我が心の中のみで、どんどんとふくらむ理想の彼女に恋をする『遠距離恋愛ごっこ』
恋に焦がれ恋に泣く
二人でデートもしたことのないSちゃんとの交際が始まった。
毎日電話して手紙を書く遠距離恋愛に憧れていたおれは、その状況に酔っていた。
『俺が求めるべき女性と甘くせつない遠距離恋愛をしている』その現実がとても心地よく感じた。
自分をまるで物語の主人公のように思い、1度しか会ったことのない女性を運命の人だと思った。
眠るときはSちゃんとの幸せな未来を想像して、朝目覚めるとSちゃんのこと考えながら仕事に行った。
毎日ラブソングを聴いては自分とSちゃんを当てはめ、テンションを上げていた。
仕事が終わり、またSちゃんに電話をして東京に会いに行く約束をした。
付き合ってはじめてSちゃんと二人きりのデートにこぎつけた俺はそれだけで最高に幸せだった。
Sちゃんの友達からも「Sから彼氏ができた」ってポケベルにメッセージがきたよと聞いた。
そんなささいな出来事が俺にとっては最高の喜びだった。
デートの日、俺はSちゃんの待つ大都市TOKYOへと向かうため万感の思いを胸に、電車に乗り込んだ。
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