福岡から歩いて日本を一周する間に出会った人や出来事のお話
そして、不安しかなかった2013年4月29日の朝。
出発の見送りは母と祖母がしてくれた。
「辛くなったらいつでも帰ってきていいんだからね」
「大丈夫、だと思う。それじゃいってきます」
「気をつけてね。。。」
そうして僕は福岡県北九州市にある実家を出発し
旅に出た。
3:記念すべき第1日目
さあ!旅だ!
ポツポツと歩き出した徒歩の旅。
実際はまだ見慣れた風景ばかり続いてるので全然旅をしている感覚になれない。
300mほど歩いた位だろうか、肩が痛すぎてバッグをベンチに降ろした。
なんだこれ...
まだ始まったばかりでこんなにキツいぞ....。
今日中にせめて福岡県を出たかった。知り合いに会いたくなかったし他人から声をかけられるのも恥ずかしかったから。
そもそも徒歩って一日どれくらい歩けるんだ?
昼を過ぎた頃、お腹が空いてきたので母にもらったオニギリを食べる事に。
なんだかこれじゃまだハイキングだな...。
そうしてまた歩き続けると中年のおじさんに声をかけられる。
「おお!兄ちゃん!どこから来たんや!?」
「あ、いや今日始まったばかりで....なんかすみません...」
「ああそうか、まあ頑張れよ!」
早く地元から出たい……。
そうしているうちに日も沈みだし、今日の泊まる場所を考えなければならい時間がやってきた。
着いた場所は北九州市の市街地である小倉。
いつも車で30分程で来れる場所である。
マジかよ……。たったこれだけしか歩けないの?
野宿なんてまだする勇気もないし街中だから今日はネットカフェに泊まろう。
先が思いやられるな…。
「あれ?白石くん!?」
「!?」
「白石くんやん!何やってんの?その荷物は?」
出会ってしまった…知り合いに…。
「いや、あの…歩いて日本を旅しようと思って、今日から」
「ええ!?そうなんだ、大変そうやね。頑張ってね」
「はい、ありがとうございます…」
バッチリ知り合いにも会うとは…。
いつも利用しているネットカフェに入店し、今日歩いた距離を計ってみた。
なんと
20km…………
気が遠くなりそうだった。
本州を縦断するだけで最低でも2000km。
パンパンになった足、バッグの重みで痛む肩。それがまた不安を募らせた。
俺はとんでもない事始めてしまったな……。
4:本州への第一歩
旅二日目。
よし!今日こそ福岡をでる!!
筋肉痛になった足と痛みの残る肩を不安材料にネットカフェを後にする。
正午をまわった頃、門司港に到着する。
もちろんまだ見慣れた景色だったがやっと福岡県から離れることになるんだと気持ちは高ぶっていった。
そして九州と本州を結ぶ関門トンネルにさしかかる。
ここは車でしか来た事なかったけど、どこから行くんだ?
トンネルの標識に「歩行者・自転車はこちら」とある。
なんと九州と本州を結ぶ関門海峡には歩行者専用トンネルがあるのだ!
知らなかった……。
トンネルに入ると山口県へと続く長い直線。
その丁度中間地点に福岡県と山口県の県境の印が!
おおお!!
初めての県またぎ!!
やっと旅が始まった気がした。
まだまだこれからだけど、ようやく俺は一歩を踏み出したんだ。
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