第二十二章 ボクが大規模校を辞めたワケ

第二十二章

「ボクが大規模校を辞めたワケ」 

 

  私は名古屋大学を卒業した後、河合塾学園、名古屋外国語専門学校など7つの予備校、塾、専門学校で14年間非常勤講師をしていた。自分の塾の経営のプラスになると考えたからだ。

  しかし、いろいろ問題点があって辞めた。私はそのうちの1つの塾で生徒アンケートがあった時に40人の講師の中で2番目の人気講師だった。その理由の一つは、中学レベルなら5科目、高校レベルなら英語と数学の両方が指導できたことだ。

 生徒目線に立つと、これは便利だ。明日は試験だという時に

「明日は数学のテストなのに、先生は英語しかダメなの?」

 となる。そんなことをしたら、

「明日は試験なので、塾を休みます」

 となってしまうわけだ。それで、私は自分の担当以外の指導もすることがあった。すると、ある日塾長から呼び出され、担当科目以外の指導を禁止された、私一人が複数科目を指導すると、他の講師にも同じことを要求する生徒がでる。それで、他の先生を困らせてしまったわけだ。みんな横並び。和を乱すのはならんというわけだ。

 

 ネットが普及して、インターネットを利用した塾や予備校も増えてきた。皆さんは大手のネット予備校や塾では

「生徒との直接のメルアド交換やメールのやり取りは禁止」

 という通達が講師との契約書に書かれていることをご存知だろうか。塾側は、

「生徒と講師が直接仲良くなったら、生徒をつれて独立されてしまう」

 というリスクがあり、講師の方にとっては

「労働時間外に生徒から質問がきては困る」

 という労働協約上の問題が発生するからだ。

「生徒と親しくしてはならん」

  これが大手の原則なのだ。

 

 私の塾は個人塾だから、5科目指導もすれば(高校生は英語と数学)、メールや写メでの質問は無制限かつ365日24時間対応だ。こんなことは、大規模塾や予備校では不可能なのだ。

 

 私は大手が嫌いだ。14年間働いてよく分かった。経営の論理ばかりが先立ち、生徒目線の需要に応えていない。左翼も嫌いだ。労働条件(主にお金)ばかり主張して、

「講師はみんな同じ労働条件。労働時間外の搾取は許さない」

 などと言う。一見正しい主張に聞こえるが、要するに能力がある講師の存在を許さない。みんなと同じ条件以上で働くな。生徒の質問に答えられなくなってしまうではないか。

 

 中身で勝負できないとなると、金にモノを言わせてタレントを使ったCMや、駅前に大きなビルを建てて生徒や保護者にアピールしようとする。そして、法外な授業料を要求する。このビジネスモデルは葬り去らなければならない。暴走族講師や、ヤンキー講師など要らない。講師は芸能人ではないのだ。

 

  自分の塾が小さい頃は

「大規模塾の講師という肩書きで信用を得よう」

  という打算があった。父の靴屋は、私が大学生の頃に近所にイオンが進出してそちらの中にある靴屋に押され気味だった。大手を利用しないと生き残れないという現実は知っていた。

  それだけではないだろうが、私の塾は順調で

「ボクは父を追い越したかも」

  と傲慢に考えていた頃があった。しかし、青春時代を戦争でつぶされてしまった父。私のようにバツイチになって子供たちに可愛そうな思いをさせずに頑張った父にはかなわないと思う。生きているうちに、そういう思いを伝えておきたかった。

 

  大規模校の内部に入って指導してみたら、最低だと思った。しかし、個人塾が良いかというと私は「イエス」と言えない。塾を始めてから、塾の入り口は壊されるし、個別訪問をしながら私の塾は閉鎖されると触れ回るし、いたずら電話はかかるし、明らかに近所の塾のいやがらせ。

  ある生徒が入塾して翌月やめたので謎だったが、

「先生、あの子はA塾の息子だよ。スパイだよ」

  と言う話もあった。いくら生活のためとはいえ、やってはいけないことだろう。

 

  私は大規模塾とも個人塾の塾長とも関わりあいたくないので、業界団体には加わらない。今はネット社会なので、業界団体に入らなくても情報はいくらも手に入る。横並びは生徒の方には良くない。

  大人の事情を考えずに、生徒目線に立てば講師と生徒の間を一切遮断んする大規模校のやり方はムリがある。だからといって、ある個人塾のように寒いから授業中にウドンを食べているのも親しさのはき違いだろう。

  私は、誰とも違うやり方を始めた時に倒産を覚悟した。誰とも違うということは、誰にも理解されないリスクがあるからだ。しかし、やってみたら地元の高学力の生徒だけでなく北海道から鹿児島まで(通信生)支持者が集まってもらえた。

 

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