パプアの森の勇者デメギョの復活 (アトピー地獄からの脱出) 1

1 / 2 ページ

「今のお前はデメギョじゃない、ただの大久保さん、デメギョになるのを待ってる、ずっと待ってる。」

親友の東は、47歳になるいまでも僕のことをデメギョと呼ぶ、僕の本名大久保 陽を知らない人もいる、同級生はだいたいデメギョと呼ぶ、出目魚、漢字で書くとこうなる、10代の頃から目が大きくてギョロッとしてるから、誰が名付けたか記憶にないが、みんな親しみを込めてデメギョと呼ぶ(詳しくは、パプアの森の勇者デメギョと題して投稿している)


ところが、花屋(サンフラワー)を始めた30歳の頃から少しずつアトピーの症状が進行して、40歳になってからは顔に症状が出てひどい時は見るも無残、バケモノのような顔になった。

もともと喋り好きで人を笑わせる事が大好きだったが、人前に出るのが嫌になり引きこもり、花屋は従業員に任せ、同窓会長も人に任せて、年中マスクをはめ人目を避けて生きていた。

要するに心も病んでしまったのだ。

そこで久しぶりに会った東に弱音を吐いた、花屋の事、アトピーの事、僕という存在はこの世に必要とされているのだろうかと。

尾崎豊がシェリーに尋ねたように東に尋ねた、その答えが、ずっと待ってるということなのだ。

それから毎日日替わりで友人が続々と花屋を訪れ、一人じゃない事を教えてくれた。

なぜ僕だけなんだろう、花屋を始めて20年近くなるが何もない、振り返っても何の面白エピソードも浮かんでこない、空白の20年、周りのみんなは結婚して子供を作り、成人したとか、大学に入学したとか、就職したとか、中にはおじいちゃんになった人もいる。

もう追いつけない、はるか前を歩いている、何もしていない始めてもいない、友に弱音を吐き続けた。

友は自分の傷口を見せてくれた、誰もが障害を乗り越え歩いてる、表面上はわからなかった。

友が羨ましく思え、自分の不幸を嘆いてばかりいる事を恥じた。

友に弱音を吐き続けたことがデドックスになったんだろうか、少しずつ気持ちの向きが変わってきた。「デメギョになるのを待っている。」

東の言葉がこだまする。

そうだ僕は森の勇者デメギョだ、変わるんじゃないデメギョに戻るんだ、無いものを手に入れるんじゃない、前からあるもの、押入れにしまい込んだものを取り出すんだ。

それから少しずつお客さんと話すようになり、サビてはいないかとおそるおそる伝家の宝刀(エクスカリバー)をお客さんに試してみた。

ウケる、世代を問わずウケる、そう、デメギョは人並みよりチョット上のしゃべりという宝刀を持っていた、切れる、一人切り、2人切り、3人いっぺんにきれた。

サビてなんかいない、ギラギラ光るエクスカリバーは少しも衰えていなかった、ただしまい込んでいただけなのに研がれていた、眠っていたデメギョが甦った。

お客さんにあだ名をつけ始めた、もちろんお客さんには言わない、従業員の本田さんに言うだけ、密かな楽しみだ。

閉店間際に来たお客さん、推定年齢26歳黒髪のロングヘアーに黒のロングブーツ、黒の模様の入ったストッキング、黒革のハーフコート、SMの女王と心の中で名付けた。

紫の薔薇でシックな花束を作って差し上げると、お気に召したご様子だったので、調子に乗って、

「お客さんがあと鞭を持っていたら、しばかれたいですね。」つい、口をついて出てしまった。

あまりウケなかった。心の中に生まれたデメギョはこんなスベリも大好物だ。

今度は従業員の本田さんの知り合いの女性、二人で楽しく話していたから入っていけなかったけど、後日取りに来るということで注文を受けた。

30代だそうだけど童顔で、アラレちゃんメガネをかけて可愛かったから、本田さんに、

「今のお客さんのあだ名はアラレちゃんでどうかな。」と聞いたら。

「あの子はケーブルテレビのレポーターをやっていた事もあって、可愛いでしょ。」と言ってた。

数日後、アラレちゃんが注文していた花を取りに来た。

「あら、アラレちゃんこんにちは。」つい直接言ってしまった。

「店長、事前に了承を得てるんですか。」すかさず本田さんからチェックが入った。

「いや、今からよ、アラレちゃんとあだ名をつけたんですけどいいですかね。」

アラレちゃんは笑顔になり頷いた。

SMの女王は未だに秘密だけど、密かな楽しみが公になった瞬間だった。

それからもどんどんあだ名は増え続けイカソーメン、女教師、いつも色は違うけど同じチューリップ形のスカートを履いてるお客さんには、パラシュートと名付けた。

その頃になると、本田さんからは、店長はよく次々特徴を捉えたあだ名が出てきますね有吉みたいと、評価をいただいていた。

ある日20代の女性が来店した。

「こないだありがとうございました。」そのお客さんは言う。

「どうもありがとうございました。」とりあえず返してみたけど、何のことか分からずつい頭をひねったのかもしれない。

「こないだチュッパチャプスを入れて可愛いブーケを作ってもらって、とっても喜んでもらえました、それに店長さんの話も面白かったから。」と、笑ってる。

そう言えばチュッパチャプスと花を組み合わせてブーケを作った事を思い出した。

まだ彼女は笑ってる、チャンス到来、行けー、僕の中のデメギョが叫ぶ。

「今日からあなたのことを、チュッパチャプスってあだ名で呼んでいいかなぁ。」

彼女は大ウケして了解してくれた。

「よし、チュッパチャプスまたきてね、待ってるよ。」

チュッパチャプスは、数日後受け取りに来るという事で花を注文していった。

数日後、20代の女性、初顔のお客さんが来店した。

「注文していた花田幼稚園です、花を取りに来ました。」

今日は注文がいっぱい入ってる、本田さんは休み、コルク板に注文票がまるで七夕の短冊みたいに貼ってあった。

しかし、花田幼稚園の伝票はどこにもなかった、むろん商品も無い。

「エ~ッ、注文されてましたか、注文受けてないみたいですけど。」

どうしようとテンパっているところに、後ろから。

「チュッパチャプスで〜す。」先日あだ名をつけた女性が顔を出した。

「なんで、チュッパチャプスは花田幼稚園の先生なの、伝票にチュッパチャプスって書いているから分かるわけないよ。」


安心した、チュッパチャプスの注文のアレンジはすでに作って準備していた。

「ビックリした〜、チュッパチャプスが先に入って来ればすぐに分かったのに、受けてた注文を忘れたかと冷や汗かいたよ。」

チュッパチャプスも新顔さんも笑ってる、僕を驚かす作戦だったのかもしれない、作っておいたアレンジを渡すと、その中に入っていたニゲラの実を見て新顔さんが、

「宇宙人みたいこれ〜。」

「可愛い〜、変わったのいっぱい入ってる。」二人で喜んでる。

「人間が変わってるから色々変わった花を仕入れるんですよ、この宇宙人の様なニゲラの実も、他の花とうまくアレンジするとかわいいでしょ。」と、自画自賛、二人の帰り際、新顔さんに、

「あなたには今度来た時にあだ名をつけますね。」と言うと、

「いえ、もう決まりました、宇宙人でいいです、宇宙人にしてください。」遂に志願者が出た。

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。