絶たれた希望

大宮駅に着いた


表現しがたい心臓の鼓動を感じながら、

すぐに親父に電話をした。


そして、祈りながらも大丈夫なはずだと希望を持ちながら確認した。


どうなった?まだ大丈夫なんだよな?


すると、親父の口から答えが返ってきた。


親父
ダメだった。。。
・・・マジか、そっか、、、

今まで親父の口から出た言葉の中で

最も力がなく、弱々しい声だった。


必死に絞り出した一言だとも感じた。


今にして思えば、弟が死んだ事は親父にとっても

下手すれば俺よりも辛かったかもしれないが

その事実を息子に伝える事も辛かったに違いない。


なんと言って、伝えれば良いのか

きっと迷ったに違いない。


ただ、この言葉を聞いた瞬間に

全身の力が抜けていくのを感じた。


「終わった」


何が終わったかはわからないが、そう感じたし

強いて言えば、何もかもが終わったように感じた。


親父
だから、急がなくてもいいから
ゆっくり帰ってきな。
わかった。


不思議と、全てがわかった瞬間は

涙が出てこなかった。


乗り換えの電車が来るまで時間があったので

トイレによった。


鏡を見ると、全ての力を失ったような

表情をした自分がいた。


すると、じわじわと弟がこの世から

いなくなった事が実感できてきた。


涙がこみ上げてくる。


叫びたいくらいの気持ちだったが

大宮の混雑極まりない駅で、それはない

というのはギリギリまだ認識できた。


電車に乗り込む。


混雑していて座る場所などなかったが

その時の精神状態では、立っている事はできなかった。


車両の地べたに座りこみ、顔を伏せた。


涙が止まらなかった。


たった1人で地べたに座り込んで

何やらボトボトと涙をこぼして泣いているので

周りには奇妙に見えたかもしれない。


周囲
デケエ図体して何メソメソ泣いてんだよ、
恥ずかしくねえのか
周囲
大の男がこんなところで泣いちゃって、
失恋でもしたのかしら。
そんなに悲観するほどの事なんて
人生にはほとんどないわよ。

そんな風に思った人もいるかもしれない。


でも、どうでも良かった。


涙を止める事もできないし

自分の感情や気持ちを抑える事だって、できるはずがなかった。


失恋などもした事はあるし、人の何倍か努力して

挑戦して叶わなかった事も、何度かはある気がする。


自分に起こる問題やトラブル、

課題で凹んだ事は考えてみると、ほとんどない。


でも、今回ばかりは本当にどうにもならなかった。


心にぽっかりとスペースが空いたみたいで

一方で、心全体がズシーンと重くなって

悲しみとか、無力感とか、喪失感とか

様々な感情が一気にのしかかっていた。

著者の高田 雅俊さんに人生相談を申込む

著者の高田 雅俊さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。