19歳でフランス外人部隊に入隊。22歳で戦場に行った話。

 特にオチはありません。自分が人生で一番楽しい時期に外国の軍隊で辛くも貴重な日々を送った事を書きます。

高校卒業を控えたおれは海外を旅することに憧れていて、そのためにお金を貯めようと思っていた。何か変わった仕事で。そこで自衛隊の採用試験を受けたのだが落ちてしまった。名前を書けば入れると思っていたので相当ヘコんだ。だがその後、担当の広報官(元不良、気合の入った人で、喧嘩でなくした前歯は全て入れ歯だった。元第一空挺団の精鋭隊員だったが、なんの縁か後におれも外人部隊の空挺部隊に配属された。今でも彼とは日本に帰る度に一緒に飲んでいる。)から言われた。

「まー、もしまだこういう仕事に興味があるならフランス外人部隊っていうのもあるけどね」

この一言がその後の5年間を大きく変えることになるとは、そのときはまだ思っていなかった。


2010年5月 自衛隊不合格から約半年後、ネット上の少ない情報を頼りにパリの外人部隊募集所に来ていた。

古い城壁の大きな門の前に来ると衛兵がフランス語で何か聞いてきた。おれは思った。

(しまった、「志願」ってフランス語でなんて言うか知らねえ、、、。)

当時のおれはフランス語なんてボンジュールと百までの数字しか知らなかった。(数を数えられないと罰の腕立て伏せが終わらないとネットで知り、それだけは覚えてきた。)

身振り手振りでなんとか志願の意思を伝えると相手も慣れたもので、すぐパスポートを提示するように言われた。ちなみに一度入隊すると勝手に海外へ渡航することは禁じられるため、そのとき没収されたパスポートが次に返ってきたのは2年後だった。

門の隣の小部屋で数時間またされたあと、夕食のタイミングで中に入れてもらった。

食堂に入ると皆同じ青いジャージを着た数十人の外国人がいっせいにこっちを見て(新入りか、、。)といった感じでまた食事に戻った。それはまるでドラマのプリズンブレイクのようで

(なんだここは刑務所か、、、。)

と思った。その後担当官に所持品を全て確認され、必要最低限のもの以外は全て預けられた。それらが返ってきたのは新兵訓練終了後だったが、仲間の中には携帯や現金がなくなってる者もいた。担当官がくすねるのだ。おれは事前にその噂を聞いていたので、現金はほとんどトラベラーズチェックにしていて無事だった。
所持品を預けたあと、担当官はおれに「お前は日本人だな?」と聞いた。「イエッサー」(最初はフランス語がわからなかったので英語で話していた)と答えると何かリストを出して「それじゃあお前の名前は「タニムラシンジシンジ」だ」と言われた。
外人部隊には「国籍、経歴問わず」という性格上、発足当初から母国で犯罪を侵したなど、身分を明かしたくない隊員が多数存在し、それに対する配慮の為、入隊時には原則偽名を使うことが義務付けられている。


(歌手の名前じゃんかよ、、。)

と思ったが、自分などはまだマシな方で、他の日本人にはマツイサクラバ、ゴリ、ヘイダ、キモノなどと名付けられた人もいた。

担当官は続けて言った。

「今までの生活や学校、仕事、友人、恋人、家族は一切忘れろ。今日からお前はタニムラシンジだ。」


その募集所で1週間ほどすごしたが、何もやることがなく、食事と就寝時以外はずっとテレビルームと呼ばれる待機所で、テレビ(みんなフランス語がわからないためずっとヒットチャートのミュージックビデオを流していた)を見ながらひたすらボーっとして過ごした。この何もしなかった期間がいろいろ辛いことがあった外人部隊5年間のなかでも一番辛かった。

その後フランス南部にある外人部隊本部に移送され、約一ヶ月間雑用などをしながら試験を受けた。試験に落ちるとその時点で帰されるので毎日何人かいなくなり、何人か新人が入ってきた。

志願者にはいろんな国の人間がいて、奇妙な言動が目立つ韓国人、アニメ好きでエヴァンゲリオンの話で盛り上がったイタリア人、ケンカ好きのフランス人などなかなか面白かった。
そのときには既に軍隊的な生活が始まっていて、昼間サイレンが鳴ると全員「ブルー!!」と叫んで広場に集合整列しないといけない。ちなみにブルーとは(青いジャージを着ているので)志願者の総称。既に試験に受かって制服を支給された志願兵は(赤い肩章を付けているので)ルージュと呼ばれる。
シャワーは10秒間だけなので皆順番待ちに廊下で並びながらすでに体に石鹸をこすりつけていた。

週に一回だけ上官が露天を開き、タバコやジュース、チョコレートなどを市場より少し高い値で売っていた。現金を持っているものが少なく、みんなタバコを欲していたので、志願者の間ではときにタバコが通貨のように扱われた。まさに映画で観る刑務所のようだった。

体力、知能、身体検査、面接などの試験を終えたある日、今まで見たこともない階級章を付けた上官の前に数十人の志願者と共に整列させられた。上官はリストを見ながら名前を読み上げていく。名前を呼ばれた者は「プレゾン モンアジュダン!!(はい 曹長殿!!)」と叫び隣に別の隊列を作っていく。最後の合格発表だった。
当時外人部隊に入る以外のことを全く考えていなかったおれはとにかく名前が呼ばれるように祈った。そしてとうとう

「タニムラシンジ!」

と呼ばれた。大声で返事をして隣の列に走って整列した。その日から軍隊の日々が始まった。

みんなの読んで良かった!

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