一人暮らしの朝、僕は誰かにタップされて目覚めたんだ
「ぉぅ」
いいんだ。
出るのは全然OKなんだ。
「では、出ましょう。」
「ぉぅ」
僕と老人は玄関におもむろに向かい
外へ出た。
老人は靴下のまま外へ出た。
きっとその靴下は、靴と靴下のハイブリッドなんだろう。
外はもう明るかった。
鳥が鳴いている。
もう恐怖心のなくなった僕は尋ねた。
「お家はどのへんですか?」
「あっちの方だ。」
「ではそっちに行きましょう!」
「ぉぅ」
もうなんかよくわかんないけど大丈夫だ!
この老人、俺の言うこと聞いてくれるぞ!
ゆっくりと老人は部屋のドアの前の僕に
背を向けて歩き出した。
老人が歩き出したと同時に
僕は部屋に即座に戻り、鍵を掛け
これでもかという程の音を立てて、チェーンを掛けた。
一息付く間もなく
僕は部屋の物が盗難にあっているか調べた。
幸い過ぎることに、何一つ老人は僕の部屋から何も盗ってはいなかった。
時計の針は6:30を指していた。
僕が、ヘロヘロで戸締まりを怠ったその日、
おそらく徘徊していたあの老人が、片っ端から部屋を開けて回り
僕の不用心な部屋にヒットしたのだ。
これぞ運命と呼べる程の確率だ。
老人が何を探していたのかは
結局わからない。
大家さんに電話をして、このことを伝えると
戸締りを厳重注意された。
普通にめっちゃ怒られた。
当たり前だ。
だが過去この見ず知らずの老人が入ってきたケースは無いと言う。
まぁ、
当たり前か。
僕はその老人を
「ロストマン」と名付けた。
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
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