄に行こうと思う。お前は連れて行かないけど(笑)
まぁ、土産位買ってくるからよぉ~餞別よこせよ、タップリと!」

二人は判っていました。もう今年の夏は迎えられない事を。
私はただ、笑顔でうなずく事しかできませんでした。

病室の窓には、かすみ草の花。
「この人、男のくせにコノ花大好きなのよ」
微笑む奥さんに彼は、ただ黙って窓際の花を見つめていました。

亡くなる三日程前、見舞いに行った私に彼は
「おい○○・・・もう疲れたよ。少し休みたいんだ・・・」
目に涙を一杯浮かべた彼に私は、何もいってあげられませんでした。
頑張れとも、負けるなとも、弱音を吐くなとも、
あるいは、もういいよ、良く頑張った、ゆっくり休めとも・・・。
浮かぶ言葉や思いはあったけれど、
ただ、痩せこけた、震える彼の右手を握る事しかできませんでした。

彼との最後の別れの日、
彼の周りは、彼が大好きだった、かすみ草の花でイッパイでした。
そして、彼の奥さんが彼の胸元に添えた物。
それは沖縄行きのチケットでした。
後で彼の奥さんに
私「買ってあったんだね、チケット」
奥さん「うん。サヨナラの代わりに彼にあげた。
夏になったら子供達連れて私も行こうと思う。沖縄」

もう少しで梅雨を迎え、そして暑い夏がやってきます。
彼が楽しみにいていた暑い暑い、沖縄の夏がやってきます。



今年は、私にとって本当にサヨナラを言わなきゃいけない事が
沢山ある年になっています、
その度、抱えきれない後悔や反省、臓腑をえぐる悲しみや痛みに
襲われますが、振り返りつつも、一歩ずつ、時には立ち止まっても
前に進もうとおもいます。
今、松山千春さんの「旅立ち」と言う歌を思い出しています。

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